【小説】老犬

 2021年に書いた短編小説。

 あらすじ:
 車道に飛び出してきた猫を避けようとして、誤って少女を轢き殺してしまった男が、猫の街に招待され、虫でもてなされる。


 うんざりするような寝苦しい夜にはいつもそうしているように、俺はその夜も、それまで走ったことのない道を時速42キロで飛ばしていた。
 突然、道の右から黒いものが飛び出してきたので、俺は慌ててハンドルを右に切った。猫らしい。都合の悪いことに歩道を10歳位の少女が歩いており、気づいた時にはすでに、歩道に乗り上げた車は少女の体を道沿いの雑木林へと跳ね飛ばしていた。俺は車からおりて、枯れ葉の上に横たわる少女の体を見た。頭から血を流し、腕を42度に折り曲げ、しかも折れ曲がっている部分が関節よりも42ミリほど上にあるのだから、残念ながら生きているとは考えられなかった。
 なぜこんな遅くに歩道を歩き、よりによって俺の車が歩道に乗り上げるときを見計らったかのようにこの場に居たのだろう。俺は腹が立ってきた。寝苦しい夜のちょっとした息抜きをしたばかりに、とんでもないお荷物を背負い込み、このせいで今後の俺の生活まで危うくなりかねない。どうせ夜遅くに出歩く子供が危険な目に会うことくらい、誰もが知っていることなのだ。たまたま危ない目に合わせたのが俺だったからと言って、やすやすと名乗り出るほどのことでもないだろう。
 「死体を隠そう」と俺は決意し、口に出した。
 「ああ、轢いちゃいましたねえ」と後ろで声がした。
 振り向くと、俺が命を助けた黒猫が、ニヤニヤと笑いながら俺の方を眺めていた。
 俺は、厄介な独り言を聞かれてしまったことにうんざりした。とっくにどこかに消えていたと思った猫が、闇に紛れて、一部始終を面白がりながら見物して、俺が死体を隠すつもりでいることまで知ってしまったのだ。猫ごときに脅迫され、俺が平穏に暮らし続ける邪魔をされるのは我慢ならない。(いざとなったら、猫も殺そう)と思いながら、俺は平静を装い、努めて明るく猫に返事した。
 「まさかこんな時間に出歩いているなんて思いませんでしたよ……人通りのない夜道を横断しようとした猫を助けるという、そんな当然のことをしようとしただけのことで、まさか意図せぬ事故に巻き込まれる羽目になるだなんて夢にも思いませんでしたが、まあ、猫を助けるという、そんな当然のことをするのはやはりどんな時でも正しいことなのだろうなと、まあ、そういう思いを新たにせずには居られない、そんな気分で居ますね、私は」なるべく俺が猫の命を助けたことを猫に納得させるような言葉を選びながら、俺は一気にまくしたてた。
 「その死体を隠すおつもりですか?」猫は俺の言葉を意に介さぬかのように、ズバリと俺の聞かれたくない質問を発した。
 俺は動揺をさとられないよう、再び平静を装った。「死体を隠す、もちろんこれは非常に悪いことですし、どんな時でもそんなアイディアを頭に浮かべないことはもちろんのことですが、しかし、猫の命を助けたぞ!という思いを新たにしたついでに、思わず普段では考えつかないことを口走ってしまうことが、まあ、けして無いとは言い切れないわけですが、まあ、やはり、猫の命は大切なものですねえ」冷や汗をかきながら、再び一気にまくしたて、俺こそが猫の命を救ったのだとアピールした。
 「よろしければ、お手伝いしましょうか」と猫がニヤニヤ笑いながら言った。
 予期せぬ猫の言葉を聞いて、俺は驚き、同時に全身の緊張がほぐれていくのを感じ取った。「あ、はい」と気の抜けた返事をした。
 「どうか、私達の街にいらしてください。死体はそこでなんとかしましょう」と猫は言った。「命を助けていただいて、本当にありがとうございます」
 俺は、意外に物分りの良い猫だったことに安心して、気さくに返事した。「いや、いいんだよ。いいことをするのは気分がいいものだからね」死体をお姫様抱っこした。「それで、君たちの街はどこにあるんだい?」
 「こちらへどうぞ。付いてきてください」猫は雑木林の奥へと歩き始めた。
 道から離れれば離れるほど、あたりは暗くなっていった。俺は次第に不安になってきた。暗闇は怖い。車の運転技術が高まっても、暗い道の恐ろしさはどうにも克服し難かったので、いつも、外灯の多そうな夜道を走ることに決めていたほどである。
 猫は黒い色だったが、ゴロゴロと音を立てているので、闇に紛れてもなんとなくどこにいるかわかるものである。俺は黒猫を見失うことなく、怖い暗闇を歩き続けた。
