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愛を与える

今日はいつも以上に眠れない。

目覚ましの音で起きれなくなったのはいつからだろうか。

次の日の仕事に遅刻することが怖くて、目覚ましも4つ置いておかないと心配で仕方ない。

でも明日は土曜日、休日だ。

目覚ましも2つしかつけていない。

中々寝付けない理由はきっと明日が楽しみで仕方ないからだ。

結局、夜中に何度も目が覚めてしまって当日を迎えた。

今日からある人と1泊2日の小旅行に出かけるのだ。

今週はこの日のために生きていたと言っても過言ではないだろう。

いや、近頃はこの人に会うことを楽しみに生きている。

最近マイブームの朝食メニューを近くの飲食店で済ませて、2日間の服装に頭を悩ませる。

朝と夜は嫌なるほど寒いくせに、昼はそこそこ暖かい。

駅周辺もライトアップされていてすっかり町はクリスマス気分。

秋はどこへ行ってしまったのだろうか。紅葉シーズンが本当に存在していたのかどうかも今年は危うい気がする。

家の中を右往左往しては着替えを繰り返す。

もう電車の時間もギリギリだ。

何度も何度もリュックを開けては中身を確認して、忘れ物がないかを確認する。

1泊するとなれば、忘れ物をしてしまったらきっと嫌悪感に陥ることは間違えない。

よし、出発!

休日の朝の電車はそれほど混雑していなかった。

いつも平日乗っている通勤電車と比べれば何倍もマシだ。

念入りに確認したリュックの中から本を取り出し、活字に目を向ける。

何度かページをめくっただけで、睡魔に襲われた。

乗車時間は約40分、乗り換えもない。

気が付けば目的地「新横浜駅」に到着していた。

電車を降りてすぐに冷たい風が私を出迎える。

さむっ

どうやらあれだけ迷っても、服装の選択にミスがあったようだ。

駅のトイレに向かい、持参していた厚手の下着に着替える。

スマホの通知を見る限り、彼女も到着したようだった。

北口に向かへば、見慣れてきた後ろ姿が目に入った。

チャージする!と1件のメッセージ。

どうやら彼女で間違えないようだ。

私は話かけには行かず、数歩離れた場所で待つことにした。

振り返った彼女と目が合う。

○○○~
○○○!

なんて声をかけ合ったかは鮮明ではない。

会えて嬉しいと素直に思う。

彼女は自然と2日分の荷物を起用にまとめ、右手を空ける。

私がいつも左手を差し出すことを覚えてくれているのだと思う。

行先は「新横浜ラーメン博物館」

私は一度も行ったことがなかった。元々ラーメンが好きというわけではないし、横浜にも頻繁に遊びに来ているわけではない。

彼女に誘われなければ、未来永劫ここへ来ることはなかったかもしれない。

何ラーメンを食べたい?

