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ラボ展「計算機自然と民藝 xDiversityと共創の歩み」を終えて【展示の企画統括をして学んだことと感じたこと】

2022年10月21日から23日まで日本科学未来館で開催していた展示会「計算機自然と民藝 xDiversityと共創の歩み」に500人以上の方が来場し,大盛況のまま無事閉幕することが出来ました.ご来場されたみなさま並びに関わっていただいた全てのみなさまに感謝申し上げます.本当にありがとうございました.

Digital Nature Groupに入って半年くらいが経った頃,落合先生に指名されてはじまったラボ展の企画統括.そこから約4ヶ月間,こんなに大規模でリッチなコンテンツの展示会を開催することになるなんて思ってもいなかった当時から,多くの方にご支援ご協力をいただき完走することが出来ました.

落合先生に任命していただいてすぐにやったことは,家の近所にある本屋さんの芸術棚に行くことでした.片っ端から本の背表紙を見て,これだ!と直感的に手に取ったのは「現代美術キュレーター・ハンドブック」

デザインを学んでいた当時から,美術館に行くことが大好きだったので,いつか自分でも展示をやってみたいという気持ちがありました.まさか,ラボ展が初のキュレーションになるとは思いもしませんでしたが,いざ初めての展示会企画,まずは何をすることから始めるのかを学ぶ必要があると真っ先に思いました.今まで多くの新規事業企画をやってきて,右往左往している暇があれば調べて手を動かし足を運ぶことがいかに重要であるかを学んできました.また,事業種が違くても,企画をすること,つまりプロジェクトを構想することの共通の基盤は変わらないことも知っていました.

目次とはじめにを読んで,企画のプロセスを目次をベースにNotionにまとめます.本を読み進めながら,美術展示の企画をすることをキュレーションと呼ぶこと,それに際してキュレーターという仕事があるということ,美術館員は学芸員資格を必要としないこと,フリーランスのキュレーターという選択肢もあることを知りました.このような,そもそものマインドセットから学ぶことのできるこの本は,私のように美術館に行くことが好きで初めて展示企画(キュレーション)をする人・これからしたいと思っている人にとっては良書であると思いました.美術館の裏側を知れて,より美術館に行きたいという気持ちも高まるし,新規事業企画のプロセスと共通していることも多いことがわかり,これをより抽象化した事業構想学に前大学で出会えてよかったなとも思いました.

この本をある程度まとめたら,一緒に企画統括をしている先輩に共有して,役割分担をしました.私の得意領域を活かして分担しようと提案してくれたおかげで,私は展示会に関係するビジュアル・グラフィック・エディトリアルデザインとそれに関わる事務を主に担当することに.自分が今まで見てきたこと・やってきたことの経験を頼りに進めました.ここで役に立ったのは,数年間かけて集めていた多くの美術展示に関する印刷物のアーカイブです.リーフレット,パンフレット,ポスター,チラシ,ポストカード,図録など,実際に行った展示から行ってなくてもその印刷物とすれ違っただけのものまで,自分がときめいたものはほとんど集めてたくさん残していました.広報にはどんなものを使うのか,それはどんなデザインでどのような情報が載っているのか,自分が集めてきたものに全て必要なものが書かれてありました.企画統括に任命されてからは,より意識的に美術展や演劇などの広報物・作品リストをはじめとする多くの種類の印刷物を見かけては,二部ずつ持ち帰りアーカイブする生活が始まりました.

実際にデザインを作る時間に当てられたのはほんの僅かでした.ちょうど論文の締切が夏にあったために,約2ヶ月で必要なものをリストアップして,デザインして,落合先生と擦り合わせて,原稿を入稿しなければならない状況でした.私が予想していたよりも多くの準備物があり,納期があり,関わっている人がいました.このような制約下で物事を考えることは,幸いにも初めてではなかったため,とにかくギリギリまで粘って良いものが上がるように努めました.想像以上に多くのやるべきことと,研究と,途中から授業も始まり,とにかく時間を作ってデザインのことを考えていました.

私の性格・特性上,誰かと共同で一つのものを作ることに困難を感じてしまうため,完全にワンオペでデザイン関連のことを背負いました.50近いプロジェクトの情報をまとめるところから苦労し,足りない情報は全員から提供してもらうためにフォームを作ったり,回答がない人を催促したり,ただひたすらにデザインに向き合う以外のことが必要でした.先生たちとの打ち合わせで出てきた修正点を改善しながら,締切が刻一刻と近づいている中で,気づけば展示会期の一週間前となっていました.

落合先生からメインビジュアルをもらい文字組とレイアウトを整えるだけものから,自分で1からコンテンツを考え白紙からデザインをスタートするものまで,とにかく幅広く扱いました.事前に作ることが確定していたものもあれば,会期中に新たに作ったものもありました.そんな感じなので,臨機応変に対応しなければなりません.Adobe Illustratorを常に開きっぱなし,約150データを開いたり閉じたりしながら,デザインの都合上全面にインクが乗ってしまうために紙づまりを起こしまくるプリンターと闘い,会期初日まで制作していました.

