1分で心が震えるプロの言葉100【ブックレビュー】
その道のプロは、
どんな思いで自らの道を切り開いてきたのだろうか。
どんな思いがターニングポイントになったのだろうか。
何気ない日々を重ねるなか、
私たちは何かしら心に決め、一歩ずつ前へと進んでゆく。
ささいな選択の連続が、のちの人生を大きく変えるきっかけになる。
先人の方々の言葉を、前に進むエネルギーにできたら。
本書は、豊富な取材経験、取材からの執筆を手掛ける、ブックライターであり自著も数多くある上阪徹氏による
1分で心が震えるプロの言葉100
出版社: 東洋経済新報社
発売日: 2021/9/9(第一刷)
3000人以上ものインタビューから厳選
上阪徹先生は、ブックライター界で知る人ぞ知る存在の方である。
私自身も上阪徹先生のブックライター塾8期生として、ギュッと濃縮された4日間の講座を楽しんだ一人だ。
楽しいとはいったものの、その多くは厳しさが伴う。
でも今となっては、受講しない人生は考えられないくらい「受けて良かった」講座だ。
その上阪先生、雑誌や書籍、Web媒体などで著名人のインタビューを行ってきた。その数、3000人以上。そのなかから、今でも忘れられないという100の言葉が集められたのが本著だ。
そのなかから、私の心に留め置きたい言葉をいくつか、備忘録として書いてみたい。
「実際、仕事なんて大したことではないんですよ。」(成毛眞)
元マイクロソフト社長、書評サイトHONZ代表の成毛眞氏の言葉。
実は、私はこの言葉を見て「ホッ」とした。
なぜなら、仕事と向き合いすぎてちょっとしんどくなっていたから。
好きなんだけど、でも、うまくできない。
好きなだけで、実は求められていないのかも。
自分の今立っている場所が、果たして適しているのかどうか。
私の目的地を指しているはずの方位磁石が、ぐるぐる空回り。
そんなときに、「たいしたことないんだよ」と言われて肩の荷が下りた気がした。
「何時間やっても苦にならない。仕事を選ぶヒントのひとつだと思います。」(角田光代)
作家の角田光代氏の言葉。
まさしく、私が今の「書く仕事」選んだ理由だ。
向き不向きを考えず、与えられたものに必死に取り組む。
それももちろん大事。
けれど、どれだけやっても苦にならないことって、その人にとってそれは苦労ではなくて。
1日のルーティンだったり、息を吸うようなごくありふれたことだったり。
私は、角田氏のようなすばらしい書き手にはなれないけれど。
でも、書くことが「苦」ではないことに、有難いと手を合わせた。
「方向を定めるリスクは、定めないリスクより高い。」(落合陽一)
メディアアーティストであり、筑波大学准教授である落合陽一氏の言葉。
こんなに世の中の流れが速いと、方向を定めてしまうリスクが高いという。
その場その場で必要なことに向き合い、こなしていく。わらしべ長者の物語の深さを実感するという落合氏。
ゼロベースだからこそ、前提をおかない、方向を定めない。
取材も、素材集め、ゼロベースから。
「居心地の悪い場所に好んで行く。定期的に恥をかく。」(為末大)
元日本代表ハードル選手でありDeportare Partners代表の為末大氏の言葉。
これ、実は簡単にできそうですごく難しいこと。
人は生まれてからいくつもの年を重ねるごとに、臆病になる。
いや、そんなことはないよ。という人もいるだろう。
けれど、それまでにいた「安心できる場所」を手放す勇気は並大抵ではない。
私も危ないな…と思いつつ、襟を正す。
「スキルの成長よりも、心の成長のほうが、もっと大事なんです。」(岩田松雄)
元スターバックスコーヒージャパンCEOである岩田松雄氏の言葉。
キャリアのスタートは日産自動車、セールスを担当したこともあったという。そのときどきに小さな目標を作り、クリアし、その先に社長の仕事があった。
岩田氏は、「人が成長する」ことは、「物事を見る視座が高まることと利他の気持ちを持つことだ」という。
若いうちは自分のためだけれど、それがいつしか部署のため、会社のため、社会のため、国のため…と育っていく。
スキルだけため込んでいけば、人間うまくいくものではない。
心の成長が本当の意味での成長になる。
「ないものを数えないで、あるものを数えなさい。」(曽野綾子)
作家、曽野綾子氏の言葉。
日本財団の会長として社会活動を幅広く行ってきたことも、この言葉を後押しする。
東日本大震災の約半年後の取材でのこと。
大震災で人生が変わったという人もいるが、曽野氏にとっては現世は豹変するものだという。あるものはいずれなくなるし、生者は必滅する。と。
曽野氏はこうも言う。
今ある暮らしがいかに幸せか、今一度まわりをよく見渡してみたい。
「明日は誰にも保証されていない。」(野田一夫)
経営学者である野田一夫氏の言葉。
たとえいくつの歳月を過ごしてきたとしても、その終わりは誰にもわからない、誰にも保証はされていない。
最近、SNSで見知った、ある人の死が心をざわつかせている。
28歳の女性。まだ3歳と1歳の子どもがいながら、わずか余命1年でほぼその通りの期間を生き切った。
私にも、夫と子供2人がいる。
毎日些細なけんかはするけれど、
ケガもなく大病もなく、いくつもの季節を越えてきた。
仕事、お金、人生…。
人はよくばりな生き物。
けれど、すべては命あってこそ。
いつ終わるともわからない、
この移りゆく日々を、
大切に大切に過ごしたい。
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