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mini story * 2012〜2014

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淳士が大学真っ盛りくらいの話。 泰睦が高2から大学入学まで。
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春雪が、指に触れる

春雪が、指に触れる

竜の言葉を聞いて
私は頭が真っ白になってしまった。

「…かいがい、てんきん…」

「確定って訳じゃないんだけど。
でも、大抵の先輩達がみんな海外から始まってるから、俺もそうなるかも。」

高校一年生の頃から交際している
柏葉竜は昔から、優秀だった。

私たちの高校は、そこそこ頭が良かったけど
その高校で成績は上位5%には必ず入っていたし、
最難関と言われる私立の大学に進学して、
就活も、断るのが

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心の塵は夜のように黒い

心の塵は夜のように黒い

意識を失うように眠りについた波音ちゃんを見て
俺は我に返った。

そこから一気に血の気は引いて、
慌てて彼女の首筋で脈と寝息を確認し、
眠っていることに、安堵する。

俺が昨日、ほぼ無意識のように脱がせた彼女の肌着を拾って隠すように洗濯機に落とし、彼女が自ら脱いだ俺のシャツを首に通すが、彼女は起きなかった。

体を起こし、腕を通しても、彼女は起きなかった。
力の入らない身体が俺に吸い付くように倒れ

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雨上がりの空は眩しすぎた

雨上がりの空は眩しすぎた

やっぱり、そうだよね??

友達から名前を呼ばれたのを聞いて、
私は確信した。

やっぱり、あれって
ギャラスタのカクだよね?

「カク、おっせぇよ!」

「ごめんごめん!
レコーディング長引いちゃってさ。」

声が出そうになるのを必死で堪えながら
私は静かに移動する。

そして隣に座った私に
カクは何も気付いてないようだ。

え、やばい、私、ギャラスタのカクの
隣に座ってるんだけど…⁈

「そー

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宝物箱の底の方

宝物箱の底の方

リビングに、お菓子の缶が置いてあって
食えるかと思って開けてみたら
中にはよく分からない
ボタンやら空のマニキュアやらが
ごちゃごちゃ入っていた。

俺の視線はソファで寝る蘭にうつる。

「蘭。
おい、蘭。これ良いのかよ。」

俺の声に気づく様子もなく
スースー寝息を立てる蘭。

俺はため息をついて
蘭をそのまま放置する。

これ、全部、

フクがプレゼントしたやつだ。

こいつこんなの全部

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幸せな、人魚姫

幸せな、人魚姫

(赤髪の人魚姫に、感謝と愛を込めて。)

登場人物

・飯塚智美(作中18歳)
黒髪の綺麗な美少女。複雑な家庭環境に育ち、中学から高校二年の途中までは家出少女だった。ツンとしているが、心を開いた人には愛情深く接する。過去の影響で世の中のことをあまり知らない。廉次のことは大好き。

