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秘密の花園へ

何度か書いたことがあるが、私の住んでいる街にはバラ園がある。
冬にその存在を知ったので、花が咲いているところはあまり見たことがなかった。
今の時期も満開ではないが、冬よりはいくつか花が咲いているだろうと思ってスーパーの帰りにまた寄ってみることにした。

バラ園に行くには、大通りから細い路地に入る必要がある。バラ園の存在を知らないと辿り着けないような場所にあって、それが秘密の場所にいくようでワクワクする。
路地に入ると、セミの鳴き声が響いてきてイヤホンをしていることも忘れてしまう。車しか通っていない大通りとは一気に空気が変わって、森に迷い込んだ気持ちになる。
そんなセミの鳴き声をBGMに夏を感じていると、いつものバラ園が見えてきた。

今までは冬の灰色の空に、つぼみ。という状態だったので、どこか寂しさと安らぎを感じる景色だった。
私はそんなバラ園も孤独に寄り添ってくれるようで好きだった。
でも、この時期のバラ園は表情をがらりと変えて、気高くバラが咲き誇っていた。夏の暑さとセミの声も相まって、上品ながらも力強く輝いているように見えた。

初めて見る色のバラにも出会えた

おとぎ話は現実に

そして何よりも、改めて見れば見るほど漫画や絵本に登場してきそうなほど上品な空間だ。
知らないうちに不思議の国に紛れ込んだといわれても信じるし、ここで真夜中のお茶会がひっそり行われてると言われても容易く想像できる。

咲いている花は少なくても上品な空気がある。

このバラ園には何度か来ているが、今日はいつもより違う世界にいる感じがして楽しめた。スーパーで買ったアイスが溶けることも気にせずにバラを眺める。

このバラ園の特にいいところは、ベンチやイスが無いところだと感じる。
この空間で本を読みながら過ごすのも憧れるが、誰にとっても長居出来ない造りになっているので、いつ来ても人は少なくバラ園のミステリアスな雰囲気が保たれている。

バラ園からの帰り道はすべてがバラ園のために存在しているかのように見えた。
トイプードルを連れて歩いてるおばあちゃんが高貴なマダムに見えるし、電柱にとまっているカラスはバラ園を守るナイトに見える。

左手に溶けかけているアイスを持っている現実世界と、右手にはバラ園で開かれるお茶会の空想を握りしめながら家に帰る。

Written by HINA