鵜林伸也

ミステリ作家です。自作の著作リストや、作品の裏話、読んだ小説の長文感想や考察などをまと…

鵜林伸也

ミステリ作家です。自作の著作リストや、作品の裏話、読んだ小説の長文感想や考察などをまとめています。

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  • 鵜林伸也の読書遍歴

    ミステリ作家、鵜林伸也の、生まれて初めての読書から初の長編刊行までの間の読書遍歴をまとめました。こういうバックボーンの作家なんだな、とみなさまの参考になれば。

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    読んだ本の長文の感想や考察などです。

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鵜林伸也 自己紹介

鵜林伸也(Ubayashi Shinya) 1981年、兵庫県神戸市生まれ。立命館大学史学部東洋史専修卒業。 鮎川哲也賞やミステリーズ!新人賞への応募を続けていたところ、2009年に鮎川哲也賞に投じた「スレイプニルは漆黒を駆ける」が編集者の目に留まり、翌年に短編「ボールがない」が書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー『放課後探偵団』に掲載される。 2018年、長編『ネクスト・ギグ』を刊行し、本格デビュー。 この世の中に、楽しいこと=おもしろい小説を少しでも増やしていくのが生き甲

    • 『案山子の村の殺人』のゴリゴリのネタバレ感想(というか、一作家のへっぽこ推理)

       みなさまこんにちは、ミステリ作家の鵜林伸也です。  先日、東京創元社様から、楠谷佑さんの『案山子の村の殺人』のプルーフをご恵贈いただきまして、久々に一晩で読破してしまいました。いやあ、おもしろかった!  様々な美点がある本作ですが、なによりも!うれしいのは!読者への挑戦状が!二つもあることですよね!!!  はじめは普通に感想をポストしようと思っていたのですが「いや、これ絶対みんな、ネタバレで語りたいやつやん」と思い直し、noteに書くことにしました。だって、二つも読者への挑

      • 『秘境駅のクローズド・サークル』ここだけのあとがきのようなもの

         理想的なミステリ短編ってなんでしょう。  もちろん、人それぞれ様々な理想があるはず。具体的に挙げるなら、シャーロック・ホームズ、ブラウン神父、泡坂妻夫、連城三紀彦etc。ですが、書き手として自分がそういったタイプの作品――レベルの差はさておき――を書けるのかといえば、どうにも自信がない。  短編小説は、引き算の美学です。長編小説を幾層にも色を塗りこめる油絵だとすれば、短編は水彩画、あるいは水墨画でしょう。  で、僕はというと、明らかに油絵タイプ。短くなればなるほど不得手、と

        • 『ネクスト・ギグ』文庫版のあとがきのようなもの~あれから四年が経った、ロックの今~

          単行本刊行時のあとがきはこちら。  『ネクスト・ギグ』は2018年10月31日に刊行された、鵜林伸也の第一長編です。わざわざ日付を細かく入れたのは、年末のランキング集計の最終日に刊行されたにも関わらず、「このミステリーがすごい!2019年版」15位、「2019本格ミステリ・ベスト10」12位という高い評価をいただくことができたから。  今でも覚えていますが、刊行の直前に開かれた鮎川哲也賞受賞パーティーの二次会にて、席にいた人々に向けて自己紹介をしました。『ネクスト・ギグ』の

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        • 『案山子の村の殺人』のゴリゴリのネタバレ感想(というか、一作家のへっぽこ推理)

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          鵜林伸也の読書遍歴⑫『ネクスト・ギグ』ができるまで

           長々と書いてきた読書遍歴も、いったんここで最終回となります。これまでの連載はマガジンにまとめてありますので、興味がある方はそちらをご参照ください。  前稿で書いた通り、このころの僕はハードボイルドの影響を強く受けていました。いえ、『ネクスト・ギグ』がハードボイルドであるという気はさらさらありません。しかし、文庫化にあたって読み直してみたところ、随所に「ここはハードボイルドの影響だな」と感じる箇所がある。特に、第三章の最後のシーンなどは、ハードボイルドの下地がなければ絶対に

          鵜林伸也の読書遍歴⑫『ネクスト・ギグ』ができるまで

          鵜林伸也の読書遍歴⑪ハードボイルドは楽しい!

