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アラジン(2019年)のアラジンさんとジーニーさんの正体



 はーい、テツガク肯定です。

 アラジン(2019年)という映画の話です。
 ネタバレ全開……というより話を知らないと。
 ついていけないかもしれません。


 えっ、それでも構わないですって?
 なかなか立派な好奇心の持ち主のようですね。

 それではこの先はネタバレ全開です。
 それは困ると言う方は、どうか忘れてお戻りください。
 それでは……。





 今の私がこの映画について語りたいこと。
 それは大きく分けて三つあります。

 1、アラジンさんとジーニーさんの正体
 2、扉まで連れてきた、扉を開けるのは――
 3、人を好きになるってこと



1、アラジンさんとジーニーさんの正体


 まず、タイトルにもありますが。
 アラジンさんとジーニーさんの正体。

 もちろん、映画冒頭のかっこいい船長がジーニーさん。
 ――だなんて、ことではありません。

 これは私の感想ですが。
 この映画においては。(まだ私はアニメ版を観ていないので)
 ジーニーさんの正体はジャファーさんのように思えます。

 後半で明かされる、ジャファーさんの三つ目の願い。

 最後の願いだ
 私を宇宙で最強の存在にしろ

 ずっと、ここまでナンバー2で悔しい思いをしてきた。
 そういうジャファーさんにとって最上級の願いと言えます。

 この願いを聞いて。
 賢い方々はピンと来たでしょう。
 それは前半の場面、ジーニーさんがアラジンさんにこう言います。
 自分は全知全能ではなくて――。

 宇宙で最も力がある


 これを愚かな私はこう解釈しました。

 宇宙で最も力のある存在はランプに住むことになる。
 ……そういう魔人もいる。
 そして、ジャファーさんもそうなった。

 無限の力を持ってるのに
 家は めちゃ狭い

 もちろん、これだけではありません。
 ジーニーさんはやたらと願いに詳しかったです。

 願いはたいてい――
 大金と権力を望む!

 頼むから奴らのマネはするな
 どうせ満足なんかできない

 他にも

 注意しておこう

 1つ手に入ると
 もっと欲しくなる

 それから中盤。
 アラジンさんがアリ王子に満足し始めた頃。

 お前も奴らと一緒か

 さらに、アラジンさんが約束を破棄し。
 偽りを選ぼうとした時は。

 ウソで何かを手に入れても
 もっと惨めになるだけだ

 いくら魔人といえども。
 あまりに説得力のあり過ぎる助言。 
 それから血の通った心配。
 全知全能の存在であれば、不思議ではないんですがね。

 まるで、かつての実体験のよう?

 この映画では最後にランプに住むことになるジャファーさん。
 その願望は何か?

 大金と権力を望む!
 正確には権力、ナンバー1の力!
 それがジャファーさんの願望に思えます。

 ついでに彼の願いは――。
 1つ目の願いがアグラバーの国王。
 2つ目の願いが最強の魔法使い。
 そして、3つ目は……宇宙で最強の存在。

 ジーニーさんの予言通り。

 1つ手に入ると
 もっと欲しくなる
 満足なんかできない

 やっぱり実体験に思えます。
 かつての自分が今のジャファーさん。
 そして、今の自分は――アラジンさんの友達のジーニーさん。

 それから、アラジンさんの正体は――。
 これもジャファーさん。
 芸がないようなことですが、とても奥深いんです!

 二人共、泥棒でした。
 頼りになる相棒もいます。
 アラジンさんはアブー、ジャファーさんはイアーゴ。
 泥棒の腕はジャファーさんの方がアラジンさんよりいい気がします。

 もし、二人共同じと考えたら。
 二人は何が違ったか?
 どこが分岐点だったか?