 黒猫が立ち止まった。「ここが入り口です」
 暗くてよく見えなかったが、地面に空いた穴を指しているらしい。「街」なるものが穴の中にあるとは思わなかったので、俺は驚いた。「穴に入らなきゃいけないのかい」と俺は尋ねた。
 「地下都市です。入り口は狭いですが、中は広くて居心地がいいですよ」
 俺は、暗い穴の中に入りたいとは思えなかった。「お邪魔じゃないかな?」
 「私の命の恩人ですから、みんな歓迎しますよ」
 「でも、死体もあることだし……」
 「私達でなんとかしますよ。気になさらないでください」
 「じゃあ悪いけれど、死体だけ引き取ってもらえるかな?」
 「そうおっしゃらず、ぜひいらしてください」
 あまりに猫が強く勧めるので、俺は断ることができなかった。
 猫に続いて、俺はジメジメした穴に潜り込んだ。確かに猫の言う通り、少し進んでいくだけで次第に穴の幅は広くなり、穴の向きはほとんど横向きになり、俺が立って歩けるくらいになった。しかも、途中からは電灯まで備えられ、道も舗装されている。猫の地下都市へと続く道は、壁と天井が土をむき出しにしていることを除けば、ヒトの街にある地下道とほとんど変わらないように見えた。
 ただし、快適とは言い難い。ジメジメした空気の嫌な感じは進めば進むほど強くなっていき、ほとんどむせこみそうになるくらいだった。土の匂いと、得体のしれない、なにかが焦げたような薄い匂いとが鼻を突き、密度の高い空気の中を歩いている感じが体全体を包み込んだ。
 しばらく歩くと、前方に、巨大なカードが2枚落ちているのが見えた。それはトランプの、ハートのQとKだった。俺達から見て縦方向に並べられており、横幅は俺が両手を広げたのと同じくらい大きかった。
 「あ、犬カーだ」と猫が言った。「これで行きましょう」
 猫は前の方にあるハートのQの上に座り込んだ。よく見ると巨大なトランプは少しだけ宙に浮いていた。
 「これは何だ?」と俺は尋ねた。
 「私達の車ですよ。犬カーと呼んでいます。どうぞ、ハートのKに座ってください」
 カードの表面はベタベタしていて気持ちが悪かったが、俺は仕方がなく、死体を抱えたままトランプに乗ってあぐらをかいた。2人分の重さが全体に負担を掛けたのか、カードは中心が少し凹み、下からはキイイキュウウと音がなった。
 「進め」と、猫が低い声で言った。この猫からこんなに低い声が出ると思わなかったので俺は驚いた。
 2枚のカードはガサゴソと音を立てながら、すばやく発進した。
 密度の高い空気が風となって体全体にぶつかってくるのを感じながら、俺は猫にまた尋ねた。「これはどうやって動いている?」
 「何、簡単です」猫がこともなげに答えた。「裏に42匹のゴキブリが貼り付けてあるんです」
 俺はぎょっとした。動くトランプの脇を覗くと、確かに、黒い足がはみ出ていた。俺は体中がムズムズするのを感じた。
 「なぜ犬カーというんだ?」
 「さあ? ここが犬街だからでしょう」
 「だって、……猫の街じゃないのか?」
 「昔は犬が使っていました。少し前に私達が犬を追い払って、今は『犬街』という名前の猫の街です」
 「なぜ『猫街』に名前を変えないんだ?」
 「えっ」猫は驚いた顔をした。「そんなこと、考えたこともなかった……」尊敬したような眼差しを俺にぶつけてきた。「素晴らしいことをお考えになるのですね。普通では考えつかないようなアイディアを、そんな簡単に披露してくださるだなんて感激です」
 俺は褒められて気分が良くなり、体全体の不快感も少し解消されてきた。
 それからしばらくして、猫が「止まれ」と低い声を出すとゴキブリたちが止まった。どうやら低い声に反応するらしい。
 「ここが犬街の中心部です」と猫が自慢気に言った。
 しかし犬カーに乗ってここまで来る間、延々、電灯以外にはなにもない道を進んできただけである。降りた地点もそれまでと何も変わらない、ただのジメジメした地下道だ。
 「何もないじゃないか」と俺は言った。
 猫は、自尊心を傷つけられたような顔をした。
 面白かったので、俺は更に追い打ちをかけた。「地下都市だなんて言うからどんな立派な場所かと思ったら、なんだ、ただの地下道じゃないか。猫の考える『都市』なんてこの程度のものなのか? 所詮は猫だな! 期待しただけ損したね、全く」
 猫はクウンクウンと犬のような音を立てて悲しんだ。
 「じゃあ、死体は置いて帰るから」俺は抱いていた少女の死体を降ろした。