・安川廉次(作中18歳)
高身長、筋肉質、爽やかでモテる。お節介を絵に描いたような男。姉と妹がいる。男の人の家に警戒心

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隣の隣の家は色気がすごい

隣の隣の家は色気がすごい

職場でいくつか貰ったチョコレートに
少し心が温かくなった。

久しぶりにワインでも開けるか、と
あしどりもなんとなく軽い。

飲み会だったというのもあって気分も良い。

頭の中でそんなことを考えつつ
終電から降りると

隣の車両に偶然、

隣の隣に住む流星くんを見かけた。

しかも、バッチリ目が合ってしまい
改札の数もさほど多くないし
方向が同じなので

なんとなく、気まずい空気のまま
互いに頭を

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心臓ごとあなたにあげるわ

心臓ごとあなたにあげるわ

今年はシュークリームに挑戦した。

詩織ちゃんにコツとか聞いて
すごく、上手くいって。

私はそれを持って

ゆきくんの部屋で待機。

一昨日まふゆちゃんと買った
赤い、チェックのスカートと

黒いリボンを髪に結んで

正座していたら

メールで来た時間より
3分くらい早くに
ゆきくんが部屋に帰ってきた。

「ただいま。」

「おかえり!!」

私の格好を見ると
少し微笑んだゆきくん。

男らしい

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全部、ちょうだい

全部、ちょうだい

千葉っちにチョコを渡して
職員室から出た時に
丁度渉とすれ違った。

「まふゆちゃん!!」

「…。」

「えっ?!シカト?!」

ココで会うのは想定外だったので

私はスルーして
なかったことにしようとしたけど

渉は私の隣にピッタリ並ぶ。

「…なんで今日、渉が学校いんの??」

「今日はたまたま受験なくてさ!
昨日、合格発表されたとこ受かってたから。

岡山先生に報告しようと。

てか、まふ

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今日の口癖を真似っこしてみた

今日の口癖を真似っこしてみた

今日の美奈、なんか、

めちゃ面白いんですけど。

「あー…、ヒロ??」

「んー??」

「…いや。

なんでもない。」

美奈のなんでもない、
本日ザッと10回目。

最初の3回くらいは
なんだこいつ、と不思議に思う程度だったが

時枝がさっき俺のB組に来て
「ちょっと良い??」
と、珍しく呼ばれて

すげー怖かったんだけど

どうやら美奈は
俺のために作ったトリュフチョコを失敗したらしい。

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貴方だけは手作りチョコレート

俺が思っていたよりも

俺はモテていた。

「清田くん、ライブお疲れー。」

「今年の全バンは頑張ってね。」

三年生の先輩や
クラスの女子がくれるチョコを
ウキウキもらいながら頷く。

「見て!!ヒロ!!」

「ん、良かったなー。」

俺のチョコに興味なさげに
音楽を聴いているヒロ。

多分、嫉妬してるんだな、って
チラッてヒロの鞄見たら

俺の倍くらい貰ってた。

「なんで俺がボーカルなのに

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頂戴って言われたのは初めて

頂戴って言われたのは初めて

一年で私が最も好きな日。

それがバレンタインデーだ。

「渚先輩のこと大好きです!!」

「おぉ、ありがとう。」

「渚、こないだは本当ありがとう。
これお礼のチョコ。」

「いやー、きにすんな。」

「渚ちゃん、これ。
いつもありがとう。」

「いえっ!!
なんかあったらまたいつでも駆け付けます!!」

私は多分、

そんじょそこらの男よりモテる。

まぁ、たまに本気で女から告白されて
結構困

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だからお互い見ないで笑った

だからお互い見ないで笑った

昔から、義理チョコとかを
貰うキャラじゃなかった。

自分で言うのもなんだが
貰う時は割とガチで
呼び出されたりしてた。

だから数とか

例年、1つか2つくらいで。

なんなら野上のが貰ってるくらいだ。

あ、野上は横溝命令で
断らなくちゃいけないけど。

疾風とか淳士とかカクと比べたら

その差は歴然。

だから今年はどうしたら良いか
全然分からない。

「…山本、これ。」

分からなすぎて

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彼女のチョコは人を殺すかもしれない

彼女のチョコは人を殺すかもしれない

今年は少し大変だった。

なぜなら義旭くんの友達の
壱律大学の皆にも

チョコを作ったから。

「今年は生チョコにチャレンジしたよ!!」

みんな嬉しそうに受け取ってくれたけど

包みを開けた瞬間

シーンという沈黙が流れる。

「…明日香ちゃん、

これ、食べても死なないよね??」

たけちゃんに言われて
私は笑って頷く。

しかし祥也くんと喜一くんは
無言で鞄にしまい、

梓くんにいたっては

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そんなめでみないで

そんなめでみないで

帰り、ちかちゃんの鞄には
沢山のチョコが入っていた。

そして今も私の隣で
チョコを受け取っている。

「ありがとー。
お返しプチチョコだけど良い??」

「つーか泰睦くんから
お返し貰う気とかなかった。」

女の子はそう笑うと
ばいばーい、とちかちゃんに手を振る。

「やっぱり、中学よりも高校のがもらえるね。

人数も多いし、目立つやつ少ないから。」

自分の鞄を自信満々で見ながら

ちかちゃん

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