 自分を偽り続けたのがジャファーさん。
 自分を偽るのを辞めたのがアラジンさん。

 遠い昔のジャファーさんにも。
 この映画のアラジンさん同様にステキな人がいたのかもしれません。
 そして、この映画同様、相応しく在るように偽り始めたら。
 その偽りの方がホンモノになり始めた。

 偽りというのは権力です。
 ステキな人と一緒にいるための権力が。
 その権力が何よりもステキなものに変わってしまった。
 そういう道を進んでしまったのが、ジャファーさん。

 ジーニーさんは忠告しましたね。

 ウソで何かを手に入れても
 もっと惨めになるだけだ

 ジャファーさんはナンバー2まで成り上りましたが。
 満足できずに国王になり、最強の魔法使い、宇宙で最強の存在……。
 ですが、それでも満足できず。
 宇宙の外でも最強、最強の最強、最狂で最恐の最強な何か。
 その先もまだまだ続きそうです。

 悪くないんですがね。
 限りのない愚かさこそ人の最大の魅力の一つ。
 それが素直な願いであれば。 

 なかなか難しいことですが。
 アラジンさんが言ってたように。

 持てない奴は 持てるフリを

 そう言ってた前半の頃のアラジンさんは。
 自信に満ち溢れていました。
 この時は、嘘が嘘ではなく事実だったんです。

 本当に持ってないから持っているフリができた。

 ですが、疑いを持ち始めると。
 もう持ってないフリも持ってるフリもできない。
 それを忘れるようにそれを求めてしまう。

 ジャファーさんに出逢うまで。
 アラジンさんはアグラバー1の泥棒に思えました。
 ですが、映画を観るとアグラバー1の泥棒はジャファーさん。
 ただ、当の本人はそれに気づかず、自分をナンバー2だと思っている。

 ちょっと不思議な話です。
 この映画で自信を失い始めたアラジンさんと。 
 自信を取り戻せそうな、選び直せそうな機会を見過ごしたジャファーさん。

 アラジンさんとジャファーさんとジーニーさん。
 この3人の関係性を今の私から言わせていただくと。

 アラジンさん(現在の主人公)=ジャファーさん(未来の可能性)=ジーニーさん(過去の結果)。

 かつて宇宙で最強の力を手にした野心家。
 その魔人が住むランプの伝説を知っている未来の野心家が。
 現在に現れた原石に気づいた。

 全部、自分のこと。
 そう今の私には思えました。
 スプーンなんてない、汝、自身を知れ、アラジン。

 きっと、賢い日本人にはお見通しの事実で。
 わかりきったことだと思いますが。
 あえて、愚者の私は書き留めておきます。



2、扉まで連れてきた、扉を開けるのは――


 アリ王子が扉へ
 アラジンがそれを開ける

 『マトリックス』って映画にも似た台詞がありましたが。
 最後に決めるのは自分……だなんて、よくある言葉ですが。
 そこまで重い言葉ではありません。よくよく観察すると。

 ジーニーさんがさっきの台詞を言い。
 アラジンさん独りで踊るように突き放しますが。
 その後も、ジーニーさんが援護していたように見えます。

 さらに、地図でアバブワを示す時も。

 ファンタジーランド
 自分らしく

 とメッセージを残し。
 アラジンさんに場所を決めさせました。

 示した時には何もありませんでしたが……。
 再びジャスミン王女と一緒に見た時には。
 ちゃんとアバブワがありました。

 ジーニーさんが手伝ってくれた。
 そうとも言えますが。
 本当は……自分が助けてくれた。

 1でも言いましたが。
 アラジンさんが現在の主人公なら。
 この映画のジーニーさんは、かつてのアラジンさん。
 そう考えると――。

 外見は王子に変身させたが――
 中身は何も変えてない

 このジーニーさんの台詞をどう解釈するか。

 中身は泥棒のまま、クズ野郎、ドブネズミ?

 いいえ、私はこう解釈します。

 今、王族のパーティーにいるのは君なんだ。
 あの夜、堂々とお城に忍び込んだアラジンさん。
 嘘や偽り、それらを気にもしなかった。

 暴かれるような何かなんてない。

 決して、アリ王子ではない。
 上辺の名ではなくて。
 気づいてほしい、本当の良さを持っている。
 そういうアラジンさんのまま。

 なのに、どうしてソワソワしてるの?
 まるで、別人みたいじゃないか。

 僕を信じて、だろ?


 ジーニーさんいわく。

 やがては
 本物の自分が出てくる

 隠し切れない魅力的な自分が。
 扉をつくり、扉に気づき、扉を開ける……。

 面倒な努力とか重過ぎる代償とか。
 そういうのは、知らない誰かが勝手に決めた欺瞞であって。
 自分が用意した扉は――もっとシンプルなもの。
 そうだろう? アンダーソン君。

 他人にはこじ開けるのに骨が折れる扉かもしれませんが。
 当の本人にはたった一言、開け、ゴマ。

 自分はナンバー1の男。
 そうジャファーさんも早く気づけたら。
 ランプで永いこと暮らして、様々な人に仕えなくてもよかったり?



