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【経営学28】スタンドアローン問題(経営戦略、M&A分野)

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はじめに

もう20年前の話ですが、皆さん『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』というめちゃ面白いアニメ見ましたか?😍

今日の話はこのアニメと全然関係ないんですけど、スタンドアローンという言葉だけは一緒なので、是非見てください(笑)

20年以上前にこのアニメのあらすじを思いついた著者は間違いなく天才だと思うんですよ🤔
今見ても面白いですからね。
我々30代世代にとっては重要なアニメの一つだと思います。
履修しておきましょう!


さて、今日扱う「スタンドアローン」という問題は、M&Aにおける重要な論点の一つです。
以前書かせていただいた「M&A実務の流れ」に関係しているので、まだ読まれていない方はこちらの記事を先にお読みください。


では、解説させていただきます。


1.スタンドアローン問題とは

スタンドアローン問題とは、M&Aにより、グループ会社の一部又は事業の一部が資本関係から切り離されることによって発生する非効率やデメリットのことをいいます。

少し詳しく説明しましょう😁
最近ではベンチャー企業であっても子会社等を持つことが増えましたし、事業を複数同時に行うことも増えました。
このようなグループ会社の一つ、又は、事業の一つを他社に売却する(買収する)場合を想定してください。

上記のようなグループ会社又は複数事業を運営している会社では、通常、そのグループに属しているからこその利益を享受しています。
例えば、親会社が経理・財務・法務等の管理業務をすべて引き受けているケース親会社のネームバリューで大手との契約が締結できていたケースなどです。

このようなグループ会社・事業が、M&Aによって資本関係から切り離された結果、それらのメリットが得られなくなる場合があります
これは非常に大きなデメリットですよね。

これを「スタンドアローン問題」と呼んでいます😁

M&A実務を担当する場合は、必ずこの点を確認しておくべきです。
そして「スタンドアローン問題」という単語を知っているだけでちょっとかっこいいので覚えておきましょう👍
すべて横文字でかっこよく言いたいという方は “Standalone Issue” といえばOKです!


2.スタンドアローン問題の例

ではでは、早速今日のメインディッシュに参りましょう。
スタンドアローン問題を知っていることと、対処できることは別物でございますので、いくつかのスタンドアローン問題を実際に検討してみましょう😁
主なスタンドアローン問題を解決する策を持っていれば、M&Aもより積極的に行えるはずなので、より思い切った戦略を練ることができます。
これからの時代、M&Aによる拡大戦略又はイグジット戦略は、経営戦略における常套手段の一つになりますから、学んでおいて損はございません。

なお、このnoteは主にベンチャー業界にいる人達向けに書いているので、今回の記事も主にベンチャーが行うM&Aという想定で書きます😁



(1)管理部門無くなる問題


スタンドアローン問題で最もメジャーだと思われる問題は「管理部門無くなる問題」です。

ベンチャー企業を買収する場合、通常はその企業をまるっと買います!
そういう場合は、管理部門の人材ごと買収することになるので、この問題は発生しません。

しかし、最近ではベンチャー企業の子会社だけを買うケースや事業の一部だけを切り離して会社分割をして、その切り離された会社を買うというケースが多くなってきています。
ベンチャー企業も高度な経営戦略を行えるようになってきている証拠なので大変喜ばしいことです😍

その結果、買収した子会社又は事業に管理部門が無くなるというケースが多く発生します。

管理部門を含めて企業をまるっと買収する場合は、中に経理や財務の担当者がいますので、連結会計処理も比較的スムーズに行なえます。
しかし、子会社単体又は事業の一部だけの買収だと、管理部門人材は引き継がれないことがほとんどなので、M&A後のPMI(経営統合)の難易度が上がります😱
M&A実務(PMI)に慣れた経理財務担当者がいれば大した問題ではないですが、初めて対応する場合はかなり大変な思いをするでしょう。