 「どうかお待ちを。仲間を呼んできますから……」悲しそうな目をしたまま、猫は、土がそのままむき出しになった壁にめり込むように設けられたボタンを押した。
 何かが外れるような音を立てて、土の壁に、俺の身長と同じくらいの高さの四角い輪郭が現れた。輪郭の内側を猫が右の前足で軽く叩くと、輪郭に囲まれた、土にしか見えなかった部分が扉のように外側に勢い良く開いた。
 「どうぞ、入ってください」と猫が言った。中では何匹かの猫が、忙しそうに紙に何かを書き込んでいた。室内も、床が舗装されている他は何も装飾がなく、不快な空気もそのままだった。
 俺は少女の死体を抱き上げ、「おじゃまします」と言いながら中に入った。
 猫たちが一斉に俺の方を見た。全員が黒猫だったので、俺には個体の区別がつかなかった。
 「誰だよ、こいつ」
 「何の用だよ」
 「ここはお前なんかの来るところじゃないよ」
 「そうだよ、帰れよ」
 「駄目だよみんな、この方は僕の命の恩人なんだよ」俺をつれてきた黒猫が、慌てて口を挟んだ。「この方は、夜道に飛び出した僕を避けてくれたんだよ」
 「ひええ、そうだったのかい」一匹が驚いたような声を出した。「そんなことは露知らず、ずいぶん失礼な物言いをしてしまいまして、本当にすみませんでした」照れたようにニヤニヤと笑いながら、丁寧な言葉で詫びてきた。
 「いや、いいんだよ、誤解は誰にでもあることだから気にするなよ」俺は内心イライラしながら猫を慰めた。猫の分際でずいぶんとなめた態度を取ってくれたものだ。
 「この方は僕を助けようとして、誤ってその少女をはねてしまったんだ。どう考えても、そんなところを歩いていたそいつが悪いんだよ」
 「なるほど、確かにそれはそいつが悪いね」
 「じゃあ、死体は私達で引き取ろうか」
 「うん、ちょうどアクセサリもいろいろ作りたかったところだしね」
 「アクセサリって何だ?」と俺は聞いた。
 「少女の体は、いろんな使いみちがあるんですよ。例えば――」その猫は、俺が床に置いた死体の耳を引っ張り、前足の爪を使って器用に切り取り始めた。
 猫たちの爪はカッターナイフのように鋭く砥いであるらしい。俺は少し怖くなった。
 猫は、少女の死体から両方の耳を切り離すと、自分の耳の少し下にくっつけた。「こういうのがアクセサリです。どうです、似合いますか?」
 おしゃれのつもりなのだろうか。俺は猫の意図を汲みかねて、なんと答えてよいかわからなかった。
 猫はなおも、自分のおしゃれさを誇るような表情を俺に向け、無言で感想を求めてきた。仕方なく、俺は本当のことを言った。「気持ち悪いだけだ。似合わないよ」
 猫はしょんぼりした表情になった。だがどんな表情をしているときも、猫たちはどことなくニヤニヤしたような微笑みをたたえている。面白かったので、俺はさらに厳しい言葉を付け足した。
 「少女の耳をくっつけて少女らしさを演出しても、そういうアイテムにすがらなきゃごまかせない醜さが目立つだけだと思うよ。醜いよ。やめた方がいいよ。全然似合わないよ」
 猫はクウンクウンと言ってしょげかえった。
 「私達にとっては、少女耳をアクセサリにするのはおしゃれの基本なのですが……」猫は少女耳を取り外すと、しょんぼりと壁の方に近づいて、壁に設置されたボタンを押し、俺がここに入ってくる時と同じ要領で別室の扉を開けた。
 扉の向こうの薄暗く狭い空間には、肌色の物体が、大量に無造作に積まれていた。それらはよく見ると、すべてヒトの耳だった。
 俺はぎょっとした。「それは全部、少女耳なのか?」
 「そうです」先程切り取った少女耳を中に放り込みながら、猫は答えた。「ここは少女耳の保管室です」
 俺は近づいて、積まれている耳をよく眺めた。小さな耳もあれば大きな耳もあるが、シミやシワが目立つ耳ばかりである。耳垢がベッタリと貼り付いているものもたくさんある。
 どう見てもほとんどが老人の耳だった。全体的に不潔な感じが漂っている。
 「どうして少女の耳だと分かるんだ?」と俺は尋ねた。
 「分かる、というより感じられると言ったほうがいいですね。アクセサリとはそういったものなのです」
 「どうやって集めている?」
 「大抵は、業者に頼むのです」
 あちこちで見境なく耳を集め、少女の耳と称して猫に売りさばいている業者がいるらしい。老人の耳が多いのは、年老いて警戒心が薄いからだろう。いや、ひょっとすると死体から切り取っているのかもしれない。
 「その業者も猫なのか?」
 「いえ、犬ですよ」
