徒然居士

初めまして!「エホバの証人講究」でございます。 このNOTEは、非常にコアな層を対象に…

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初めまして!「エホバの証人講究」でございます。 このNOTEは、非常にコアな層を対象に書かれている、特殊なジャンルのNOTEです。 私は長い間、エホバの証人という宗教に入信しておりました。元信者という立場から、できる限り冷静な議論を提案します。

記事一覧

5.エホバの証人の教理の考察⑮~主の晩餐(記念式)の歴史的側面

エホバの証人の年中行事で一番重要なのは、「主の記念式」です。「主の晩餐」ともいい、形式は違えど多くのキリスト教に共通する重要イベントです。カトリックのミサやプロ…

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5か月前
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5.エホバの証人の教理の考察⑭「固有の歴史観が生み出した統治体とその組織」後編

このnoteでは、エホバの証人の中央機構である「統治体」の根拠となる、1世紀のクリスチャンの歴史と、現在の「統治体」の問題点を前後編に分けて考えています。感情的な…

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7か月前
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5.エホバの証人の教理の考察⑭「固有の歴史観が生み出した統治体とその組織」前編

エホバの証人の歴史観を考える理由以前のnote(3章)では、「エホバの証人の組織の体質」の問題を取り上げましたし、下記リンクのnote(5-⑤) でもエホバの証人の「統治…

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8か月前
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コラム2~今年の「ものみの塔聖書冊子協会の年次総会」雑感

引き続き、次の予定記事「エホバの証人の歴史観と統治体(前後編)」が、難渋しており、息抜きに今年2023年10月の年次総会についての雑感を先に書きたいと思います。 今年…

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8か月前
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5.エホバの証人の教理の考察⑬「高等教育について」~その2

前回の記事があまりに長くなったため、2分割して書いております。 最初に、「その1」の冒頭に掲載しました「エホバの証人の高等教育への考え方」の囲みを再度挙げておき…

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1年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑬「高等教育について」~その1

序論1.問題の本質再入院等の体調不良で、頭の回転が鈍く論点がまとまらず、更新が滞りました。今回のテーマは書き始めてかれこれ半年以上になります。自分自身がエホバの…

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1年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑫「中立、兵役拒否を中心に」

しばらく入院で更新が滞りました。後遺症などで若干文面などへの不安があるのですが、ご容赦ください。(以下note beta版で記述) エホバの証人の信条で有名なのは、身近…

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2年前
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コラム1~最近の「ものみの塔」誌の記事などについて雑感をだらだらと

体調の関係で、続く記事の調査が進まず更新が滞っております。現在、エホバの証人の教理シリーズの「中立等」について整理中です。正確を期すためもう少しお時間をいただき…

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2年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑪「1914年という年代について(終末論)」

現代の聖書学や神学の世界では、終末論は一種のタブーとみなされています。もちろん、保守的な宗派ではエホバの証人でなくても終末論を信じている人は多くいますし、さらに…

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3年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑩「慈善事業について」

病にて入院などがあり、しばらく更新が滞りました。 さて、エホバの証人は、病院経営や学校経営はしない方針であり、あくまで伝道を本来の任務として行なってゆくという方…

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3年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑨「寄付の問題」

現代の宗教にとって、寄付の透明性は重要な問題です。多くの国では歴史的経緯や「性善説」に基づいて、免税や申告免除など様々な恩典が与えられています。信教の自由が保証…

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3年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑧「誕生日」

日本では現在、誕生日を祝うことは西洋と同じように広く行われています。この習慣について面白い記録があります。 「婦人と子ども」(1903年11月号。フレーベル會刊…

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3年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑦「輸血拒否」

おそらくエホバの証人の教義の中で、もっとも論争されてきた教義と言えるでしょう。 エホバの証人が輸血を拒否する理由エホバの証人は、血の禁令を以下の聖句を根拠に説明…

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3年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑥「神義論」

「神義論」という言葉は、周知の通り1710年ライプニッツの著書「神義論(弁神論)」に遡るわけですが、つまるところこれはきわめて近現代的問いであるということになります…

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3年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑤「二つのクラスと統治体」

これは前節④の「死後の問題」と、NOTE前半で論じてきた「組織の形態」に関係する議論です。この二つには密接な関係があるので、ここでは一緒に考慮します。 エホバの証人…

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4年前
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5.エホバの証人の教理の考察④「死後の世界と復活」

エホバの証人の死後の世界観は、伝道の書(コヘレト)などを根拠に人は死ぬと無になるというものです。しかし、ことはそう単純ではありません。聖書そのものも一貫した答え…

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4年前
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5.エホバの証人の教理の考察⑮~主の晩餐(記念式)の歴史的側面

