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村上春樹『TVピープル』考察メモ①

※※ヘッド画像は nagata_tetsurou(うげ)さまより

備忘録がてら村上春樹の短編『TVピープル』で気になった点をまとめてみたいと思う。脱線するが、この小説はホラー小説としても完成度が高いように思う。TVピープルのわけのわからなさ。人間が発音するには難儀しそうな音を発するTVピープル。僕が最初に出会ったのは春、日曜日の夕方。怖くなりそうな雰囲気だ。

※ネタバレ注意

1.日曜日の夕方、春先

 TVピープルが僕の部屋にやってきたのは日曜日の夕方だった。
 季節は春だ。たぶん春だと思う。いずれにせよそれほど暑くもなく、それほど寒くもない季語である。
 でも正直なところ、ここでは季節はあまり重要な問題ではない。重要なのはそれが日曜日の夕方であったということだ。

村上春樹『TVピープル』文春文庫 p.9

日曜日の夕方といえば『サザエさん』が放映される時間帯であり、テレビをつけていれば多分、『サザエさん』が回っていたのだろうと思う。次の日は月曜日。出勤せねばならず、尽きかけている余暇に焦燥と憂鬱を感じ始める時間帯でもある。

日曜日の夕方になると〈僕〉は頭痛の症状があることを訴える。頭痛といっても痛いわけではないらしい。ただ引っ張られる感覚。頭の中に糸が張り巡らされていてそれを引っ張られる感覚になるらしい。

2.音、無意味な音、音

 そして音が聞こえる。いや、音というよりはそれは分厚い沈黙が闇の中で立てる軋みのようなものだ。ックルーズシャャャタル・ックルーズシャャャャタル・ッッッッックルーズムムムス、とそれは聞こえる。

同書p.10

音、無意味な音、音。TVピープルはその隙を狙ってやってきた。しかし、この擬音、しっかりと調査すれば何かの経文の一節ということになるのだろうか。調査して見る気力はないものの、可能性としては考えねばならない。オン カカカ ビサンマエイ ソワカ。うっかりそんなことを口走っていないものか。

3.TVピープルの外見

TVピープルはトールキン的なドワーフのような見た目でもなく、ちいかわのような見た目でもなく、『Mother2』のスターマンのような見た目でもなければ、妖精さんでもなく、子どもでもなく、成人男女が縮小されたような存在である。

そこに安部公房的な異質さを覚えるかもしれない。TVピープルは決してかわいらしい見た目をしてはいないのだ。むしろ不気味の谷現象によって、かえって恐怖すら覚えるのかもしれない。そういうTVピープルが引越し作業員のように家に居座っている。(居座っているといっても働いているわけだが。)

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