tsugitoshiTOMA

(FAR EAST TOKYO)NIKKE Groupのボーカルギター、當眞です。…

tsugitoshiTOMA

(FAR EAST TOKYO)NIKKE Groupのボーカルギター、當眞です。 『週刊、おれ。』という、週刊活字連載を掲載しています。 http://tsugitoshitoma.tumblr.com/ https://soundcloud.com/touma1025

マガジン

  • 『週刊、おれ。』

    (FAR EAST TOKYO)NIKKE Groupのボーカルギター當眞がお届けする、週刊活字連載です。 毎週月曜刊行。と謳いつつも、ちかごろ不定期更新です。

最近の記事

【銀杏の並木とあの朝のお茶漬け】

見慣れない満天の星空は、どこか発疹のようで少し心配になってしまった。空は健康だろうか。健康な空、不健康な空ってなんだろう。 ➖➖➖ 季節が確かに移ろう中で、ぼくは光の変化を探した。 懐かしいと感じるあの頃の光の色と、今日の朝の光の色を比較して、「一体なにが変わったのだろう」と。 ぼくには光が変わったようには見えなかった。 だから変わったのはぼくの方だと思った。 1分1秒とおおらかに戯れる余裕がなくなったんだと、光がぼくに説明した。 時代が便利を加速させていき、ぼ

    • 【 】

      目を開けたままで君のことを考えている。 「おかえりなさい!」 ただそれだけをでも切実に伝えたくなったよ。 黙っていることができないくらい世界はうるさい。 ただ待っていることができないくらい世界は冷たい。 遠いところに行こう。 そこで、まだ知り合っていない星を見つけよう。 それだけのことにたくさんの時間を費やそう。 思わず眠ってしまうくらいの夢幻の時間を。 それで1分1秒でも長く、君の顔を眺めるぼくの人生が延びるなら。 延びるなら。 目を開けたまま君のこと

      • 【眠りの中で聞いておくれ】

        「なにかを忘れている気がする」 電車を降りるとき。友達の家を出るとき。テレビを観ているようで、観ていないとき。ふとそう思う。 そういうとき、ぼくはキンモクセイの香りを忘れたかもしれない。雪の降った日に作った、白い滑り台のすべり心地を忘れたかもしれない。徹夜明けの朝に、食パンをかじったまま眠ってしまったあの時の眠気を忘れてしまったかもしれない。 でもそのなにかがずっとわからない。ベランダには大きな蜘蛛の巣に、小さな虫がひっかかっていた。 忘れることは川の流れ。自分を次の

        • 【おはよう、おやすみ、昨日、明日】

          明日が来る。 明日が来る! その実感。 その恐怖! ここは東京。東から登る太陽が明日の証。一日のページ。朝陽の熱は日めくりカレンダーの一番手前だけを、器用に焼き払う。その正確さときたら・・・。 だから西へ走る。ずっと今日に留まるために。明日から逃げたい。先刻すでに沈んでしまった今日の太陽を追いかけて走る。明日の太陽に怯えながら。 西へ、西へ。急げ、急げ。 明日が迫り上がる。 明日に捕まる! その実感。 その恐怖! ここはどこだ。まだまだ今日の太陽は見つか

        【銀杏の並木とあの朝のお茶漬け】

        マガジン

        • 『週刊、おれ。』
          63本

        記事

          【季節は音楽みたいだ】

          なんの役にも立たない言葉が人の心を豊かにしていく。 針で刺せば弾け飛んでしまいそうな、儚い豊潤の心。 言葉の奥にある彼彼女のふるさとにはあどけなさがある。 目には見えないのにあるのがわかる。 指で触れないのにあるのがわかる。 鼻を通らないのに香りがする。 音じゃないのに聞こえてくる。 この不思議こそが言の葉の葉脈だといつも思う。そこから栄養をもらっているんだ。 お返しするよ。 ぼくの家の前には大きな公園があって、ぼくは園内のベンチに腰掛けながら、ひと夏を全身

          【季節は音楽みたいだ】

          【Tombstone flower】

          倒れた戦士への手向けの気持ちで、先週の『週刊、おれ。』を書いた。 なのにまた、またぼくは、先週と同じ気持ちで書かなくちゃいけない。また別の戦士へ向けて。 次々と倒れていくんだ。 ぼくの真横で。 悪魔が人の背中を押して回っている。 雲のカーテンが、また一人を迷わせようとしている。 新型のウイルスとやらは、ぼくたちの心の中に素晴らしい言い訳の巣を作ったように思う。そこに身を委ねても、さしづめぼくらを救ってくれるものではないとわかっているのに、そいつは柔らかそうなクッシ

          【Tombstone flower】

          【Someday】

          ふぅ。 疲れてないのにため息ついて机に向かう。 疲れていない時のため息は、疲れている時のそれより音が少し高い。 いまはそれだよ。わかるかい? 机に向かうということは、君のことを考えているということです。 やぁ。 もっともいまは、君のことを探しながら書いているのだけれど。 毎度毎度こんな時間から書いている。夜がもたらしてくれるこの静けさは、実はこころを蝕む結構危ないやつなんだって言われる。 けれど塞いだら見えてくることもあるかもしれないと思うよ。 見たいものが