 「犬街」から犬を追い出したくせに、犬から「犬アクセサリ」を買うのは構わないらしい。猫たちは、耳と見れば少女の耳と思い込んで、老人の耳とも知らず犬に金を払い込んでいるわけだ。哀れなものだ。
 「本物の少女の体からアクセサリを作れる機会はあまりないのです」と言いながら、猫は少女耳の保管室の扉を閉めた。「少女耳の流通の多さと、肝心の少女の希少さが全然釣り合わないのは不思議です。困ったものです」
 「でも今日はこの方のおかげで、いろいろアクセサリが作れるよ」と後ろで聞いていた別の猫が言った。
 「耳以外も使うのかい」と俺は聞いた。
 「少女鼻、少女乳首、少女膝の皿、少女かかと――出っ張っている部分は、全部アクセサリに使えます」そして、猫は深々と頭を下げた。「今日は貴重な機会を与えてくださって、ありがとうございます」
 俺は少しいい気分になった。猫ごときからとはいえ、感謝されるのは良いものだ。
 「さあ、おもてなししますので、どうかゆっくりしていってください」そう言うと、猫は低い声を出した。「来い」
 別の部屋に通じているらしい廊下の奥から、ガサガサと音を立てながら、食事用の長いテーブルが自分で動いてきた。
 俺は再び気分が悪くなった。「動力源は、ゴキブリなのか」
 「そうです。便利なものでしょう」猫たちは胸を張った。
 テーブルの後ろから、土鍋やコップや酒瓶やティーポットが並んでついてきた。
 「止まれ」と猫が言うと、テーブルは俺達の前に止まり、その上に、食器や酒瓶がゴソゴソと登ってきた。
 「さあ、犬茶をどうぞ」猫がティーポットを手にとり、薄汚れたコップに黒々とした液体を注ぎ込んだ。
 「いや、いい」と俺は断った。ティーポットの下には黒いものが貼り付いていた。
 「では犬酒をどうぞ」猫が酒瓶を持ち、コップに黒々とした液体を注ぎ込んだ。
 「いらないよ」俺はまた断った。
 「では、みんなで犬鍋でも食べましょう」猫が土鍋の蓋を開けた。
 鍋の中には、玉子がぎっしり、黒い液体に浸かっていた。
 「これは何だ?」喉元にこみ上がってくるものを感じながら、俺は尋ねた。
 「茹でたゴキブリの玉子です。とても美味しいですよ」猫が舌なめずりしながら玉子を前足でとり、割ろうとした。
 俺は「やめろ!」と叫んだ。
 猫たちは驚いた顔をして俺を見た。驚いた拍子に、玉子を持っていた猫が玉子を落としそうになったので俺は再び「気をつけろ! 玉子が落ちる!」と叫んだ。
 「もしかして、ゴキブリがお嫌いでしたか」右の前足に持った玉子のバランスを器用に保ちながら、猫が意外そうな顔で俺に尋ねた。
 「ああ、嫌いだ、気分が悪い!」俺は気分の悪さに任せて猫を怒鳴りつけた。「貴様らみたいな下等生物と違って、俺達はゴキブリを何より嫌っているんだよ! ゴキブリで命の恩人をもてなそうとするなんて、所詮は猫の浅知恵だ! お前ら、衛生観念ってものが無いのかよ! きたねえんだよ、猫どもめが!」
 猫たちはクウンクウンと音を立てて悲しんだ。
 「すみません、存じ上げなかったのです」
 「とっととこの汚いものを片付けろ、猫!」俺は大声で命じた。
 猫は悲しそうな顔をしながら、「行け」と低い声を出した。
 ガサゴソと音を立てながら、テーブル、土鍋、ティーポット、コップ、酒瓶が去っていった。
 「どうか許してください。私どもにとってはこの上ないごちそうだったのです」と猫が言った。
 「貴様らのごちそうが、他の生き物にとってもごちそうだと思ったら大間違いだ」
 「はい、ごもっともです。配慮が足りませんでした」猫は悲しそうに詫びた。「あなた方の街にも、ゴキブリはいるんですね」
 「虫けらの中でも一番の嫌われものだ」と俺は答えた。
 「では、私達の街から何匹か逃げたのかもしれません。ゴキブリを作ったのは私達なので」
 「作った? どういうことだ?」
 「私達がこの犬街に来た時、犬たちは『ゴキカブリ』という生き物を街の動力源として使っていました。しかし、私達が犬たちを追い出した後、『ゴキカブリ』を別の生き物に変えなければならなかった。何しろ『ゴキカブリ』は、犬の声にしか反応してくれないのです。そこで――」猫は、部屋の隅にあるブラウン管モニターのような機械を指した。「あの犬マシンを使って、別の生き物を作ったのです」
 俺は、犬マシンなるその機械に近づいた。箱の上に乗ったブラウン管モニターからケーブルが1本伸びているだけの単純な機械だった。
 「こんなもので生き物を作れるのか?」
 「生き物を作るだけじゃありません。いろいろなことができますよ」
 「どうやって?」