           前稿にて「編集者にいろいろ本を勧めていただいた」と書いたのですが、そのうちのひとつが、ロス・マクドナルド『さむけ』です。先に書いた通りハードボイルドにはなんとなく苦手意識があり未読だったのですが、本格ミステリとしても楽しめる、という言葉と、プロになったのだから有名作は読んでおこう(いや、プロになる前に読んでおけという話ですが)という気持ちで、手に取ります。  ところが、です。  いやあ、おもしろかった! ほんと、なんで「ハードボイルドは合わない」なんて自分は思っていたんでし

          鵜林伸也の読書遍歴⑪ハードボイルドは楽しい!

          鵜林伸也の読書遍歴⑩海外ミステリと新本格以前のミステリ

           前稿で触れた、宇宙エレベーターを題材にした応募作について、少し。付け焼き刃ではあるもののSFを読み漁り、僕は「スレイプニルは漆黒を駆ける」という作品を書き上げ、鮎川哲也賞に応募しました。残念ながら落選とはなりましたが、それをきっかけに東京創元社の編集者の方に声を掛けていただき、アンソロジー『放課後探偵団』に収録された「ボールがない」で無事デビューすることができたのです。こうして僕は、有栖川有栖創作塾を卒業しました。  その編集者の方がまた非常に読書家で、様々な本を勧めていた

          鵜林伸也の読書遍歴⑩海外ミステリと新本格以前のミステリ

          『ネクスト・ギグ』 〈赤い青〉 Biography

           以下の文章は、『ネクスト・ギグ』単行本刊行時に、装丁のデザインの一部として掲載された、作中に登場する架空のバンド〈赤い青〉のプロフィール(Biography)です。  文庫本ではプロフィールを生かした装丁が引き継がれなかったため、せっかくですので、noteにて公開しておきます。 〈赤い青〉シノハラヨースケ(Vo,Gt)、クスミトオル(Gt)、ミナミコウタロウ(Ba)、ショウジタカユキ(Dr)。 〈サウザンドリバー〉の解散から2年、表舞台から姿を消していたクスミトオルだが、

          『ネクスト・ギグ』 〈赤い青〉 Biography

          『ネクスト・ギグ』逆ライナーノーツ

           『ネクスト・ギグ』には、実在のバンド名やエピソードなどがちょこちょこ登場します。それらを「ライナーノーツ」のように解説しよう、というのが本稿です。  ライナーノーツとは「音楽レコードや音楽CDのジャケットに付属している冊子等に書かれる解説文」のこと。ですので本来の意味とは異なるのですが、作品の楽しみをより深めるために役立つもの、という点は同じでしょう。ここでは、元ネタの音源も紹介しています。音楽の解説を文章で行うのではなく、文章の解説を音楽で行う「逆ライナーノーツ」とも言え

          『ネクスト・ギグ』逆ライナーノーツ

          鵜林伸也の読書遍歴⑨SFとの出会い

           さて、ここで少し時間を前に戻します。前稿のとおり初めて鮎川哲也賞にて一次選考すら通過せず落ちてしまった僕は、思います。腹を括って勝負せねばならん、と。  ひとつ、長年温めていたとっておきのアイデアがありました。それが、近未来を舞台とした、宇宙エレベーターをクローズド・サークルとしたミステリ、でした。  今までそれを書かなかった理由はなにか。それはたったひとつ「SFというものをほとんど読んだことがなかったから」です。ここまで書いてきたようにわりと読む本のジャンルには拘らないほ

          鵜林伸也の読書遍歴⑨SFとの出会い

          鵜林伸也の読書遍歴⑧有栖川有栖創作塾のこと

           読書遍歴、で始めたはずのこの連載ですが、いよいよそのお題から外れていきます(苦笑)  有栖川有栖創作塾は、2007年4月から開校した、有栖川有栖氏が塾長を務める創作講座です。おおよそ三ヶ月間、二週間に一度の計六回を一セットとした講座で、現在はなんと第四十六期が開講中。年三回×十五年ですからそういう数字になるわけですが、実に凄いことです(それは、これから書く内容を読んでいただければ、よりそう思っていただけることでしょう)。なお、ここから敬称をどうするか悩むのですが、実際にお呼

