見出し画像

2024年8月24日 「闇の精神史」感想

Audibleで、木澤佐登志 「闇の精神史」早川書房を
聴き終わったので、
その感想です。


今作は難しかった…


今作は、本当に、理解が難しかったです。
特に第一章が無茶苦茶難しく
久々に、数行どころか、一節丸ごとわからないということが続き、
聞くのをやめようかと何度思ったことでしょう。
後半、面白くなってきてホッとしたのですが、
今回ばかり危なかったです。
7時間15分がかなり長く感じられました。

何がそんなに難しかったのか ロシア宇宙主義

 
第1章はロシア宇宙主義に関する論考なのですが、
これがもう本当に難しかったです。
ところどころわかるけれども、全体的には皆目見当がつかないという
気持ちで聞いていました。
そもそも
読み手、つまり自分にロシア的な知識がなさすぎたのだと思います。
Audibleは耳から聞く読書なので、
全く未知なる単語はどういう漢字なのかどういうつづりなのかがわかりにくく、
イメージしにくいのです。
デジタルボイスも今回ばかりは相性が悪かったです。
デジタルボイスで読み上げられる、専門用語は本当に頭に入ってきません。
(ヒョードロフがヒヨードロフに聞こえました。)
ロシアの哲学に対する知識がなさ過ぎた、
ロシアに理解がなさ過ぎた、
ロシア人名や用語になじみがなさ過ぎたため、大混乱しながら聞くことになったといわけです。
単語を知らないと、聞き取って理解するのは難しいのに、
ロシア宇宙主義は、独特の用語がわりとあって
それが混乱に拍車をかけたのだと思います。
しかし、第1章まで行くと、
これまで全く想像できなかった、
ウクライナとロシア間の戦争の背後にある、
プーチンの思想や
イーロン・マスクの思想がどういうものなのか、おぼろげながらわかるようになりました。
そういう意味で、苦労して読んでよかった、と思います。
しかし、本書は、文字で読んだ方が頭に入りやすいかもしれません。

アフロフフューチャリズム


第2章アフロフューチャリズムと
第3章サイバースペースはもう少し気楽に聴くことができました。
特に、アフロフューチャリズムは考えたことがない視点だったので
興味深く聞きました。
土地から暴力的に切り離された人間(アフリカにルーツを持つアメリカ人)が宇宙を故郷として求めるというのは
いわれてみれば、筋が通っています。
そして、それがいかに強い影響を持つことなのかも…。
また、アフリカの時間概念も面白かったです。
アフリカの時間概念は基本的には「過去」と「現在」で
「未来」はまだ存在しないから、「ない」というものだということです。
現在、日本の民俗学の本にも手を付けているのですが、
時間概念というものは、日本の農村でも、
子どもが学校へ通うようになる世代までは
薄い地域もあったようです。
もしかすると、その頃の日本人の、時間概念は
西洋的時間概念(未来にフロンティアを求め続ける)より、
ずっとアフリカ的時間概念に近かったのではないかと想像します。
そして、
「未来」ではなく、蓄積した「過去」の上に「現在」があり、
その「過去」にこそ、可能性があるというのは
単なる未来志向よりもずっと今の明るい未来が見えない現実に合っているかもしれないと思いました。
我々は既に、引き返す道のりを歩いているのかもしれません。

サイバースペース


第3章のサイバースペースの話は、ゆるふわな明るい未来展望をぶった切るような展開で、目が覚めました。
まず、サイバースペースの話の前にあったカジノの話が大変面白かったです。
日本のパチンコ屋とアメリカにおけるカジノは、構造そしてその背景にある思想がそもそも違うというものなのですが、
確かに、先日、海外からの観光客が、パチンコ屋の入り口から、
パチンコ台の前に座る高齢者の写真を撮りまくっていたことを
思い出してみてもそうなのかもしれません。
パチンコ屋は、うるさくて、まぶしくて煙草の煙がきついので
自然と回避できていますが、カジノであればわかりません。
静かで落ち着いていて、パーソナルで、いい匂いがして、丁寧な接客であったら?しかもそれらが、個人情報からぴったり調整されたものであったら?などと考えてぞっとしてしまいました。
やっぱりカジノ建設には賛成できません。
また、フロンティア精神のもとに開拓されてきたサイバースペースですが、
皆が想像するような、平等で自由なフロンティアではないのではないかという点は全く、不勉強でした。
VR空間に没頭するにも肉体的健康さが必要であるとか、
サイバースペースを維持するために必要な、膨大な電気製品、ケーブルなどの整備、電力のために働く労働者や資源あってこそのサイバースペースであることなど
言われてみればなるほどと思うのに、本書を読むまでは全く気付かないことでした。

終章


この本は著者が繰り返し指摘する「私たちがきっとくると思っていた未来は来ないし、それはもはや過去にしかない」ということに目をつぶらないようにするためのワクチンのような本だと思います。
終章でこれまでに上げた多岐にわたるテーマをすべて取り上げ、論としてまとめ上げたのには驚かされました。

時には歯ごたえのある本を


かなり苦戦した一冊でしたが、その分、刺激は受けました。
自分が面白いと思う本ばかりではなく
「これはちょっと難しいなぁ」と思う本を読みきるのも大事ですね。
ただ、タイトルが「闇の精神史」というのは、最後までピンときませんでした。この本の内容は別に闇ではないので…。

最後に、この本の中で頻出する言葉の意味を覚えられなかったので、
ここにメモしておきます。
もっとこういう単語があったと思うのですが、とりあえず、2つだけ。

・ヘゲモニー(英語表記:hegemony/ドイツ語:Hegemonie)
指導的な地位支配権主導権。「ヘゲモニーを握る」
・アーキテクチャ(architecture)
建築。建築学。建築様式。構造。
構造。構成。組織。
コンピューターを機能面から見たときの構成方式。記憶装置のアドレス方式,入出力装置の構成方式などをさす。一般に,同じアーキテクチャーのコンピューターには,ソフトウエアの互換性がある。


この記事が参加している募集

気に入ったら、サポートお願いします。いただいたサポートは、書籍費に使わせていただきます。