5.エホバの証人の教理の考察⑮~主の晩餐(記念式)の歴史的側面

エホバの証人の年中行事で一番重要なのは、「主の記念式」です。「主の晩餐」ともいい、形式は違えど多くのキリスト教に共通する重要イベントです。カトリックのミサやプロテスタントの聖餐式など各派様々な呼び方があり、意味や頻度なども違いがあります。今回のnoteでは(エホバの証人も含めて)その意義や教義の問題には深く立ち入りません。

ここで扱う問題は、その歴史的背景(時間的問題)と、福音書の日付問題につい

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5.エホバの証人の教理の考察⑭「固有の歴史観が生み出した統治体とその組織」後編

5.エホバの証人の教理の考察⑭「固有の歴史観が生み出した統治体とその組織」後編


このnoteでは、エホバの証人の中央機構である「統治体」の根拠となる、1世紀のクリスチャンの歴史と、現在の「統治体」の問題点を前後編に分けて考えています。感情的な論争ではなく節度ある批判と冷静な議論を目指しております。

前編では、新約聖書時代においては、現在の「統治体」に相当するような組織(機関)は存在しなかったということを考えました。つまり、当初から多様性に満ちた宗教運動であったということで

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5.エホバの証人の教理の考察⑭「固有の歴史観が生み出した統治体とその組織」前編

5.エホバの証人の教理の考察⑭「固有の歴史観が生み出した統治体とその組織」前編


エホバの証人の歴史観を考える理由以前のnote(3章)では、「エホバの証人の組織の体質」の問題を取り上げましたし、下記リンクのnote(5-⑤) でもエホバの証人の「統治体」について既に考えてきました。

ただ、上記考察では、天的クラスの問題との関係で多くを論じたため、ここでは「歴史観と組織のあり方」という角度からもう一度考えて見たいと思います。(なので、重複もかなりありますことをお詫びします)

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コラム2~今年の「ものみの塔聖書冊子協会の年次総会」雑感

コラム2~今年の「ものみの塔聖書冊子協会の年次総会」雑感

引き続き、次の予定記事「エホバの証人の歴史観と統治体(前後編)」が、難渋しており、息抜きに今年2023年10月の年次総会についての雑感を先に書きたいと思います。

今年は公式のストリーミング画像をリアルタイムで見ることができました。(これはかなりオープンだと思いました)。英語力の問題で、結局アメリカの掲示板などで文字起こしされたものや、話題になっているものを参考にして個人的に現時点で一番印象的だっ

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5.エホバの証人の教理の考察⑬「高等教育について」~その2

5.エホバの証人の教理の考察⑬「高等教育について」~その2

前回の記事があまりに長くなったため、2分割して書いております。

最初に、「その1」の冒頭に掲載しました「エホバの証人の高等教育への考え方」の囲みを再度挙げておきます。

再掲【囲み2】エホバの証人の高等教育への考え方では、引き続き高等教育の問題について考察してゆきます。(章節の番号は前回からの続きです)。

4-3.「『差し迫った終末』を信じているため、教育は必要最低限にすべき」という見解につい

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5.エホバの証人の教理の考察⑬「高等教育について」~その1

5.エホバの証人の教理の考察⑬「高等教育について」~その1

序論1.問題の本質再入院等の体調不良で、頭の回転が鈍く論点がまとまらず、更新が滞りました。今回のテーマは書き始めてかれこれ半年以上になります。自分自身がエホバの証人二世であったゆえの強い思い入れ(後悔や被害者感情)もあり、冷静な思考が難しい分野でもあるからでしょう。結果、非常に冗長な論考になりました。独善的な部分も否めませんが、自分なりの思考の整理という意味で記録したいと思います。あまりに長文にな

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5.エホバの証人の教理の考察⑫「中立、兵役拒否を中心に」

5.エホバの証人の教理の考察⑫「中立、兵役拒否を中心に」

しばらく入院で更新が滞りました。後遺症などで若干文面などへの不安があるのですが、ご容赦ください。(以下note beta版で記述)

エホバの証人の信条で有名なのは、身近では選挙に行かないとか武道の授業拒否などでしょう。この「中立」の考え方は非常に範囲が広く、他のnoteの内容とも重なるため、ここでは関連する初期クリスチャンの歴史や「兵役拒否」などに的を絞って考慮します。

エホバの証人の定義基本

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コラム1~最近の「ものみの塔」誌の記事などについて雑感をだらだらと

コラム1~最近の「ものみの塔」誌の記事などについて雑感をだらだらと

体調の関係で、続く記事の調査が進まず更新が滞っております。現在、エホバの証人の教理シリーズの「中立等」について整理中です。正確を期すためもう少しお時間をいただきたいと思います。そのため、コラムとして雑感を挟ませていただきたいと思います。

1.2022年2月の研究用ものみの塔についてこの号を読んでいて、いろいろ思うところがあったので、過去のnoteともからめて雑感を書かせていただきます。(主に第一

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5.エホバの証人の教理の考察⑪「1914年という年代について(終末論)」

