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末期癌の家族に抗がん剤治療をするべきかの相談に薬剤師からのアドバイス

大切な家族が、末期癌といわれたとき、

多くの方が不安の中に取り残されます。

抗がん剤をするのか、しないのか。

抗がん剤をする場合、いつまで続けるのか、

副作用が辛い場合、途中で治療を中止できるのか。

たくさんの治療方法を選択しなければいけません。

患者の気持ち、家族の気持ち、優先順位など

実際のアドバイスを元に、お話ししていきます。

これから治療を選択をしていく方の

参考になれば幸いです。



2020年12月 

15年ぶりにサークルの後輩が薬局に来ました。

背景:70歳の母 乳がん(始まり)、肺がん、肝臓がん転移の末期がん

相談者:娘

家族構成:母(患者)、父、娘、弟2人

相談内容:主治医から抗がん剤治療を勧められているが、

するべきか迷っている。



娘「主治医から、抗がん剤を勧められているねんけど

お母さんは、嫌やっていうてるねん。

でも、家族のために抗がん剤をした方がいいのか迷っているねん。」

薬剤師「主治医は、抗がん剤をしたら、体調が良くなるっていうた?」

娘「抗がん剤をしても良くなるかわからないって答えたよ」

薬剤師「お母さんは、抗がん剤をしたくないって言ってるねんな。

医療には正解はないねん。

だから、お母さんがどうしたいかが正解やねん。

でも、本人もどうしたいか、わからんと思うねん。

これから在宅薬剤師として訪問するわ。

そして、少しずつお母さんとお父さんの気持ちを整理していくね。」


2021年1月

在宅訪問が始まりました。


お母さんは、10年前に抗がん剤治療をして辛かったこと

薬を飲みたくないこと、

最後の日まで口からご飯が食べたいこと

自分の足でトイレに行きたいこと、

お風呂に入りたいこと

できれば、家族に囲まれて見送られたいと話してくれました。


お父さんは、お母さんの痛い・辛い・苦しむ姿を見るのが怖い

と話してくれました。

娘さんと2人の弟は、お母さんの意思を尊重したいと話してくれました。



1月、主治医から、突然「抗がん剤治療は、しないでおきましょう」

と言われたそうです。

医療従事者として治療を勧めなければいけないけれど、

患者の体力的に難しいと判断したのだと思います。


2月、肺の水が、肺を圧迫し呼吸が苦しくなりました。

医師からの提案で、肺の中の水を抜くことにしました。


肺の中の水を抜くと、一時的に楽になるけど、

急激に体力が落ちること

一緒に過ごす時間が短くなることを娘に伝えました。

家族に、言いづらいことですが、

家族が少しずつ現実を受け止められるように伝えました。


1度目の肺の水を抜いた後、2日間くらいとても体調が楽になりました。

お母さんは、痛いとか辛いを言わない人でしたが、

飲む麻薬の回数が増えていることから、

体力的には落ちているということを、娘に伝えました。


お母さんは、3月の末に家族みんなで、温泉に行くことを

楽しみにしていました。

綺麗に髪を染め、その日につけていくスカーフを嬉しそうに、

私に見せてくれました。


3月上旬、もう一度あの息苦しさから解放されたいと、

2度目の肺の水を抜くことを、お母さんは希望しました。

体力的にもかなり落ちているので、

温泉旅行を早めにできないか提案しましたが、

家族の予定があわず、2度目の肺の水を抜くことになりました。

お母さんの体力は、急激に低下し、退院できないかもしれないと家族は、

覚悟を決めました。

しかし、お母さんの希望と病院の計らいもあり、

お母さんは家に戻ることができました。


お母さんは、自宅に戻ると家族との再開の安心感から、

みるみる体力を取り戻しました。

在宅医療の凄さを感じた一瞬です。


お母さん「あとどれくらい生きられるんかな」

と私に聞きました。

桜は見れないと心の中で思いましたが、

言葉にできなかった私の表情から

お母さんは、読み取ってくれました。

お母さん「わかった」

お母さんが、覚悟を決めた一瞬でした。

その後、お母さんは、家族に音声メッセージを残したり、

お父さんが寂しくないように

娘さんにいろいろ伝えたそうです。

なんとか体力も回復し、家族みんなで温泉に行くことができました。

亡くなる1週間前に、仕事ではなく、友人として、

お母さんと娘に会いました。

お母さんは、目をつむって穏やかな表情で、私たちの話を聞いて

おられました。

その部屋には、なんとも言えない穏やかな空気の流れがありました。

病院とは、全く違う空気。

いつまでも帰りたくなくて、気がつけば2時間経っていました。

その日は、お母さんの友人が次々と会いに来られました。


亡くなる4日前

お母さん「最高に幸せや」

娘「こんなに苦しいのに幸せなん?」

お母さんは、穏やかにうなずいたそうです。

これが、お母さんと娘の最後の会話になりました。


肺に水がある場合、
亡くなる直前に点滴をすると肺を圧迫し、患者が、呼吸困難で苦しむ    場合があります。
今回の場合、娘から在宅医に、
最後の点滴、酸素吸入、心臓マッサージなどの延命措置などを
してほしくないと伝えました。
しかし、家族内で意見が分かれることがあります。
お父さんが最後の点滴を希望しましたが、
主治医から「顔が腫れて苦しむことになるよ」と
お父さんに説明してくださり、延命措置はしませんでした。

2021年3月31日

自宅で家族に見守られながら穏やかに永眠されました。


多くの医療相談に共通することは、

答えは、患者の中で決まっているということ。

医療には、正解がありません。

だから、患者が選択したことが正解(目的地)になるのです。

その目的地に向けて、家族が一緒に走ること。


医療従事者ができることは、家族の不安を言語化し

家族がお互いの方向を確認し、患者が正解とした目的地に向かって

走ることをアシストするだけです。

人は、必ず亡くなります。

残された家族は、どれだけ患者のために行動しても

後悔します。

しかし、患者が正解とした目的地に、家族が一丸となって

辿り着いた家族は、後悔が少ないように思えます。


今回は、娘と家族の決断力、実行力が

全て良い選択をした結果だと思います。



最後までお読みいただきありがとうございます。

これからも「家族がいてよかった」

「知っていたら家族を守れる医療情報」

を配信していきますので、応援よろしくお願いします。

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