【レビュー】『貫く』~第22節ヴァンフォーレ甲府VSファジアーノ岡山~

試合結果

2023 J2 第22節
6/24 18:00K.O. @JITリサイクルインクスタジアム
甲府(0-0)岡山

スタメン

マッチレポート

ボールを握ることを継続した岡山。粘り強く戦って甲府と引き分け

甲府の地に乗り込んだリーグ後半戦の初戦、岡山はボールを握ってプレーできるチームを目指し続ける姿勢を示した。

岡山は前半を粘り強く進めた。自陣に組んだブロックを迂闊に崩さないように守り、チアゴ・アウベスの推進力を起点に相手陣内への進入を図る。しかし、15分にはボールロストからのカウンターでピンチを招く。ピーター・ウタカに中央を突破され、右サイドを駆け上がった関口のクロスに鳥海が合わせる。ゴール左スミを捉えたシュートだったが、GK堀田が鋭い反応で弾き出した。CKに逃れるようなセーブだったため、逆サイドから走り込んできたジェトゥリオに押し込むことも許さない。守護神のビッグセーブで九死に一生を得た。自陣からパスをつないで前進することにトライする中、28分にはウタカの激しいプレスを受けた柳がボールを失い、右サイドからジェトゥリオに鋭いボールを蹴り込まれる。しかし、鈴木が身体を投げ出してクリアした。甲府のプレスに苦しめられてミスも起きたが、全員でカバーしながら集中した守備を発揮して前半を無失点で切り抜けた。

スコアレスで迎えた後半も自陣からパスをつないで攻撃を組み立てることにトライする。河井と仙波が瞬間的に横並びになることで、最終ラインに対してパスコースを作り、彼らが前を向いた状態でパスを供給できるようになる。前回対戦時は自陣でのボールロストが目立ったが、今回は甲府のプレスをかわしてスムーズに相手陣内に入っていくと、坂本が相手のボランチの脇などでタイミングよく縦パスを引き出し、相手ゴール前に踏み込んでいく。65分には坂本が中央で起点になって右サイドを突破し、仙波がミドルシュートを放つも、枠を捉えることができない。69分にも河野がPA手前から右足を振り抜いたが、枠を越えた。

両指揮官が選手交代を行う中で迎えた試合終盤は、互いに途中出場の選手がセットプレーからゴールに迫っていくも、勝敗を分ける1点が生まれないままタイムアップを迎えた。

岡山はチームとして相手陣内に入る部分で成長の片鱗を見せ、リーグ後半戦の初戦で連敗をストップした。ただ、目標を達成するために相手ゴール前での崩しを向上させなければならない。課題も浮き彫りになる後半戦のスタートとなった。

コラム

つなぐスタイルのカギを握る坂本の技術と感性

自陣からショートパスをつないで相手陣内に入って得点を奪う。今季から目指しているスタイルのカギを握っているのは、坂本一彩だと強烈に感じる90分だった。

2トップの一角で先発した坂本は、縦パスを足元で受けて収める力を存分に発揮した。瞬間的に空いたスペースに下がってボールを引き出し、相手選手が密集する狭いスペースでも前を向く。ボールを止める技術が高いため、パススピードが少々速くても弾んでいてもピタリと足元にコントロールする。65分には柳からの縦パスを相手2選手の間で受けると、スムーズなターンで相手選手をかわして右サイドに展開し、チャンスを作った。坂本が相手ブロックの間でパスを受けて前を向くことにより、相手のプレスを突破してボールを前進させることができる。

また、坂本は縦パスを引き出した後のプレー選択も素晴らしい。厳しいマークに遭って彼でも前を向けない状況もある。そこで強引にターンしてボールを失うのではなく、1タッチで後ろの味方に落としのパスを出すこともできる。自分が無理に前を向くのではなく、前を向いた味方をシンプルに使う。これによってボールを前進させながら、チームとして良い態勢でゴールに向かっていくことができる。

坂本のテクニックと感性は前と後ろをつなぐ架け橋だ。ボールを保持できるチームへの成長を目指し続ける後半戦の命運を坂本が握っていると言っても過言ではない。

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