5.エホバの証人の教理の考察⑪「1914年という年代について(終末論)」

現代の聖書学や神学の世界では、終末論は一種のタブーとみなされています。もちろん、保守的な宗派ではエホバの証人でなくても終末論を信じている人は多くいますし、さらに狂信的な宗派も多く存在します。日本でも、再臨運動は20世紀の初めに盛んであり、内村鑑三なども一時大きな影響を受けたことが知られています。

それでも、一つの真理があります。これまでの「予言」すべては外れ、現在も世は終わっていない(ないしは、

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5.エホバの証人の教理の考察⑩「慈善事業について」

5.エホバの証人の教理の考察⑩「慈善事業について」

病にて入院などがあり、しばらく更新が滞りました。

さて、エホバの証人は、病院経営や学校経営はしない方針であり、あくまで伝道を本来の任務として行なってゆくという方針です。

最初に申し上げておきたいのは、彼らが他人の福祉に無関心であるというようなことは決してないということです。(自分を含めて)エホバの証人を批判する人たちが忘れてしまいがちなことですが、多くの場合彼らは一般社会でも「いい人たち」です

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5.エホバの証人の教理の考察⑨「寄付の問題」

5.エホバの証人の教理の考察⑨「寄付の問題」

現代の宗教にとって、寄付の透明性は重要な問題です。多くの国では歴史的経緯や「性善説」に基づいて、免税や申告免除など様々な恩典が与えられています。信教の自由が保証されるためにも、何らかの形での優遇ないしは保護は今後も必要だと思います。

エホバの証人の組織は世界的であり巨大である以上、運営資金は当然高額になるでしょう。したがって、寄付行為自体は同意の上であるならまったく問題ではないと思います。

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5.エホバの証人の教理の考察⑧「誕生日」

5.エホバの証人の教理の考察⑧「誕生日」

日本では現在、誕生日を祝うことは西洋と同じように広く行われています。この習慣について面白い記録があります。

「婦人と子ども」(1903年11月号。フレーベル會刊)
「我が国ではひょっとかすると、親の誕生日や自分の誕生日までも知らない者がある位だから、まして友人の誕生日など覚えている人はおそらく少なからうと、思はれる、所が、外国殊に独逸あたりでは、誕生日を祝するといふことは、中々大切なことになって

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5.エホバの証人の教理の考察⑦「輸血拒否」

5.エホバの証人の教理の考察⑦「輸血拒否」

おそらくエホバの証人の教義の中で、もっとも論争されてきた教義と言えるでしょう。

エホバの証人が輸血を拒否する理由エホバの証人は、血の禁令を以下の聖句を根拠に説明します。(いずれも新世界訳2019日本語)。

創世記9:4
「ただし,血を含む肉を食べてはならない。血は命だからである。」
使徒15:29
「すなわち,偶像に犠牲として捧げられた物,血,絞め殺された動物,性的不道徳を避けていることです。

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5.エホバの証人の教理の考察⑥「神義論」

5.エホバの証人の教理の考察⑥「神義論」

「神義論」という言葉は、周知の通り1710年ライプニッツの著書「神義論(弁神論)」に遡るわけですが、つまるところこれはきわめて近現代的問いであるということになります。もちろん、昔から「神も仏もない」という言い方がありますし、古代にも「義人の苦難」に関する話があるわけで、不条理を感じる心自体は変わらないと思います。しかし、時代によって人の心や、感じ方も違う部分があるのも事実です。

ここでは、あまり

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5.エホバの証人の教理の考察⑤「二つのクラスと統治体」

5.エホバの証人の教理の考察⑤「二つのクラスと統治体」

これは前節④の「死後の問題」と、NOTE前半で論じてきた「組織の形態」に関係する議論です。この二つには密接な関係があるので、ここでは一緒に考慮します。

エホバの証人は、死後天に行くクラスの信者と、地上で生きる希望を持つ信者の2つがあると信じています。これを本節の主題では「二つのクラス」と表現させていただきました。これは、ヨハネ福音書のイエスの2つの羊の囲いのたとえや、旧約聖書部分で言及される、義

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5.エホバの証人の教理の考察④「死後の世界と復活」

5.エホバの証人の教理の考察④「死後の世界と復活」

エホバの証人の死後の世界観は、伝道の書(コヘレト)などを根拠に人は死ぬと無になるというものです。しかし、ことはそう単純ではありません。聖書そのものも一貫した答えを提供していないからです。

多くの学者が同意している点としては、ヘブライ語聖書(旧約聖書)では、大まかに言えば、霊魂不滅を主張していないということです。創世記にあるとおり、「塵なれば塵に皈るべきなり」(文語)ということです。旧約聖書学者の

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