最終的に私がメインで制作したのは以下の10種です.

  • ポスター(配布用・パネル)

  • リーフレット

  • 展示セクションパネル

  • 内覧会招待状

  • 作品キャプション(プロジェクト用のキャプション)

  • 学名キャプション(落合私物等のプロジェクト以外のキャプション)

  • 会場内サイン

  • クラファンリターン

  • イベント整理券

  • web用サムネイル等

他にも,落合先生からデザインをいただいて,それを印刷して掲示したりしたものも多くあり,最終的に多くのデザイン成果物が誕生しました.

ご来場されたみなさまがお手に取っていただいたリーフレットやポスターをデザインできたこと,SNSに投稿された写真に自分のデザインが写っていること,それがみなさまの身近に置かれること.きっとこれがデザイナーの喜びであり,それを本展示会を通して体験することが出来ました.#感動できる #喜びを共有しよう


展示会受付,
左にあるチラシとリーフレット,中央にあるパネル,注意事項の立て看のデザインをしました.


木星入口,
左のポスターの文字組・レイアウトと右のクラファンリターンの立て看のデザインをしました.


自分の研究のブース,
作品キャプションのデザインをしました


webで使うサムネ,
これも落合先生からイメージをもらって文字組・レイアウトをしました.

入稿原稿が本当に直前になり,完成された印刷物が届いたのは前日の朝,内覧会が始まる数時間前でした.本当に間に合うのか,原稿に大きなミスがあり配布できなかったらどうしようと不安が多くありましたが,届いて箱を開けた時に,私がいつも美術展示でもらっているポスターやリーフレットそのものがありました.本当に作れたんだという嬉しさと,本展示会で作成していない図録やパンフレットなどの印刷されたアーカイブ資料を追加で作成するとなったことを想定した時の圧倒的な作業量の増加にワクワクしました.改めて,このようなことを踏まえて展示会を作るということの難しさや楽しさを実感できたことがとても大きい経験となりました.

もちろん,嬉しいことだけではありません.多くの反省点があります.原稿入稿が全てギリギリだったこと,リーフレットの多言語対応が追いつかなかったこと,デジタル版の更新が滞ってしまったこと,リーフレットのそもそもの情報掲載ミス,ワンオペだからこその欠陥も目立ち,他の人に任せることが難しい状況を作ってしまったことも反省点です.展示会はチームで動くことが必要不可欠です.ちゃんと役割を明確にわけ,人をアサインし,自分じゃなくてもできることをいかに他の人に託して自分にしかできないことにリソースを割けるかということが重要だと学びました.

やることはたくさん,デザインだけじゃなく,企画統括として現場指揮・責任者という役割があったり,タイムマネジメントも重要な役割でした.過去に展示に関わったり自主的に展示を開催するラボの先輩たちに力を借りて,什器や中央モニュメントなど,各担当の指揮官を任命したり,それで足りないのは先輩たちが自ら名乗り出て統率してくれました.無事定刻に展示を始められたこと,タイムリミットまでに撤収できたこと,全て統括に足りない力を貸してくれた先輩方のおかげです.本当にありがとうございました.

展示会には,内覧会を含め500人以上のお客様にご来場いただきました.作成したリーフレット,チラシの在庫がなくなり,展示会期ギリギリまで多くのお客様に足を運んでいただき,SNSでも#計算機自然と民藝 とつけた多くの投稿がされました.私も毎日展示会オープン・クローズのツイートをして,拾える投稿は片っ端から感謝の意を込めてRTし,自分の研究プロジェクトに関する投稿には引用RTでご挨拶しました.想像以上に大きな反響があり,大盛況のうちに閉幕できたことを嬉しく思います.展示会を始める時から今までを見てきて,たった3日しか展示会期がないことを勿体無く思うほどに,充実したコンテンツが溢れていました.

このような大規模な展示をすることは,早々ありません.あるとして数年に一回,そんな貴重な機会に主体として関われたこと,光栄に思います.また,総監修・落合陽一のもとで企画に関われたこと,この経験は滅多に得られません.拙い部分も多かったと思いますが,この経験をきっかけに,社会に出てからも続けていきたいキュレーションを学べたことをとても嬉しく思います.

日本科学未来館の科学コミュニケーターさんは,科学者や技術者と一般の方々を繋ぐために,さまざまな活動をしています.その活動の中の一つに展示キュレーションもあります.本展示会の企画統括を通じて,私が目指す日本科学未来館の科学コミュニケーターに必要なスキルと経験を積むこともできました.また,本展示会は日本科学未来館が会場でした.将来にも必要となるであろう体験を,より私の夢の一つに近い場所でできたことがとても嬉しいです.

展示に関して書きたいことを書いているので,いつも通り文脈も読みやすさもない文章ですが,ラボ展「計算機自然と民藝 xDiversityと共創の歩み」の企画統括ができてよかったということを伝えたいです.

祝祭に包まれた空間を見ることができてよかった!

500人以上のお客様にご来場いただきました!ありがとうございました!

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