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#19 高校生の”趣味”がNASAを動かした 些細なきっかけが世界を広げる

高校生の時にスキューバダイビングを始めました。
親友が親戚のおじさんに連れられてやってみたところ面白かったから、一緒にやろうよということで、始めました。
資格取らなきゃいけないんですよね。そこで伊豆でライセンスを取って、ダイビングを始めたのですが、もうすごく感動しちゃって。初めてキスの群れを見たとき、海の中で泣きました。

こんなに地球は広かったのか。

すぐ近くで、こんなに僕の知らない世界が広がっていたのか。

こんなに生き物って、海の中ではイキイキと、そして壮大に生きているんだ。

そんなことを海の中で、感じて号泣してしまいました。

それがきっかけでどんどんスキューバダイビングにはまり、年に1回の夏休みのたびに潜るようになりました。アルバイトしてお金貯めてね。

その後、社会人になりフジテレビのアナウンサーとして仕事をするようになり、いろんなところでリポートする日々になりました。

水中取材には潜水士という国家資格が必要

東京都に三宅島という島がありまして、むかし火山が噴火したことによって全島避難になったのですが、それから月日が経って、避難解除となり、マスコミがまず島に入って取材していい、となりました。そのとき社内では、海ってそういえばどうなってるんだと話題になりました。

すごいことになってるんじゃないか、と。すごいこと、というのは、つまり、漁師さんがいなくなったから、生態系がものすごく、大復活じゃないけれども、すごいことになってるんじゃないか

ちょっと見てみようよって話になりまして、それで「森下、ダイビングするんだよね?」みたいな話になり、水中取材をすることになりました。こんなにワクワクしたことはありませんでした。しかし、仕事で潜るには潜水士の資格を取らなきゃいけないんです。国家資格です。普通に皆さんがレジャーで楽しむスキューバダイビングの資格のPADIとかだと駄目なんですよ。仕事で潜るためにはその国家資格を取らなくてはいけなくて。なんせ取材が急だったから間に合わなかったんです…なのでこの取材は残念でしたが、今後も水中取材があるかもしれないということで、勉強して、といってもそんな大したことではないんですけれども、潜水士の資格を取りました。

さあこれで仕事で潜れるぞ!ということで、なんと与那国の海底遺跡にいきました。あるんですよ、海底遺跡とされるもの、明らかにこれ人が作ったんじゃないかなっていう物が沈んでいてですね。階段状のものがあったりとか。明らかに星の形に見える台座があったりだとか、それはまだね、決着がついてないんです。本当に人が作ったものなのか、自然現象でできたものか。

与那国の海底遺跡

一方で、オニヒトデという、スッゴイギザギザの、見るもおどろおどろしい生き物がいるんですけれども、大きいモノだと僕の顔ぐらい、大人の顔ぐらいの大きさのそのオニヒトデが珊瑚を食べちゃうんですが、そのヒトデが和歌山沖で大量発生してるから行こう、てことでここでも潜りました。

もうね、地上でやってるリポートと変わりません。「今こちらに、オニヒトデが大量に、大量に珊瑚に群がっています!」みたいなのを水中でとるわけです。

どうやって撮るかというと、フルフェイスのマスクを顔の前面につけます。普通はゴーグルで目と鼻を覆うんですが。マスクで顔面全体を覆うことによって、喋ることができるんですね。

NASAの海底基地に初潜入

その後、2009年からNYに4年間記者として赴任していたんですけれども、
宇宙モノが大好きで、当時スペースシャトルがまだ引退前だったので、結構NASAの取材やってたんですが、JAXAの人と仲良くなるにつれて、いろんな訓練のお知らせが届くようになりました。
ある訓練のお知らせに書いてあったのはNASAの海底基地での訓練のお知らせでした。フロリダの海の沖合、その海底になんと訓練基地が沈められていて、基地と言ってもそれほど大きくはないんですけれども、そこに何日間か、期間を決めて宇宙飛行士を閉じ込めちゃうんですね。

宇宙空間の国際宇宙ステーションにいるかのような状態を模擬的に作り出すわけです。
で、外の海底にも出られるんですよ。海底では、無重力状態の浮遊感がありますし、その基地の脇にはいろんな作業ができるアスレチックのようなものも組み立てられていて、そこでいろんな作業したりするんです。見てみたいじゃないですか!ということで調べてみたら、なんと日本のメディアはまだ取材したことがない。そもそもその場所は秘密なんですよ。
だってもし場所がわかっちゃったらね、みんな行っちゃうかもしれないじゃないですか。

あれ何ヶ月かかったんだろう。

JAXA経由で、NASAと本当に何回も何回も話し合いを持って、もう交渉して交渉して、なんと取材許可が下りたんです。日本メディアで初。潜りました。基地のなかの日本人宇宙飛行士の方と、窓越しに「こんにちは」みたいな感じで手を振ってもらって。

宇宙兄弟という漫画がありますよね。宇宙兄弟でも、実はこれが出てくるんです。この海底訓練施設。

高校生のときの何気ない思いから取ったダイビングのライセンス。それを取ったことがきっかけで、どんどんどんどん仕事の幅が広がって、ついにはNASAをも動かし日本メディアで初となる取材ができた。

そんなお話でした。

NASA スペースシャトルそんなお話でした。

やってみたいことをなんでもやってみる

だから小さな子供が何かをやりたい、こんなことしてみたいな、あんなことしてみたいな、もしくはもう少し大きいお子さん、こんな資格取ってみたいな。そう思っていたとしたら、その先何に繋がるかわからないですからね、どんどんどんどんやらせたあげた方がいいんじゃないかなって自分の経験を振り返ってみて思うんです。

高校生のときに取ったそのダイビングのライセンスがきっかけで、こんなに世界観が広がっていくなんて当時は夢にも思いませんでした。テレビ局でアナウンサーになり、リポーターをやっていた、そういう偶然の繋がりというのもあるとは思うんですけれども。

何がきっかけで大きく世界が動いていくか、人生観が変わっていくかわかりません。もしお子さんがいらっしゃったら、ぜひいろんなことをやらせてあげてほしい、そしてご自身も「ちょっとやってみたかった」そんなものがあったら、果敢にチャレンジしてほしいなって思います。

(voicy 2022年4月20日配信)

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