          鵜林伸也の読書遍歴⑧有栖川有栖創作塾のこと

          鵜林伸也の読書遍歴⑦電脳ミステリ作家倶楽部のこと

           自宅からのネット環境が整う以前から、大学のパソコンを使ってインターネットにはアクセスしていました。当時は、ニフティサーブはすっかり廃れ、「侍魂」をはじめとするテキストサイトや2chが全盛のころでした。もちろん「小説家になろう」は影も形もない……と書きかけて調べてみると、ちょうどこのころにケータイ小説サイトとして開設されたようですね。いずれにせよ、当時はメジャーな存在ではありませんでした。  では、そのころの小説家志望のアマチュア物書きたちは、どうやってインターネットに作品を

          鵜林伸也の読書遍歴⑦電脳ミステリ作家倶楽部のこと

          鵜林伸也の読書遍歴⑥生まれて初めての投稿

           読書遍歴、と題しながら、この章では少々脱線して、大学時代の創作のこと、賞への投稿のことなどを書いていきたいと思います。  先述の通り、生まれて初めて小説を書いたのは、高校三年生の終わりごろでした。その最初の創作こそ学園ミステリ風であったものの、純文学にかぶれたようなものや、恋愛もの、(第一章だけ書いて完結させられなかったものの)ファンタジーなど、節操なくあれこれ書き散らしていました。このころ書いた作品は、ある意味、処女作『ミキ』よりさらに恥ずかしい。背伸びをしているさまが、

          鵜林伸也の読書遍歴⑥生まれて初めての投稿

          鵜林伸也の読書遍歴⑤有栖川有栖という衝撃~鵜林伸也のミステリ観~

           ここまで書いていて、思う人もいらっしゃるでしょう。「あれ、本格ミステリの話はいつ出てくるの?」と。  そうなのです。実は、大学生になるまで僕は、きちんと本格ミステリに触れてはいませんでした。ミステリ、という枠に入るのは、シャーロック・ホームズに赤川次郎、宮部みゆき、それに加え、漫画やドラマで親しんでいた『金田一少年の事件簿』ぐらいのものでしょうか。  そんな僕が、本格ミステリの洗礼を受けたのはいつか。それは、大学二回生の終わりごろ、ちょうど二十歳になったばかりのときでした。

          鵜林伸也の読書遍歴⑤有栖川有栖という衝撃~鵜林伸也のミステリ観~

          鵜林伸也の読書遍歴④ニフティサーブと高校時代、初めての小説を書くまで

          ※そろそろ現役作家の名前がガンガン出てきますが、本稿はすべて敬称略で通しています。御了承ください。  ニフティサーブ、という言葉を知っているのは、僕より上の世代に限られるでしょう。むしろ、あなたの年齢でよく知っていますね、と言われるかもしれません。  きっかけは、わりと新しいもの好きだった父親が、発売してすぐのWindows95を買ってきたことでした。当時は電話回線を使ってネットに繋いでおり、パソコンでネットを見ようとすれば電話ができなくなる、なんてことを覚えてらっしゃる人

          鵜林伸也の読書遍歴④ニフティサーブと高校時代、初めての小説を書くまで

          鵜林伸也の読書遍歴③宗田理と赤川次郎

           小学校の高学年ごろにどっぷりはまった作家が、宗田理でした。  きっかけはテレビで放送していた『ぼくらの七日間戦争』の映画です。たしか、子供がテレビを見れる時間が決まっていたかなにかで、結末部分が見れなかったんですよね。それで、本を読めば続きが知れるだろう、と。しかし、御存知の方は分かるでしょうが、映画と小説ではけっこう話がちがっていたので、その目的は叶わなかったのですが。  ですが、小説版は小説版で、とてもおもしろいものでした。それから僕は立て続けに「ぼくらシリーズ」を読ん

          鵜林伸也の読書遍歴③宗田理と赤川次郎