そもそも、どんな業務プロセスで業務を行っていて、どんな内部統制システムを構築していたのか全くわからない状態からスタートです🤣
一から構築するくらいの気持ちで居たほうがいいでしょう。
買収された側にできる限り負担をかけないで済むようにしないといけないので、なかなかハードなPMIになると思います。

もっとも、この問題に対処する方法は意外と簡単です。
それは、M&Aの最終契約に、売手側の義務として、経理財務法務等の引継ぎ業務まで含めちゃいえばいいのです。
買収完了後3ヶ月間は担当者をつけてもらってPMIを手伝ってもらい、それ以降は適宜質問に答えてもらう形式でよいかと思います。
なお、その3ヶ月間の担当者の報酬等も最終契約で決めておくとトラブルがないと思います😁
買収金額に含めちゃいえば楽ですね。


(2)重要な契約が無くなる問題


続いて多いのが「重要な契約が無くなる問題」です。
こちらもM&Aではよく発生します。

特に注意しないといけないのは、
・売手経営者の力によって契約が存続しているケース
・売手のネームバリューによって契約が存続しているケース

です。

このような契約は、M&A後に無くなる可能性が高い契約です。
仮のその契約が売上構成比の10%以上を占めている場合、M&Aによって買収したあとで売上高が10%以上、下がる可能性があります😱
当初目論んでいたシナジー(相乗効果)も得られないかもしれません。

そのため、M&Aを行う際は、法務DD・財務DDを通じて、重要な契約の存続可能性をチェックする必要があります!
M&A後に契約が解除されるおそれがどの程度あるか、仮に解除された場合どういう対処をするか、決めておかないといけません。

対処法としては、例えば、最終契約の価格調整条項で、特定の契約がM&A後1年以内に解除・減額等された場合には一部の対価を返還させるとか、そもそもの買収対価を分割払い(アーンアウト条項)にするなどして対応策を練っておく必要があります😁
このあたりは財務と法務が協力してリスクヘッジしておけばある程度は備えることができます!


(3)親会社からの収益無くなる問題


続いて、子会社を買収する場合に注意しておくべきスタンドアローン問題として「親会社からの収益無くなる問題」があります。
親会社が絶大な権力と財力を持っていて、子会社にも仕事を振ってあげている場合などに発生する問題です。

売上もいっぱいあるし、利益も出ている。
素晴らしい会社じゃないか!

と思って買っても、その売上の半分が親会社または関連会社からの売上だったなんて笑えない話です🙄
M&A後もそのグループ会社から収益を得られ続けるなんてことは期待しない方が良いです。

ただ、この問題は、初めてのM&Aという場合でもない限りは問題となりません。
なぜなら、通常は財務DDで気づくからです。
売上構成比及び構成比上位の相手先の分析は必ず行うでしょうしから、それによって大体のことがわかります。
親会社又は親会社の関連会社、資本提携先などからの売上は、当該子会社の価値を評価するときにマイナス要素として計算に入れておけば良い話です😁

単体のPL上では毎年増収となっていても、蓋を開けてみるとマイナス成長だったということもあるので、M&Aを行うときの財務DDはしっかり行いたいところです。


(4)コアメンバーいなくなる問題


最後に「コアメンバーいなくなる問題」を扱いましょう!
この問題は、コアメンバーをよく調べずに買収をした場合に発生しやすいです。
親会社に超優秀なマネージャーがいて、M&A後にこのマネージャーから切り離されたことによってコアメンバーが相次いで退職してしまうケースやそもそもコアメンバーが買収対象会社に所属していなかった(親会社所属だった)ケースなどがあります。

