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『フミオ劇場』まとめ

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昭和初期生まれ“めちゃくちゃ系父“のエピソードを小説風連載にしたものです。 家族が被った数々のネタを書き残しておこうと、昨年よりnoteで始めてみました。 80%実話で、20%…
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#エッセイ部門

フミオ劇場 2話『フミオは次男(母・孝江の回想)』

フミオ劇場 2話『フミオは次男(母・孝江の回想)』

 【第2話は、フミオの母孝江の回想バージョンです】

孝江は4人の子を産んだ。邦男、フミオ、信子、由紀男。総じて大人しい普通の子。次男のフミオを除いて。

「孝江さんとこの次男、フミオ言うた?あの子はなに考えてるのか、よお分からん子やね」

「あんじょう育ててやらんとあかんよ」

 孝江は耳が痛かった。言われなくても分かっている。

 毎年夏休みに家族で行った和歌山の白良浜でも、フミオだけ「海はい

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フミオ劇場  10話『100円玉を探せ!』

フミオ劇場  10話『100円玉を探せ!』

 昭和51年頃

 テーブル型ゲーム機が
 各地の喫茶店に置かれ始めた。

 初代はブロックくずしだ。

 フミオの妻、三枝子の喫茶店にも
 さっそく1台が設置された。


 自宅が喫茶店🟰自宅がゲーセンとなる。

 子供にとっては
 パラダイス天国楽園。

 しかし誰より驚喜したのは
 大人代表フミオだった。



「貯金箱から100円玉、持ってこい」

 子供たちに命じる。

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フミオ劇場  11話『FCT(フミオクレイジートレーニング)水編』

フミオ劇場  11話『FCT(フミオクレイジートレーニング)水編』



 フミオは教えたがり屋さんである。

 博識で口達者までは許すが
 この男の場合
 粗暴で放逸といった要素が加わるので

 いきなり
 FCT(フミオクレイジートレーニング)と
 呼ばれる案件が発生する。

 そんな言葉はないが。

 まずは、被害者(犬)シロ。

柴系雑種で、番犬用にフミオに飼われたが
 滅多に吠えない。

 日向ぼっこが大好きで
 シロの一生は
 餌を食べて寝るだけの

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フミオ劇場  13話『はよチャンネルまわせ』

フミオ劇場  13話『はよチャンネルまわせ』

 その物騒な風貌から、酒豪と勘違いされがちだが、フミオは下戸だった。よって晩酌しながらのテレビ鑑賞でなく

 ⚫︎お茶(玄米茶かほうじ茶)
 ⚫︎果物(桃党)
    子供は食べたら鼻血出ると独り占め
 ⚫︎お菓子(鴬ボール、羊羹)
 ⚫︎タバコ盆

 ピクニック型鑑賞である。

テレビは一家に一台の時代。家族揃って観るのが日常だ。

 そうなるってぇと、どうなるかってぇと
 フミオのうんち

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フミオ劇場  15話『大女優はみんな』

フミオ劇場  15話『大女優はみんな』

昭和40年あたり。銭湯はひとつの社交場。フミオの父雄吉も二人の孫を連れて、毎日のように通った。

息子の嫁さんが少しでも休めるように。そんな温かい人柄の爺さんだった。

まだ生後三ヶ月程の和彦の身体を丁寧に洗い、脱衣所の床にバスタオルを敷いて手早く拭く。それからてんかふ(ベビーパウダー)おむつ。

赤ん坊を風呂に入れるのは、母親でもひと苦労。爺さんはお湯でさっぱりしたにも関わらずすでに汗だくだ。そ

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フミオ劇場  16話『オッさん不倫逃避行』

フミオ劇場  16話『オッさん不倫逃避行』

「ワシがおらんかったら『私、生きていけない』て言われたんやぞ。そんな奴をほっとけるか?」

 フミオが娘に
 不倫を問い詰められた時の言葉だ。

「パパの様子がおかしいんよ。女やと思うわ」

 母から電話があったのが数日前。

 樹里は大阪市内で一人暮らし中。実家の様子が分からずとにかく驚いた。

 だが、今ひとつピンと来ない。 
 フミオは【飲む・打つ・買う】なら【打つ】専門。

 下戸だから、

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