3、人を好きになるってこと


 この映画を観て思ったこと。
 それは人を好きになるってことは素直であること。
 そんな気がしました。

 一番わかりやすいのがジーニーさんでしたね。
 ダリアさんに対してもそうですが。
 もっともわかりやすいのはアラジンさんに対して。

 聞け 俺の願いは
 どうでもいい

 これはお前の心の問題だ

 この生活のために
 愛する人にウソをつくのか?

 これは素直なジーニーさんの想いで。
 なぜ、それをアラジンさんに伝えたか。
 それは、本当にアラジンさんの事が気に入ったから。
 友達と思えるほど好きだから。

 そう愚かにも察します。
 少なくとも私はそうですし。
 私にも覚えがあります。

 だいたい察しますよ。
 相手からすれば聞きたくもないこと。
 それを言わずにはいられない時。
 うっかりと素直にそれを言う理由は好きだから。

 その結果など。
 ろくなものではありませんがね。
 特にこの国においては。

 正直に言えば今では嫌いなので。
 今の私が言えるのは――。
 いえ、忘れてしまいましょう。

 無関心とは違います。
 ハッキリと確かに意識的に忘れてやるんです。
 そして、今まで気づきもしなかった。
 関心も向けなかった、向けられなかった夢へと夢関心。
 確実に好きにならずにはいられない、かつての無関心へと。

 好きの反対は無関心ではありません。
 無関心は希望です。新しい未知、未来の可能性です。
 決して悪いモノではありません。
 少なくとも私にとって、この世界を無関心へ忘れ去れるのは。
 何よりも喜ばしいことです。嘘偽りなく。


 とにかく、人を好きになるって素直であること。

 ジーニーさんは愛する人にと言いました。
 もちろん、そうですが。
 なによりも自分に素直であること。
 自分に嘘をつくのはよくない。
 嘘や偽りを操っても、それらを主人にしないこと。

 愛する誰かにも、愛すべき自分にも。
 嘘はつかない偽らない。

 人の欺瞞はかくも邪悪なり。
 されど、人の自信はかくも神聖なり。

 私はこの世界ではなく。
 故郷へ帰る。
 欺瞞はここまで。

 まさに、ホール・ニュー・ワールド(全く新しい世界)。

 電子の妖精がいて、嘆きの天使がいて、迷える恋ヶ窪さんがいる。
 テディ・ドチャンプ軍曹にリッチー・トージアさんに。
 パトリシア・マクファーランドさんにハンナ・モンタナもいる。
 他にも私がこの世界で過ごした人に出逢った物語の人。
 洋画にゲームにパソコンだの、その他いろいろ。

 あの世でも一緒に過ごしたい全てと。
 残りの9割は綺麗さっぱりと忘れ去ってしまう。

 なにより1番最初の願いは。
 我が愛しの相方、世界三大ウサギの一羽との一話目を。
 頼りになるワガママ・クイーンと新しい世界へ。
 飛び方を思い出せてくださった、歌う不死蝶さんに感謝を伝えに。

 自分に素直に正直であること。
 その勇敢な足取りは少し難しいですが。
 誰だって忘れていない足取り。

 事実、アラジンさんも最初から最後まで素直でありました。
 素直だったので不安になったわけで。
 正直だったから欺瞞に気づけたわけで。
 勇敢だったから選び直せたんだと思います。

 人を好きになるって素直になること。
 独り背伸びしてたけど、寄りかかりたくなる。
 一緒に歩きたくなる、そんな感じ? どんな感じ?

 とにかく、自分に素直に。
 なかなか難しいですがね。
 認めて許すのはおそろしいですから。

 まさか、自分の本当の姿が。
 勇敢なアトレーユさんだなんて。
 バスチアンさんにとっては何よりも恐く怖ろしい恐怖のITです。




 以上、この3点が気になりました。

 もともと今作の監督のガイ・リッチーさんは。
 私が憧れる英国の巨匠です。

 時々、『ガイ・リッチー文法』なるものを活用――。
 盗んで使わせていただいています。

 まあ、そんなことはどうでもいいんです。

 私はこの映画で初めてアラジンの話を観ましたが。
 凄くいい話でした。

 ただ私が聞いた違う話だと。
 ランプの魔人には制約がない話もあるとか。

 最初にジーニーさんが言った。

 願い事は増やせない
 人をホレさせたり
 死人を蘇らせたりもできない

 という3つの制約などない。
 確かに、話の都合でそうなった感はあります。
 なぜって、その全ては最強の魔法使いになったら叶いそうですし。
 宇宙で最強の存在になれたら……?