 「モニターの上に、穴があるでしょう」
 確かにそこには通気口のような小さな丸い穴が一つあった。
 「そこに、文字を入れるんです」
 俺は再びイライラしてきた。「嘘だろう。デタラメを言うなよ」
 「試してみましょう」猫は、床に転がっていた紙と鉛筆をとり、紙に

キカブリ
ゴカブリ
ゴキブリ
ゴキカリ
ゴキカブ

と書いた。そして前足の爪を使って、器用に1行ずつ切り分けた。猫の爪が鋭いことを思い出して、俺はまた少し怖くなった。
 猫は「キカブリ」と書かれた紙を俺に見せた。「この語から、どんな生き物を想像しますか?」
 「さあ……」俺は少し考えた。「キ」という響きが持つ鋭い感じが、その次の「カ」で平板になり、「ブリ」で一気に重々しさを得つつ、しかし全体としては「キカ」の軽さに対して「ブリ」の重さが邪魔な感じのする生き物、というのを俺は想像した。「前方が尖った虫じゃないかな?」
 「そう、まさしくそうなのです」猫は紙を俺に渡した。「犬マシンにこの紙を入れてみてください」
 俺は紙を丸めてモニターの上にある穴に押し込んだ。
 モニターに、俺が漠然と思い描いた虫のイメージが映し出された。
 「なるほど、こりゃすごい」俺は感心した。
 「この要領で『ゴ』『キ』『カ』『ブ』『リ』をバラバラにしたりくっつけたりして、最終的に、一番良いのは『ゴキブリ』だろうという結論にたどり着いたわけです」
 「それで……この犬マシンは、モニターに映すだけじゃなくて、実物も作り出せるんだね?」
 「モニターの右に付いているボタンを押すと、下の箱に実物が落ちてきます」猫は胸を張った。「押してみましょう」
 「やめろ!」と叫んだが、今度は間に合わなかった。猫がボタンを押すと下の箱の前面が開き、キカブリが勢い良く飛び出してきた。キカブリは部屋の隅へと突進すると、どこかへ消えてしまった。
 「モニターの左には紙を取り出すためのボタンが付いています」猫が左側のボタンを押すと、俺が押し込んだ紙が飛び出てきた。「キカブリホイホイを作っておきましょう」猫は紙に「ホイホイ」と書き足すと、なれた手付きで犬マシンに紙を入れ、右側のボタンを押した。
 箱からは、表面に木の洞のような大きい凹みがある、ゴムの塊のような物体が転がり出てきた。
 「へえ、これがキカブリ捕りか」物体を持ち上げると、ぐにゃぐにゃとした柔らかい感触の向こう側に、脈打つようなリズムが感じられた。俺は気持ちが悪くなった。少し力を入れて握ると、凹みからどろりとした赤い液体がたれてきた。俺は慌てて物体を壁の方に放り投げた。「こいつは生き物だ」
 「そう、犬マシンからは生き物しか出てきません。それはキカブリを餌にする生き物です」
 「何だ、宝石を無限に作ったりはできないのか」
 「ダイヤモンド、という生き物が吐き出されてくるでしょうね」
 俺はがっかりした。猫にダイヤモンドである。約立たずなマシンだ。
 キカブリホイホイの元へ、虫が群れをなして吸い込まれていった。キカブリホイホイはバリバリと音を立てて虫を噛み砕いた。虫はどれもキカブリのようだった。
 俺は後退りした。「なぜこんなにキカブリがいるんだ?」
 「誰かがキカブリという生き物について想像したのでしょう。誰かに想像されたことのあるキカブリが、キカブリホイホイに吸い寄せられているのです」
 「じゃあ、ホイホイを先に作れば実在しない生き物も吸い寄せられてくるのか」
 「誰かが想像したことがあれば、『想像されたもの』がそこにやって来ます」
 「うーむ、一体どういう仕組みなんだろう?」
 猫たちは照れくさそうにニヤニヤと笑った。「犬が作ったものなので、僕達はよく知らないんです」
 俺はモニターから伸びているケーブルを手に取った。ケーブルの先端にはプラグが取り付けられている。「これは何だ?」
 「それは、頭の中をモニターに映し出すためのプラグです」
 「それはすごい。どうやって使うんだ?」
 「プラグを右耳に挿すとモニターに記憶が映し出されます。左耳だと想像したことです。僕がやってみましょう」猫は自分の左耳にプラグを挿した。
 少女耳をつけた黒猫が、体をしならせる映像がモニターに映った。
 猫たちはモニターに見入った。「格好いい……」
 これだけということはないだろうと思いしばらく待ってみたが、変化する気配はない。退屈な映像だ。「他のものを映せ」と俺は命じた。
 モニターには大量のゴキブリが映し出された。
 猫たちはよだれを垂らした。
