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普段はイラストや書評をやってます。 書評 https://booklog.jp/users/tikuo CD 音楽レビュー https://tikuo.exblog.jp/ 普通のブログ・イラスト https://tikuo.seesaa.net/

マガジン

  • リョウタとセンセイ

    不定期連載。交換日記型連作小説にしたい。 なお、性的な話は(ほぼ)出てこない予定です。書きたくないし。

  • 三分の一私小説。

    本作の登場人物は全て架空のものであり、描かれている状況の2/3は虚構である。自称、意識低め小説。

  • 不純100円本交遊録

    100円本の棚には愛がある。100円本の棚には夢がある。そして、100円本の棚には、新しい本との出会いがあると期待した人たちがひょんなことから別のものと出逢ってしまうことだってある。

最近の記事

9. 6月、栃木 - 諒太

 ヤバい。「オレのこと、好きなのか?」というのは、センセイなりの、あの世代の冗談なんだろうか?これまでも普通の会話を積み重ねてきたし、一時期調子に乗って、一日にLINEを何通も送っていたのはやめた。大体、ほとんど挨拶と最近のことを1行書いているだけなのに、好きか嫌いかなんて判断できるものだろうか。 センセイからの謎のLINEの返信が来て2日。ボクは少し落ち着いてきたと同時に、いくつかの疑問を感じていた。なぜ向こうに気持ちが伝わったのか。なぜ「好きなのか?」という回答が来るの

    • 8. 6月 千葉 宣生

      朝6時。スマートフォンの目覚しで目が覚め、6時30分までベッドの中でスマホをいじる。 オレのこと、好きなのか? :センセイ LINEにはそこに既読がついたまま止まっている。まあ、気持ち悪がられて終わったのかなと思い、日課のニュースサイトのはしごをしていたら、あっという間に6時30分である。 妻が先に起き出して朝食を作っているところへ、シャツのボタンを留めながら階段を降りていく。 「昨日のあれさあ、ちょっとひどかったんじゃない?」 「何が?」 「リョウタに、LINEの」

      • 113. 賞味期限を切らせて縁を断つ。

        「先生、これ、食べます?」 事務の坂口さんが見覚えのあるお菓子を見せてきた。先月の学会のお土産で私が買って、配ったものである。 「Fさん、来ないでしょ?ずっと机にあったし、多分来ないから」 「ええ、取ってきちゃったんですか?」 私は流石に驚いて聞き返した。 「だって、賞味期限が来週までなんですよ。先生」 「あー、でもなあ…」 こういうときにどう対応していいものかというのは、いつまでも謎のままである。 「うーん、とりあえず事務に持って帰って、分けちゃっていいですよ」 と

        • 112. 赤いカラス。

           それは2月の終わりの朝だった。乗換駅であるO駅東口で昼食を買うためコンビニに向かっている最中、右斜め上から声を掛けられた。 「かー」 それはそれは、見事なひらがな「か」の発音であった。カラスである。おそらくハシブトガラスと思われるカラスが、バス停のひさしの上から通行人を馬鹿にして鳴いているのである。しかしその直後、私は目を疑った。カラスが赤いのだ。朝日を背後から浴びていたのもあるが、黒いはずの羽毛全体がぼんやりと赤く、特に胸のあたりが赤く光っていた。よし、写真を撮ってや

        9. 6月、栃木 - 諒太

        マガジン

        • リョウタとセンセイ
          9本
        • 三分の一私小説。
          125本
        • 不純100円本交遊録
          5本

        記事

          111. お遺影騒動。

          「ゴールデンウイークな、ちょっとみんなで帰ってきてくれんか」 突然、父親から電話がかかってきたのは、4月の第一週の週末。仕事では科研費の不採用通知をもらい、所長に連日「だから論文を出さないと」と嫌味小言を言われ続けてげっそりしていた土曜日の朝である。 「話すと長なるんやけど、とにかく、文(あや)ちゃん連れて来てくれんか。3日でええ。今年はどうやったっけな、3連休は…3、4、5とあるやないか。ここでええ。新幹線予約して」 こちらがどう考えているのかなど無視して来る。いつものこ

          111. お遺影騒動。

          10回に一度の反省。楽屋トーク。その11。

           そういえばこういうコーナー有りましたね。前回が1年ちょっと前。もうやらないかと思っていたけど、思い出したので書きます。 ●ここ10作。 というか、別のも書き始めて挟んでるけど、1年以上かかってる。書かないと書けなくなるので、ほそぼそと書き溜めてはいる。でも1ヶ月全く書かない月もあるので、全然ダメ。書かないと、次に書きはじめる際に「〇〇は〇〇である」という論文形式になってしまう。前提の説明に終始して、登場人物をうまく動かせない。 えっと…もう何書いたか忘れているので、反省

          10回に一度の反省。楽屋トーク。その11。

          110. 四十肩と秋の空。

           イテテテ…。 時刻は11月最後の日曜の朝の6:30。11月の終盤にもなると、6時を回ってもまだ暗い。そして、夏にどういうきっかけだったか、左の肩に四十肩を発症してから、左を下にして寝る癖があだとなって、朝起きると肩のみならず、首やひじまでひねったような痛みを感じる。自称で四十肩と言ってはいるものの、40代後半もさらに終わりに近くなってくると、これは四十肩か五十肩かの区別をつけるのは難しい。なお、「アラフィフ」という場合の「アラ」は「around」と思いこんでいたが、「アラ

