見出し画像

ユダヤ人の受難のパワー(なぜロスチャイルド家は誕生したのか?)13

イスラエルへの支援

戦争が終わってナチス・ドイツのユダヤ人にたいする「最終決着」の恐るべき実態が白日のもとにさらされると、生き残ったヨーロッパのユダヤ人は制止を振り切って一斉にパレスチナへ向かった。

ロスチャイルド一族の間にも、あまりに悲劇的な現実の前にもはやシオニズムに正面切って反対を唱えるものはなかった。

1947年11 月29日、ニューヨークの国連本部でパレスチナ分割案が採択され、それから6ヶ月後にイスラエルは建国を宣言した。

それはアラブ諸国との血みどろの戦い(第一次中東戦争、パレスチナ戦争ともいう)の最中のことで、多難な将来を予感させる船出だった。

しかしながらユダヤ人にとっては千九百余年の民族離散の苦しみの末にようやく手中にした祖国だった。

ロスチャイルド一族もそれぞれに新しいユダヤ人の国を訪れ、独立が達成されたことでその貢献が見直されて“祖国の父”と呼ばれるようになったエドモンの先駆的な植民事業の場所に足を運んだ。

エドモンは1934年に死んだのだが、その遺体は妻の遺体とともに54年にフランスから再興なったユダヤの国に運ばれ、地中海を見下ろすラマト・ハナディーグの洞窟に埋葬された。

3年後、エドモンの長男ジェームズ・ド・ロスチャイルド(1878〜1957)が1600万イスラエル・ポンドを国会議事堂(クネセト)の建設費に当てるようにと遺言を残して死んだ。

その遺志が守られて新生イスラエルのクネセトがエルサレムの丘にさっそく建設されたことはいうまでもない。

その妻ドロシーは、ハナディーヴ財団を設けて、生まれて間もないひ弱なイスラエルにロスチャイルド家の潤沢な資金を注ぎ込んだ。

それはヘブライ大学の建設維持、教育テレビの開設から芸術文化、病院施設、老人病対策、さらには畜産振興に至るまであらゆる分野に及んだ。

ロスチャイルド家の多面にわたる事前活動は続いており、ハナディーヴ財団はエルサレムの最高裁判所の建物(1992年)をそっくり寄付した。

やはりパリ・ロスチャイルド家の一員であるクラッシック・バレー・ダンサーのベサべ(1914〜?)はイスラエルに移住してバレー学校を創設、またバレー団を率いて各国を公演して世界中に知られている。

慈善というよりは事業のためにイスラエルに乗り込んだのはエドモンの孫のエドモン・アドルフ(1926〜1997)で、イスラエル・ゼネラル銀行を設立し、原油をアカバ湾から地中海沿岸に運ぶためのパイプラインやホテル、ゴルフ場を建設した。

このような事業は、イスラエル首相だった故ベン・グリオンと話し合った末でのことだったという。

戦争に次ぐ戦争、膨大な軍事費のため止まることを知らないインフレのおかげで、商売としては散々な目にあったようだが、イスラエルの基盤整備には大いに役立った。

第三次中東戦争(1967年)のときには、パリ分家のいとこのアランとともにイスラエルに飛んで銃を握った。

イスラエルにはエドモン男爵が独立前に創立した企業が成長して、セメント会社やブドウ酒醸造販売会社として発展しており、エドモン・アドルフが創設した会社群とともにロスチャイルド家の存在は小さくない。

地中海に面したテルアビヴにはロスチャイルド通りと名付けられた通りもある。

ロンドン・ロスチャイルド家のヴィクター(第三代ロスチャイルド卿)は新生イスラエルの諜報機関モサドの創設にかかわったのではないかと言われている。

諜報の世界の真相を確認することは至難の技だが、第二次世界大戦中からイギリスの諜報部門との関係を深め、自らスパイ尋問を行ったこともあるヴィクターは戦後、密かに私的諜報機関を作って中東、さらには中国情勢を探っていたというから、なんらかのつながりがあったとしても不思議ではない。

こうした諜報活動の前歴から、ヴィクターについては何度か「ソ連のスパイだった」との報道が行われ、1986年12月にはサッチャー首相がわざわざ声明をだしてうわさを否定する騒ぎがあった。

ユダヤ人の代表格であるロスチャイルド家の当主は、それぞれの国のユダヤ人教会のトップに推されており、当然のことながらイスラエルが誕生してからは密接なかかわりを持って政治的にも影に陽に支援している。

各国とイスラエルの関係が紛糾するようなときには、その人脈と影響力を駆使して調整役として奔走している。

・・つづく・・

次の記事(新時代のアラブとイスラエル)

【関連記事】『ロスチャイルドって一体何者?』(有料)

【参考文献】『ロスチャイルド家』横山三四郎(講談社現代新書)

#ロスチャイルド #ユダヤ #金融 #世界史 #国際金融 #金融 #陰謀論 #関暁夫 #差別 #迫害 #とは #何者 #何故 #フランクフルト #ゲットー #ナチ #アドルフ #ヒトラー #イスラエル #ゲシュタポ #フランス革命 #ワイン #ホロコースト


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?