 「やめろ、気持ち悪い、他のを映せ!」俺は叫んだ。
 モニターには、また少女耳をつけた黒猫が映った。
 俺は呆れた。「他に考えることはないのかね」
 猫は照れくさそうにした。「左耳だと、今の自分の願望が素直に映し出されるんです」猫はプラグを右耳に差し替えた。「今度は記憶を映しましょう」
 モニターには、俺の姿が映し出された。
 先程の俺らしい。モニターの中の俺は、画面に向かって同じ言葉を繰り返し怒鳴った。「下等生物! 下等生物!」
 怒り狂う自分を見せられて、俺は少し恥ずかしくなった。
 「僕たちにとっては悲しい言葉でした」と、猫は悲しそうに言った。案外細かいことをいつまでも覚えているらしい。
 「まあ、気にするなよ」俺は気さくに猫を励ました。「過ぎたことは水に流そうぜ」と言い、猫からプラグを抜いた。「気を取り直して、今度はあの死体に挿してみよう」
 耳を切り取られた少女の耳の穴は、プラグの差込口のように露出していた。俺は左の穴にプラグを差し込んだ。
 モニターには何も映らなかった。
 「死体は何も想像しないということですね」と、猫が言うまでもないことを指摘した。
 「そんなことは分かっている」俺は右耳に差し替えた。
 モニターには、黒猫が映し出された。
 猫たちはモニターに見入った。
 少女自身の手が映り、猫を撫で回した。「猫ちゃん」と少女が優しい口調で言った。頬ずりしているらしく、猫の顔がモニターの方へ近づいてきて大写しになった。
 モニターに見入りながら、一匹が「なんていい子なんだろう」とつぶやいた。猫たちは涙ぐんでいた。少女の優しさが、猫たちを感動させたらしい。
 そして、なんとなく冷たい目で俺を見た。俺がこの少女を轢き殺したことを咎めるような視線だった。先程までアクセサリを作れると言ってはしゃいでいたくせに、勝手なものだ。俺は腹立たしく思った。
 「その方は僕の恩人なんだよ」俺が命を助けたらしい、しかし外見からは他と区別がつかない黒猫が俺を弁護した。
 猫たちは、納得しかねる様子でモニターを凝視した。
 俺は猫たちの物分りの悪さに苛立ちながら、自己弁護した。
 「危険な夜道を歩いていた少女の側にだって落ち度はあるんだよ、なあ。暗い道で、猫か少女かの二者択一を迫られた時、俺が選んだのはどっちだったっけ? 君たちの仲間の命だったじゃないか。何の躊躇もなく、俺は猫を選んだんだぜ!」
 「その人、僕たちのことを下等生物呼ばわりしていたよ」と一匹がポツリと言った。まだそんなことにこだわっていたのかと、俺は呆れた。
 「言葉の端々から、僕たちへの軽蔑がにじみ出ていたよ」
 「その人、本当は猫なんてどうでもいいと思っているんだよ」
 「猫を轢かなかったのだって偶然だよ」
 猫たちは次々に、的を射たことを言った。意外に洞察力が鋭いらしい。俺は焦った。
 とっさに俺は、自分が猫をかわいがっている様子を犬マシンのモニターに映して、猫たちの機嫌を取ろうと考えた。少女の右耳からプラグを抜くと、俺は自分の左耳にプラグを挿した。
 一瞬、震えるような刺激が頭の中を走った。その震えと連動するかのように、光の残像のような模様が俺の視界にかぶさった。やがて模様は、ゴキブリになったり、キカブリになったり、キカブリホイホイになったりした。俺は懸命に、模様を猫に変えようとした。
 突如として、模様ははっきりと黒猫の形に変わった。モニターに目を向けると、同じイメージが映し出されているようだった。俺はホッとして、その黒猫を可愛がろうとした。
 だが、モニターに映し出された俺の手はカッターナイフを握っていた。
 モニターの中の俺は、あっという間に猫のヒゲを切り落とし、しっぽを切り、耳を切り、体中の出っ張りを削ぎ落とし、猫を丸い塊に変えてしまった。
 「嘘だ!」と俺は叫びながらプラグを引っこ抜いた。「俺はこんなことを考えていない!」
 猫たちは、鋭く俺を睨みつけていた。目にははっきりと俺への敵意が宿っていた。「その機械は、本当の願望だけを映し出すんだよ」
 「それならそうと早く言ってくれ! いや、誤解だ! 俺にそんな願望はない!」
 猫たちは、爪を立てて俺ににじり寄ってきた。俺はカッターナイフのように鋭い猫たちの爪を思い、怖くて体がガタガタ震えだすのを止められなかった。「堪忍してくれえ。許してくださいよお」俺は震えながら命乞いした。
 「そいつは猫殺しだ!」と一匹が叫んだ。猫のくせにすごい迫力だ。
 「放っておくと僕達が殺される!」
 「逃がすな! 許すな!」
 「殺せ!」
 「殺せ!」