          110. 四十肩と秋の空。

          7. 6月 千葉 宣生

           夕飯後の夜9時半。オレは、ハイボールを飲みながらドラマの録画を消化する妻と、中古で買ったニンテンドー3DSで今更『とびだせ!どうぶつの森』に嵩じる娘をリビングに置いて、二階の寝室に入る。営業に同行しないときは、ジーンズにシャツというラフな格好でも許してくれる会社のため、翌日のダンガリーシャツとチノパンを選び、畳んでベッド脇に置く。 さて、寝室脇のレトロゲーム用コーナーで、『マザー2』を進めるか、ネットサーフィン(死語)でもするか、小説でも読むか。 最近、ハードオフで『マ

          7. 6月 千葉 宣生

          109. 休日出勤者の憂鬱。

           休日出勤が憂鬱になったのは、職場と家が遠くなってからだろうか。結婚当初までは、職場のビルから自転車で2kmくらいの田舎の4階建てアパートに住んでおり、毎週土曜日か日曜日に翌週の仕事の仕込みに顔を出していた。一時期、両方行けば効率良いなと考えて実行してみたが、どんどん体の具合が悪くなり、1週間に24時間は連続で職場を離れた方が良いことを悟った。なお、1日の場合は可能な限り、12時間職場から離れると体調が良くなるらしい。 家が遠くなり、休日に出るとなると時間外勤務、つまり残業

          109. 休日出勤者の憂鬱。

          108. 学会に居場所がない。

           秋は学会シーズンである。関東で大きい学会というと、なぜか横浜でしか開かれないため、5時に起きて電車で片道2時間かけて通う。ここ数年、経理がうるさくなってきて、「学会は年に2回、140km以内は宿泊不可」という制限を出しているため、年に3つ出席する学会の1つは自腹だ。なお、すべての学会の年会費は自腹である。学会の方も、学生を呼び込むために学生会員は格安か無料となっており、一般会員にはしわ寄せがあつまって年々高額化している。 2時間の電車は、読書のチャンスである。何しろ、いつ

          108. 学会に居場所がない。

          第二話 『探偵カリゼロ』(下)

           文庫本を3冊持ったおれと、漫画6冊におれの薦めた『探偵ガリレオ』を持ったムッコは、それぞれレジに向かって会計を済ませた。隣で支払っているムッコの会計で「2530円です」と言われているのを見て驚愕する。そうか、100円じゃないものもあるのだ。そしてムッコはスマホを取り出して決済した。あれって、クレジットカードが必要なのではないのか?そもそも、高校生はクレジットカードは持てたのだろうか。いろいろな疑問が噴出する。 「にせんごひゃく、円?」 「それがどうかしたか?普通だろ?」

          第二話 『探偵カリゼロ』(下)

          第二話 『探偵カリゼロ』(上)

           2月の半ば、おれは大宮駅近くのビルにあるブックオフで、高校1年の女子、ムッコを拾った。いや、じっさいにはあれは当たり屋だった。女子高生の名前は"ムッコ"。睦月。名字は…何だったか、忘れた。おれの持っていたダイエーのからあげの匂いに、思わずムッコの腹が鳴ってしまい、なぜかおれがその責任を取らされたのだった。 手前の腹が鳴った責任を、なぜかおれが取らされるという理不尽極まりない事態なのだが、ムッコは当然のように責任をなすりつけてきた。 取った責任は「初心者でも読める本を選べ」

          第二話 『探偵カリゼロ』(上)

          107. 居眠りする少女。

           お盆である。お盆というと、8月の15日くらいと相場は決まっているが、これを常識としないほうが良い。というのも、関西から関東に引っ越してきてしばらく、前に住んでいたアパートの向かいのおじいさんに「やあ、もうお盆は済んだの?実家戻ったの?」と言われ、目をパチクリしてしまったことがある。聞かれた日は7月20日。お盆までまだ1ヶ月である。しかし調べてみると、東京を中心に関東の一部では、お盆は7月の14日前後なのだそうだ。よく考えてみると、京都の祇園祭は7月15日。あれは関東の盆に合

          107. 居眠りする少女。

          106. とある謝辞。

          「あのッ!少しいいですかッ!」 2月某日。まだ日が出ず、外は薄明るい電車の中で、女子高生が声を張り上げた。 早朝、K駅では始発の次の電車。F駅行きの下りのT電鉄。 私は10年ほど前の年末から年明けまで、約3ヶ月、つくばにある研究所へ通うため、暗い中を眠い目をこすりながら毎日、同じ時刻の電車に乗って通ったことがある。夜明けが一番遅いのは、ちょうど1月1日くらいであるということを知ったのも、この経験からだ。 早朝の電車というのは、また格別なものだ。早朝の電車には、他の時間の電

          106. とある謝辞。

          105. 仕事で学んだつまらないこと。

           学生生活を終えてから、私はかれこれ20年近く仕事をしている。大学院を出ている分、社会に出たと言えるのは遅いが、大学の4回生から似たようなことを仕事にしているので、25年ほど働いているとも言える。 仕事の中で身についた大事なことは、3つある。1つ目は、慣れるまで続けられるのが、一つの才能であること。2つ目はどんなすごい仕事でも、やっている人やなしとげた人のほぼすべては、普通のおじさんかおばさんであること。3つ目が、締切はなんとかなることである。 他にも、他人の休みにはケチ

          105. 仕事で学んだつまらないこと。

          6. 6月、栃木 - 諒太

           日が長くなり、まだ明るい夕方。ボクは校庭にトンボをかけていた。トンボとは幅2mくらいのブラシで、運動部が校庭を使った日は、使った部分をならすために使う。昔は俗に「コンダラ」と呼ばれているらしいローラーを使ったそうだが、あれだったら陸上部が使った部分だけでも数時間はかかるだろう。全面を使う野球部やサッカー部ならなおさらだ。 ボクは陸上部である。小学校の時からの、ちょっと変な関係のあこがれであった、同級生のダイキこと中村大樹に連れられて入部した。入部から3年目、ダイキは砲丸投

          6. 6月、栃木 - 諒太