【Tombstone flower】

倒れた戦士への手向けの気持ちで、先週の『週刊、おれ。』を書いた。

なのにまた、またぼくは、先週と同じ気持ちで書かなくちゃいけない。また別の戦士へ向けて。

次々と倒れていくんだ。

ぼくの真横で。


悪魔が人の背中を押して回っている。

雲のカーテンが、また一人を迷わせようとしている。

新型のウイルスとやらは、ぼくたちの心の中に素晴らしい言い訳の巣を作ったように思う。そこに身を委ねても、さしづめぼくらを救ってくれるものではないとわかっているのに、そいつは柔らかそうなクッションに擬態して、甘い香りを放つのをやめない。

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ぼくはいま、断崖のへりにかろうじてぶら下がっているような状態だ。それは身体的だとか精神的状態の話じゃない。

歌うたいの天使たちがいる場所から落ちそうになっている。

もしぼくが落下したら、そのあとに続く人生には今のところ意味がない。

そうまで言い切れるのに、這い上がれないこの非力はなんだ。

君のもとに歩きたい。

君のもとに届きたい。

もう「待っててくれ」とは言えなくなった。

ビリビリに破り裂いてきた約束の、おびただしい割符を引きずってぼくはどこへ行こうというのか。行けないままずっといる。

ぼくの出番だ!

号令が聞こえる。

呼ばれてないのに!

ぼくの眼下にもあのクッションの海が広がる。ところがきっと、ぼくがこの手を離した瞬間、あれは剣山に変わるだろう。

死んでたまるか!

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君は行け。

立ち上がったその足で。

ずっと風を追いかけて、東へ、東へ。

ずっと太陽を追いかけて、西へ西へ。

季節はどこからやってくるのか、教えてくれ。

ここじゃないどこかの、風の色を教えてくれ。

疲れ果て見上げた、砂漠の夜空を教えてくれ。

難しくない、難しくないよ。

たくさん悩んだと思う。それと同じだよ。

君にはそれができた。


君はこの先どんどんシンプルになっていく。

記憶のふるいはどんどん目が粗くなっていく。

でも大丈夫。ここに一輪分の点を打った。

大丈夫。どこへでもいこう。

号令のもとへぼくは行く。なんとかして。

いつでもこの点を目指して集まろう。

どうか健康で。


読んでくれてありがとう。