これまで解説してきた(1)~(3)の問題は、財務DD及び法務DDである程度リスクヘッジができますし、契約書に条項を加えることで予防も解決もある程度できます。

しかし、コアメンバーについては定性的要素が多いため、ついつい見落としがちです🤔

そのため、最近では人事DDというDDが出てきていまして、意外と重要じゃないか?と再認識されています😁
人事DDには、財務的側面(人件費や退職金制度等)のDDと非財務的側面(誰がコアなのか、どのような人事問題があるか、どのようなスキルを持った人間が存在しているか、退職リスクが高いのは誰かなど)のDDがあります。

このうち、私は非財務的側面のDDが極めて重要だと感じています。

そのため、ベンチャーのM&Aでは人事DDをしっかり行いましょう!と言いたい😱
特に「人」が重要なビジネスモデルを採用している会社では、人事DDは必須です。

まず、買収対象となっている会社に所属する全社員と面談しましょう。
多すぎてできない場合は、役職者全員とお話して、買収対象となっている従業員以外のメンバー(親会社所属の人や出向者など)で、重要な人がいないか、コアメンバーと思われるメンバーの中で退職意思がありそうな人はいないかなどを徹底的にヒヤリングしておくべきです。

かなり地味ですし、時間もかかるので結局は「リスクなし!」として無駄になることも多いですが、やっておいて損はないでしょう🤔

その上で問題が見つかった場合は、最終契約のキーマン条項に入れ込んでしまうと良いでしょう!
例えば、親会社所属で買収対象となっていないけど、極めて重要な役割を担っている人間がいる場合は、M&A後1年間は業務委託又は出向社員として存続してもらい、新しいマネージャーにしっかりと引き継ぎを行ってもらうなどです。

このような条項を入れるためには、ある程度買収対象会社の組織内部を知っていないとできないので、人事DDはかなり重要です!


3.その他のスタンドアローン問題

上記以外でも様々なスタンドアローン問題が考えられますが、少し注意が必要だなと思う点は、知的財産権の所在です🤔

グループ会社の一部を買収、又は事業の一部だけを買収する場合、知的財産権(商標権・特許権等)がどうなるのかは予め確認しておきたいところです。
子会社の知的財産権を親会社が一括取得・管理し、ライセンス料を子会社から取ることで収益をコントロールしているケースもあるからです。

この場合、買収したとしても知的財産権は親会社に残ったままになりますから、買収した会社から見ると旨味が減ります。
そのため、知的財産権がもし必要であれば、M&Aの実行前に、親会社から買収対象会社に知的財産権を移転させておく必要があります。
もし売手がどうしてもその知的財産権を譲りたくない場合は、M&Aの買収価格を割り引くなどの交渉が必要です。

重要な知的財産権の場合、収益に与える影響はかなり大きいので意外と無視できない領域です🤔
特にIT企業ではこの点を見落としがちなので、法務DDでしっかりとチェックを入れておくべきだと思います。

なお、意外と混同されやすいのでご説明しておきますと、実は知的財産権は弁護士の専門分野ではございません。
多くの弁護士は知的財産権領域の知識は乏しいです。
この分野の専門家は『弁理士』又は『知財専門の弁護士』でございまして、その中でM&A関連の業務に慣れている方は極僅かです!

なので、知財戦略に長けている弁理士・弁護士(ダブルライセンスだと最高)さんを探し出して、お友達になっておきましょう🤣
東京都内には結構いらっしゃる(全国的に見ると東京に一極集中している)ので、東京のベンチャー企業は比較的出会いやすいと思います。
法律事務所のお問い合わせフォームから連絡をすれば、手があいていれば返してくれるはずです。

なお、知財弁護士は少数派であるがゆえに常に激務の中にいることが多いので、忙しすぎて対応してもらえないこともあります。
その場合でも諦めずに他の事務所等に声をかけて、探し続けましょう!



おわりに

ということで、今日はスタンドアローン問題を扱わせていただきました😁
ベンチャー企業でも最近はよくM&Aが行われるので、こういうちょっと専門的な内容も今後は書いていこうと思っています。

今後ともよろしくお願いいたします🙇‍♂️

ではまた次回!


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著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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