 「首をちょん切ってしまえ!」
 「誤解なんですよお」俺はひざまずき、手をすり合わせた。
 「こっちから逃げて!」俺達が入ってきた扉の前で、一匹の猫が手招きした。俺が助けた猫らしい。俺はその瞬間、猫たちを突き飛ばし、扉へと駆けた。猫たちはバウバウと吠えながら俺を追った。俺は扉を越え、来る時に通ってきた地下道に出た。
 俺が助けたらしいその猫も一緒に出てきて、外から扉を閉めた。俺達はそれぞれ、来る時に使った犬カーに飛び乗った。巨大なトランプの下で、ゴキブリがキイイキュウウと音を立てた。
 「行け」と猫が低い声を出した。
 犬カーはもと来た道を走り出した。
 「もっと早く。もっと早く」猫がゴキブリを急かした。
 俺の全身に、生暖かい風が当たった。どう考えても時速42キロ以上で走っていた。
 振り返ると、ずっと後ろの方で猫たちが俺達を追っていた。だが犬カーのスピードには到底追いつきそうもない。必死の追走にもかかわらず、猫たちはどんどん小さくなっていった。
 俺は胸をなでおろした。「ざまあみろ、猫どもめ!」と後ろに向かって叫んだ。あれだけ必死に追いかけても俺達には追いつけないのだと思うと、いい気味だった。
 「僕の仲間たちがご迷惑をかけてすみませんでした」と猫が言った。
 この猫だけは最初から最後まで俺の味方で居てくれたのだ。多少の迷惑を責めても仕方がない。「いや、いいんだ」とだけ俺は答えた。
 「みんな、誤解しているんです。命を助けてくれた実績があるのに、犬マシンに映った映像だけで善悪を決めつけて……」
 「誤解は誰にでもあるさ」
 やがて犬カーは、地下道の端のあたりまで来て止まった。俺と猫は犬カーから降りて、少し歩き、穴から外に出た。相変わらず周囲は真っ暗だ。
 穴の前で猫が言った。「僕、みんなのところに戻って、もう一度みんなを説得してみます」
 俺は驚いた。
 「こんな形でお別れしてしまうのはあまりにも申し訳ないので……」
 「犬カーで行くのか?」と俺は聞いた。
 「すぐに戻ります。みんな、一時の感情に流されているだけなんです。本当はいい奴らなんです」
 猫の浅はかさに、俺は呆れた。犬カーで行ってしまっては、あの猫たちが犬カーを奪い、すぐに俺を追いかけてくるかもしれない。所詮は猫の浅知恵だ。
 俺は黒猫を持ち上げた。
 「は、放してください。すぐに戻りますから」猫は俺の手の中でジタバタした。
 「行くな」
 「わかりました、じゃあ、今日はもうお別れしましょう。また遊びに来てください」
 「行くな」
 「僕は帰らなきゃいけないんです。放してください」
 「行くな」
 「お願いです、放して……」
 「行くな」俺は猫の首をへし折った。
 猫は目を回し、泡を吹き、吐くような音を立てた。やがて呼吸は止まり、ゴロゴロという喉の音も聞こえなくなった。猫の顔からはニヤニヤした表情がゆっくり消えていった。
 やはりはじめからこうしておくべきだったのだ。猫などに気を許したのがそもそもの間違いだったのだ。
 幸い、猫の死体は少女の死体よりもずっと小さく埋めやすそうである。言うなれば、俺は少女の死体を穴に放り込んだ見返りに、扱いやすい猫の死体を手に入れたわけである。「犬街」は俺にとって、まるで自動販売機のようなものだった。
 「死体を埋めよう」と俺は決心し、口に出した。
 「猫を殺しちゃったの?」と、後ろで声がした。
 振り向いて暗闇に目を凝らすと、そこに10歳位の少女が立っていた。少女は黒い服を着ているらしく、暗闇の中で白い顔と手首が浮かび上がっていた。
 俺は目の前が真っ暗になるような思いだった。
 「誤解だ……」俺は力なく答えた。なぜ俺が聞かれたくない独り言をつぶやくたび、見計らったようにそばに誰かがいるのだろう。「この猫ははじめから死にかけていたんだ。今、俺の腕の中で息を引き取った」
 少女は、猫の死体を覗き込んだ。「首の骨が折れてるよ」
 「はじめから折れていた」
 「ふーん」少女は微笑んだ。「でも、本当は死体を埋めたら駄目だよね」
 少女の言う通り、たとえ俺が殺したわけでなかったとしても、猫の死体を見つけたら通報しなければならないことになっている。子供のくせに法律に詳しいらしい。俺は腹が立ってきた。法的な知識のある小さな生き物に独り言を聞かれただけのことで、せっかく猫たちの街から無事に帰ってきたことが無駄になりかねない。
 いざとなったら少女も殺してしまおうか。だがきっと、少女は猫ほどはすんなり死なないに違いない。ジタバタ抵抗する少女の首をへし折ることを想像して、俺はあまりの面倒臭さにうんざりした。