 ただ、問題なのは。
 どんな力も、それを喜んでくれる。
 自分以外の誰かがいないと何も証明されない。

 宇宙で最強の存在であることを実感するために。
 ランプに住んで誰かの願いを叶え続ける、となれば。
 もう権力より自由が欲しくなりますね。

 そうです、この映画の初期の。
 何も持っていないから、なんでも持ってる。
 そう信じられたアラジンさんこそ。
 自由でありながら最も偉大だった。

 もし、自分の願いを。
 誰にも証明する必要もなく。
 自分だけが信じていればいい。

 そう気づけたら。
 見えない扉が目の前に開いたり?
 開け、ゴマ、スプーンなんてない、心を解き放て。

 全てのアンダーソン君。

 えっ、自分はトーマス・アンダーソンじゃないですって?
 いかにもターミネーターの日本人的な答えですね。
 人類を滅ぼすようにプログラムされ。
 未来から送り込まれたターミネーター。

 ですが、それは神武天皇の野望であって。
 本当にあなたの希望でしょうか?

 私はこの映画を観て驚きましたが。
 あの爽やかな笑顔に軽い身のこなしのアラジンさん。
 性格もよく、親切なイケメンですらこう思うわけです。

 自分と彼女は不釣り合いだ、と。

 まるでデジャヴ、昔の私とそっくり。
 ですがね、今なら言えますが。
 不釣り合いだからこそ、相性バッチリ。

 消極的でウジウジした私だから。
 積極的にガンガン振り回せる相方がいる。

 そういうものです。
 欠点だと思ってた、それが魅力だったりするんです。
 泥棒じゃないアラジンさんだったら。
 ジャスミンさんにジーニーさん、観客の心は盗めないでしょう。

 汝、自身を知れ、ネオ。
 この世って湯屋に名を奪われたジェイソン・ボーン。
 誰かにジョン・Gを追うように指示されたレナード・シェルビー。
 未来の自分に連れられた、橋渡し役のジョセフ・クーパー。
 遊園地に迷い込んだマスクの少年、ローン・レンジャー。
 足が帰り道を覚えていた、馬上槍試合の覇者ウィリアム卿。
 故郷にいる誰かに心臓を預けてきた、彷徨えるダッチマン。
 愛しの人を追いかけ旅立った、ウィル・ハンティング。



 最後に

 私ならなんとランプに願うか?
 願いはいっぱいありますが。
 ランプの魔人にお願いするのは簡単です。

 まず、アラジンさん同様に。
 魔人に自由を。
 これが必須です。

 それから――。
 この世界を綺麗さっぱりと消して。

 あー、言わなくてもいいです。
 たいていこの手の願いは無理だってのがお決まりです。
 ですから、願いはこうです。

 愛しの相方とホール・ニュー・ワールド。
 世界三大ウサギの一羽を私のもとへ。
 そして、私に自由を。

 この国、この世界、全ての足枷を外して。
 全く新しい世界を一緒につくる。
 目覚めは最高のスタンド・バイ・ミーを。

 ですから、願いは2つです。
 我が愛しの相方を私の隣に。
 ランプの魔人に自由を。

 えっ? もう1つは?
 大丈夫です、ランプの魔人よりも凄い。
 それが私の相方、ワガママ・クイーンですから。
 ワガママに欲張りに全てを歪めてしまいますから。

 自由が欲しい気持ち、よくわかります。
 私はランプの囚人ではなく。
 青く醜い悪霊に誘拐された囚人。

 だから、一緒に脱獄です。
 ジワタネホは遥か彼方、我々は塀の中。
 そうです、そういうことです。
 お互いに自由を。

 そう悪くない話じゃありません?
 もしかしたら、これを読んでいるあなたの方が。
 もっといい願い方を知っているかもしれませんが。

 とにかく、アラジン、とてもいい話でした。
 全てのランプの魔人に自由を。



 それでは、また次の機会にお会いしましょう。







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