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歴史本書評

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オススメ歴史本の読書記録。日本史世界史ごちゃ混ぜです。
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2022年1月の記事一覧

【書評】亀田俊和『南朝の真実』(吉川弘文館)

【書評】亀田俊和『南朝の真実』(吉川弘文館)

 南北朝時代の動乱は、足利尊氏・楠木正成・新田義貞など、多くの英雄を生みました。一方で、近代史との関連で「非常に面倒くさい」時代でもあります。

国に利用された英雄 戦前の皇国史観では、後醍醐天皇に始まる南朝が正統とされました。そのため、南朝に最期まで忠節を尽くした楠木正成らは英雄とされ、逆に後醍醐天皇を裏切る形となった足利尊氏は極悪人として教育されました。

 戦前の教科書や軍歌にもよく登場する

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【書評】佐々木雄一『陸奥宗光』(中公新書)

【書評】佐々木雄一『陸奥宗光』(中公新書)

 陸奥宗光といえば、近代日本の悲願であった条約改正(領事裁判権の撤廃)を成し遂げた人物です。「カミソリ」のあだ名をつけられた切れ者で、優れた外交官として知られています。

 しかし、陸奥の実像はその説明にとどまるものではありません。本書は陸奥の生涯を簡潔にたどりながら、彼の実像を明らかにしています。

外交にとどまらない業績 陸奥宗光は、条約改正・日清戦争・下関条約・三国干渉という明治日本の激動期

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ル=ボン『群集心理』からヒトラー『我が闘争』の元ネタを探す

ル=ボン『群集心理』からヒトラー『我が闘争』の元ネタを探す

 大衆はなぜ簡単にデマに踊らされ、扇動されるのか。1895年に発行され、社会心理学の古典として名高い書物が『群集心理』です。

 著者のギュスターヴ・ル=ボン(1841~1931)はフランス人で、医学・物理学・人類学・社会学など広範な識見を有する学者でした。

 ル=ボンは『群集心理』の中で、群集の様々な性質を指摘しています。

・群衆は衝動的で、動揺しやすい性格を持っている
・群衆には論理的な思

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