 とりあえず、俺は説得を試みることにした。俺はポケットから飴を出して、少女に渡した。
 少女は飴を口に入れた。
 「美味しいか?」と俺は聞いた。
 少女は頷いた。
 「このことを誰にも言わなければ、もっとあげよう」
 少女は頷いた。
 「俺が殺したわけじゃないんだ。分かるね?」
 少女は俺をじっと見た。
 「死体を見て驚いて、つい、考えてもいないことを言ってしまったんだよ」
 少女は飴をかみ砕いた。そして、「死体を隠すんだったら、私も手伝うよ」と言った。
 意外な言葉だった。猫に言われたのと同じセリフである。
 やはり、法律に詳しいらしいこの少女は、後から俺を脅迫するつもりなのだろうか。猫の時は、命を助けられた猫の側に俺を助ける理由があったのだ。何の得にもならないのに、死体を隠す共犯になろうとするだろうか。
 「私達の街に来てよ」と言い、少女は歩き始めた。
 (いざとなったら、後ろから首を絞めよう)と思いながら、俺は少女についていった。
 暗い雑木林を少し進むと、少女は一本の巨木の前で立ち止まった。巨木には、あまり大きくない洞があった。
 「ここが入り口だよ」と言い、少女は洞の中に入っていった。斜め下の方に穴が伸びているようである。中はあまり明るくない。暗い穴に入りたくなかったので少し迷ったが、結局、俺も後に続くことにした。
 頭がつっかえそうになったので洞の内側に手を掛けると、脈打つようなリズムが感じられた。俺はぎょっとして手を離した。「まるで生き物だ」
 「ねえ、いいものをあげるから早く来て」と少女が言った。
 俺は奥に進んだ。
 洞の中は、ヒト一人が立って歩けるくらいの、緩やかに下に伸びる地下道になっていた。地下道は白っぽく内装されており、どこにも照明が見当たらないのにぼんやりと明るかったので俺はホッとした。
 緩やかな斜面を少し進んでから、来た道を何気なく振り返って、俺は入り口がふさがっていることに気がついた。「大変だ、入り口がふさがった!」と叫び、俺は抱えていた猫の死体を放り出して駆け戻った。俺達の入ってきた穴は無くなり、ゴムのような柔らかい壁に変わっている。
 「それは後で戻してあげるから、こっちに来てよ」と少女は言った。
 やはり少女は俺を騙したのだ。俺は腹が立った。「今すぐここから出せ!」と怒鳴った。
 「お兄さん」少女は歌うような調子で、楽しそうに俺に語りかけた。「私の体を、お兄さんの好きにしていいよ」
 「何? 何だって?」思いがけない少女の言葉に、俺は面食らった。「何のことだ?」
 少女は俺が放り出した猫の死体を持ち上げると、ポケットからカッターナイフを取り出した。
 俺はぎょっとして後退りした。
 少女はカッターナイフで猫の耳を切り取り、自分の頭にくっつけた。そしてふざけた口調で、「ニャア」と言った。
 「どう? 似合う?」
 俺はただ黙って、猫の耳をつけた少女の顔を見つめた。少女の意図が理解できなかった。
 だが、しばらく少女を見つめているうちに俺は突如として気がついた。
 少女は美しい。
 そして、少女は猫に似ていた。
 「私もお兄さんと同じで、猫を殺すのが好きなの」と言い、少女は、耳をなくした猫の死体を放り投げた。猫の死体は床にたたきつけられ、何回かゴロゴロと転がった。
 少女は俺の方へカッターナイフを差し出した。
 「こっちに来て、このカッターで私の体を思いっきり傷つけていいよ。私、お兄さんの猫になってあげる」
 俺は、犬マシンのモニターに映し出された、俺の手でバラバラにされていく猫の映像を思い出した。
 地下道の地面から、鼓動が足の裏に伝わった。
 俺はゆっくり少女に近づいた。少女の前に立ち、少女の美しい顔を見つめながらカッターナイフを受け取った。
 少女は挑発的な笑みを浮かべて俺を見た。
 「切り刻もう」と俺は決意し、口に出した。
 しかし、聞かれたくないことを口に出した時は大抵そうであるように、その時も俺たちのそばでは誰かが聞き耳を立てていたらしい。少女の後ろのぼんやりした暗闇に、同じくらいの年齢、体格、容姿の少女たちが、同じく黒い服を着て、何人も、膝を抱えて座っていることに俺は気がついたのだ。
 少女たちは皆美しかった。
 だが、俺には少女たちの顔の区別がつかなかった。




[2021年執筆]



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