- 運営しているクリエイター
記事一覧
金の麦、銀の月(2)
第一話 月が満ちる夜
穂高とラーメン屋に出かけた日から数日後の夜のことだった。晩御飯もお風呂も終わり、私は密かにネットサーフィンをしていた。穂高の誕生日が二ヶ月後に迫っていたからだ。
ブブッとスマホが震え、通知音と共に一件のメールが届いた。
ショップか何かの配信メールだろうと、私は無視しかけたが、通知欄を見てふと手が止まった。そのメールの宛先がずいぶん前に使っていたメアドだということに気づ
金の麦、銀の月(1)
***プロローグ***
今日も隣の部屋からカタカタと軽快にキーボードを叩く音が聞こえてくる。
最近はかなり調子がいいようだ。
二年前、穂高(ほだか)が小説家になるという長年の夢を叶えた時、自分の事のように嬉しかったことを覚えている。私が諦めてしまった夢も穂高が一緒に叶えてくれたような気がした。
カレーの入った鍋を温め直し、ご飯食べるよーとドアに向かって声をかけると、「もう少し!」というくぐも