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三分の一私小説。

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本作の登場人物は全て架空のものであり、描かれている状況の2/3は虚構である。自称、意識低め小説。
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記事一覧

113. 賞味期限を切らせて縁を断つ。

「先生、これ、食べます?」 事務の坂口さんが見覚えのあるお菓子を見せてきた。先月の学会の…

tikuo
10か月前

112. 赤いカラス。

 それは2月の終わりの朝だった。乗換駅であるO駅東口で昼食を買うためコンビニに向かっている…

tikuo
1年前
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111. お遺影騒動。

「ゴールデンウイークな、ちょっとみんなで帰ってきてくれんか」 突然、父親から電話がかかっ…

tikuo
1年前
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10回に一度の反省。楽屋トーク。その11。

 そういえばこういうコーナー有りましたね。前回が1年ちょっと前。もうやらないかと思ってい…

tikuo
1年前
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110. 四十肩と秋の空。

 イテテテ…。 時刻は11月最後の日曜の朝の6:30。11月の終盤にもなると、6時を回ってもまだ…

tikuo
1年前

109. 休日出勤者の憂鬱。

 休日出勤が憂鬱になったのは、職場と家が遠くなってからだろうか。結婚当初までは、職場のビ…

tikuo
1年前
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108. 学会に居場所がない。

 秋は学会シーズンである。関東で大きい学会というと、なぜか横浜でしか開かれないため、5時に起きて電車で片道2時間かけて通う。ここ数年、経理がうるさくなってきて、「学会は年に2回、140km以内は宿泊不可」という制限を出しているため、年に3つ出席する学会の1つは自腹だ。なお、すべての学会の年会費は自腹である。学会の方も、学生を呼び込むために学生会員は格安か無料となっており、一般会員にはしわ寄せがあつまって年々高額化している。 2時間の電車は、読書のチャンスである。何しろ、いつ

107. 居眠りする少女。

 お盆である。お盆というと、8月の15日くらいと相場は決まっているが、これを常識としないほ…

tikuo
1年前

106. とある謝辞。

「あのッ!少しいいですかッ!」 2月某日。まだ日が出ず、外は薄明るい電車の中で、女子高生が声…

tikuo
2年前
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105. 仕事で学んだつまらないこと。

 学生生活を終えてから、私はかれこれ20年近く仕事をしている。大学院を出ている分、社会に出…

tikuo
2年前
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104. 原付を買う。

 原付バイクを買おう。そう思ったのは、1997年の初頭だった。思い立ったきっかけは、やはり寄…

tikuo
2年前
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103. 海外へ行きたい病。

 「海外、行きたいよねえー」 私とテクニシャンの川口さんが、リアルタイムPCRのミックスを黙…

tikuo
2年前
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102. 小説は裏の顔。

 小説を書いている。ネットで隠れて書いている。 もう50も手が届きそうな年齢に到達してきた…

tikuo
2年前
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101. 芥川賞の女。

 新聞広告での求人は危険である。これは大学院で所属した研究室での経験により知っている。 20年余り前の、9月からの大型研究費を獲得した教授は、「人件費って書いてもうたから、テクニシャン増やそかなー」と、ハローワークに募集をかけた。しかし、"経験者のみ"という文言が障壁になったのか、3ヶ月が経過しても全く応募がなかった。そこで新聞に求人広告を出すことになったのである。「ホール スタッフ募集時給一千円以上土日交休福利有」のような、シャーロック・ホームズが犯人を牽制するために謎の