どうやら気に入ったラーメンがあった彼女はこことここ!と笑顔で答える。

1件目はさっぱりとした味が印象的なお店だった。

なるべく多く食べることができるようにと、2人でミニサイズを頼んだ。

あえて違う味のものを選び、彼女の選んだものと交換し合う。

自分が感じている味を少しでも共有したいと、そう思うのだ。

40分待ちのラーメン店に並ぶことは人生で初めてだった。

ディズニーのアトラクションでもこんなに待つ必要がないものもある。

ラーメンを待つ間、写真を撮ったりお互いの仕事の話など、他愛もない話をしている。

ふと、彼女と目が合う。数秒間目が離せなくなる。

耐えきれなって笑顔がこぼれる。

可愛いね。

甘い言葉をかけると彼女はいつもとぼけた表情になる。

照れ隠しなのだろうか、嬉しくないのだろうか。

今の私に彼女の真意を読み取る力はまだない。

2軒目のお店に入ったとき、彼女は東北に行きたいと言った。

私の心はとても弾む。

自分と行きたいと言ってくれているのではないかと勝手に妄想しているのだ。

じゃあ、今度は東北旅行も一緒にしようよ

勢いのまま、思っていることをストレートに伝える。

いつ叶うかもわからないけれど、楽しみが増えたことにして幸せな気持ちになる。

2軒目でもミニサイズを選択し、お腹を膨らました私たちは残りの館内を観賞して外に出た。

次の目的地であるホテルまではまだ時間がある。

適当に駅内で時間を潰すことにした。

駅の中には家電屋とユニクロやGUが含まれていて、そこをぶらつくことにした。

会う時いつもGU行ってない?笑

そんな会話をしたと思う。

私は彼女と服屋さんに行くのがとても好きだった。

彼女はどんな服装でも似合うし、私のタイプだった。

似合ってるね、可愛いよ。

そう伝えると、得意の表情を見せてくる。

喜んでくれていたら嬉しい。

結局時間を潰しきれず、スタバで休憩をすることにした。

何にしようかな~

優柔不断の私より悩んでいる彼女が決めたのは、ホットのほうじ茶だった。

私は抹茶のフラペチーノに決めた。

次会う時は何しよう。ディズニーはいつにする?年末年始は何しようね。

先のことを話合う時間がとても好きだ。

この先も自分が生きているのだと実感できているようだ。

そこに彼女も近くにいると考えるととても嬉しい。

チェックインの時間はあっという間にやってきた。

部屋の階は29階。こんなに高いところに泊まったことがあっただろうか。

ホテルの部屋を開ける瞬間はドキドキだ。その部屋で過ごす時間は間違えなく非日常を体験することができる。

外の景色も十分、お風呂も広い、お部屋も綺麗

120点満点!

重い荷物を降ろして、ベッドに2人で横になる。

私はこの瞬間のために我慢していた言葉を口にする。

プレゼントがあるんだ

何をあげようか、何なら喜ぶか、何色が好きだろうか、どんなものが似合うだろうか。

悩む時間もとても楽しかったが、全ては今この瞬間のためにあった。

プレゼントの中身を確認した彼女は

ありがとう

と伝えてくれた。

ああ、悩んで良かった

この笑顔が1秒でも見れたのなら、これ以上何もいらなかった。

腕を回してハグをしてくれる。

自分の愛は伝わっているだろうか。無条件に愛を与えることがとても幸せなものであると感じさせてくれる彼女のことが好きだ。

キスを交わした後、再び外に向かった。

次の目的地は「中華街」

食べ歩きをしようと話をしていた。

今日は食べてばっかりだね

なんて笑い合う。

もう日が沈む時間であっても、中華街は人で賑わっていた。

ごま団子が食べたい!

初めに入った店では、小籠包とごま団子を食べた。

どちらもびっくりするほど美味しかった。

その後もいくつかの店舗に立ち寄っては食を楽しんだ。

赤レンガの方まで歩かない?

そう2人で決めて、寒い11月下旬の横浜を歩き始めた。

やはり僕は1人では~!

あいみょんが好きな彼女は突然歌い出す。

私はそれがおかしくて、可愛くて、ゲラゲラ笑いだす。

彼女は歌がとても上手で私の中では有名だ。

初めて一緒にカラオケに行ったときにはその歌声に衝撃を受けたものだ。

結局赤レンガ倉庫までは歩かなかったけれど、その手前に停泊していたクルーズの周辺で写真を撮り合った。

寒い寒い

服装を誤った私の凍った手を温める彼女に心を奪われる。

可愛いね

思ったことは素直に、ストレートに伝えよう。後悔しないように。

自分の気持ちが1%でも多く伝わるように。

部屋に戻る前、ホテルに併設されているコンビニでお酒と少量のつまみを買った。

ホテルの中でコンビニ飯豪遊って夢じゃない?笑

豪遊という程でもなかったけど、幸せになるには十分すぎる量だった。

先にお風呂に入りたい彼女と、温めてもらったハヤシライスを一刻も早く食べたい私は別々になる。

寂しいなあ

トイレの時間以外は一緒にいたのに、急に1人になったようで孤独を感じる。

1人暮らしが何を言っているんだ、なんて思いながら。

髪を濡らしてホテルの寝巻になった姿を見るのは初めてだった。

可愛いね

もはや自己満足になっているかもしれない私の言葉はどこへ向かっただろう。

彼女の心の中に届いていればいいのだけれど。

お風呂の中は想像以上といっていいほど広くて快適だった。

湯船に浸からなかった彼女には申し訳なさを少々感じつつも、自分はお湯を溜めた。

上がった後はお楽しみのコンビニ豪遊!

お酒があまり得意ではないもの同士、1缶ずつをパイナップルと一緒に飲み干した。

アルコールに強い私は酔った経験はない。

頭の中も平常運転。

ベッドはご丁寧に2つ用意されているけれど、片方に2人で横になる。

今日はありがとう
とっても楽しかった
可愛いね
好きだよ

伝える言葉にお金はかからない。

自分のできる最大の力を振り絞って愛を伝える。

相手に自分がどう思われているかなんてわからない。

それでも、愛を無条件に与えたいと思う。

この感情は相手に喜んでもらいたいという気持ちから来るのか、ただの自分の自己満足に過ぎないのか。

どこから湧き上がるエネルギーなのか言語化はできない。

唇が触れ合う

どれだけ身体を触れ合っていただろう。

日付が変わる頃にはおやすみを言った気がする。

今度目が覚めるとき彼女はどんな顔をしているだろう。

今日もまた寝れなそうだな笑

伝わっていたら嬉しいけれど、伝わってなかったとしても、こぼれ落ちていたとしても、この気持ちが生きている限りは無条件な愛を与えたい。





















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