          【Someday】

          【HOTEL NORAH - 第二号室】

          トンボとあいさつを交わす。 「やぁ。」 ぼくがまだ小さい頃は見かけた顔だ。 彼らと出くわさなくなったのはいつからだろう。 彼らが姿をくらませたのか、ぼくが目を開く回数が減ったのか。 きっとどっちもだ。 内野と外野に挟まれたカゴの中でぼくは、必死に逃げ回っている。 切実な思いをひた隠しながら。 魂の塊、ドッジボール。 小鳥に道を尋ねられる。 「まるばつ美術館はどちらですか?」 「あの信号を左に曲がって、そのまま道なりに進むと左手に入口が見えてきます。」

          【HOTEL NORAH - 第二号室】

          『なぞのフライパン』

          なぞのフライパン 飛んでいく 着地 しそうで、しない ふらふらとただ舞っている なぞのフライパン 転がっていく 回転 止まりそうで、止まらない ぐらぐらとまだ転がっている あ! まがりかどまちがえたUFO ふるさとできっと怒られる まちがえることもある なぞのフライパン エイジング こげ 落ちそうで落ちない でこぼこで歴史ものがたる なぞのフライパン おいしくなれ! なぞのフライパン おいしくなれ! ➖➖➖ 読んでくれてありがと

          『なぞのフライパン』

          【ひさしぶり 2】

          まずいところで途切れてしまった。 ごめんなさい。 前回(4ヶ月前!!)、肺気胸と書いたけれど、もう全然大丈夫。 流行りのあいつにも侵されずにいます。 前回報告しようと書いた、嬉しいことはたくさんありました。 心配してくれた友達から連絡がきたこと。 新しい手帳を買ったこと。 サクマドロップスの味が懐かしく、美味しかったこと。 布団の中で眠れること。 それからこういうことが書けている事実。 おれも君も生きている。 ある日友達とそんな話をしていたら友達は言った

          【ひさしぶり 2】

          『世界中のみんなが迷子ならぼくは』

          世界中のどこを探したら見つかるだろう 蚊も食わぬ血の持ち主が 君も喜ぼうぜ ぼくたちは祝福されている でも自由を履き違えたまま外出するから どうでもいいことを流せないんだ いつも疑おうぜ 君はどこに行きたいのか いっそ眠っちまえ 夢の中なら 何処へだって行っておいで そうして怖くなったら いつでも帰っておいで 世界中のどこを探したら見つかるだろう 心地いいノイズの静寂 いまも楽しもうぜ ぼくは無限の一部になりたい 泣かせてほしいならそう言えよ

          『世界中のみんなが迷子ならぼくは』

          【ひさしぶり】

          ひさしぶり。 なんの情報アップもなく1ヶ月以上も休ませてもらった。 すみません。 そして、元気ですか? ぼくは、元気。ではないかもしれないけれど生きてます。 先日、肺気胸ってやつになって、流行り病と併発したらって考えると、ちょっと怖かったりするんだ。 2週間後には死んでるかもしれないって考えると、いろんなことを放ったらかしにしているのがだんだん嫌になってきた。 それでもまだ、死ぬなんて思っていないけれど、ぼく自身ではなくてぼくの周りの人間がこの文章を読んだ時、そ

          【ひさしぶり】

          【HOTEL NORAH -第一号室】

          蜃気楼の幻影。 これは幻なのか現実なのかわからない世界にある、宿屋の話- ➖➖➖ 「おれは生きたい。」 虎はそう息巻きながら、傷だらけの身体を引きずって歩いている。 遥か彼方の水平線にバウンドしたばかりの月が、妙に赤く、そして巨大で、虎の血潮を燃えたぎらせている。 「おれは生きたい。」 虎はまた言う。 今度はもっと腹の底から出た。 闇が深くなって月もどんどんと高度を上げて来ると、虎を襲うのは寒さと孤独だ。 孤独はずっとだ。 頂点捕食者の虎は心に言の葉を並

          【HOTEL NORAH -第一号室】

          【溶けない雪】

          いよいよ連載開始から1年が経とうとしている。 いちばん初めの投稿を見ると、2019年2月4日の日付となっており、来週、再来週の投稿でちょうど一年を経過したことになる。 続けようか、どうしようか、考えていたのですが、結果、連載は続けることにしました。ひとまず、期間を決めずに。だから、急に辞めるかもしれません。 続ける理由は、辞める理由がないからです。 また、「このまま終わったんじゃあ.......ねぇ...?」という気持ちもあります。まだ何も残していないから。 この連

          【溶けない雪】

          【缶切りは、えっと、どこだっけ...】

          「〆切本」なるものを発見してしまった。 名だたる作家たちの〆切に対する苦悩が書かれているんだけれども、これ、とても面白いです。 ぼくが言うのはおこがましいけれど、「わかる、わかる」となって、なぜだか自分が書き物に向かう力になっている気がします。 不思議です。 人の「書けない・・・」という苦悩を読んで、自分が「書ける」という気持ちになるのは。 とまぁここまで書いて、ぼく自身もまた得意の「書けないモード」に突入し、一介の名もなき書き手として、「書けない・・・」と頭を抱え

          【缶切りは、えっと、どこだっけ...】

          【星屑を遠巻きに見ながら】

          飛行機は西へ進んでいた。 太陽の後を追いかけて。 自分たちの、そして愛する人の明日を、いつも通り望んで。 これから、 叶えたい暮らしがあっただろう。 伝えたい言葉があっただろう。 渡したいプレゼントがあっただろう。 犯した罪もないけれど、太陽は見つからなかった。 だから、やりたかったことは、ずっとずっと後に持ち越しになった。 また、次に生まれて来るときまで。 想像がつかない時間の距離まで。 ぼくには想像つかない。 ➖➖➖ ここ日本では、1/13、成人

          【星屑を遠巻きに見ながら】