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うつ病の原因〜反すう思考の正体〜

反芻(はんすう)思考とは、
ネガティブな出来事を何度も思い出して悩んでしまう心の状態のことを言います。

うつ病などでよく見られる特徴の一つとして知られていますが、
失敗したことを繰り返し思い出して憂鬱になることって、別にうつ病を罹ってなくてもありますよね。

今回は、
ストレスを引き起こす要因の一つである反芻思考について解説していきます。


反芻思考の定義

Nolen-Hoeksemaによると、
反芻とは、「抑うつ症状、原因、意味、結果に対して繰り返し注意を焦点づける思考や行動である」と定義されています。

これだと漠然とし過ぎているので、「反すうの概念分析」という論文を参考にしてサブカテゴリーに分けてみましょう。

反芻が起こる5つの原因

①精神的苦痛

・理想と現実の不一致状態
・抑うつ状態
・不安状態

上記によって主観的な苦しみが生じている状態のことを指しています。

「学生の頃からPTを目指してきたけど、就職したら思っていた仕事と違った」
「自分なんかが担当になって患者さんに申し訳ない」
「明日のカンファレンスで医師に説明する自信が湧かない」

などなど、どれもネガティブな考えが頭の中をぐるぐる回る様子が想像できると思います。
これが精神的苦痛による反芻ですね。

②ストレス負荷

・重大な出来事
・日々のストレス

など、外部からの刺激や圧力によって生じる緊張状態によってストレス負荷が生じます。

「担当していた患者さんから担当を外れてほしいと話があった」
「毎日残業が多くて家に帰っても何もやる気が起きない」

など、ストレスが元になってネガティブな思考が頭をよぎるのは誰しも経験があると思います。

③客観視の不足

・客観視の不足
自分の考え方や感情を自己肯定することができない
・否定的な解釈
ネガティブな認知や、悪いことばかりに意識が向く注意バイアス

上記のように、状況を多方面から見て中立的な判断を下すことができない状態を指します。

「1年目の自分なんかが担当になって、患者さんはきっとがっかりしてる」
「先輩の話に上手く相槌が打てなかったから、きっとバカだと思われた」

など、否定的な解釈に目が向いてしまうことで反芻思考のスイッチが入ってしまうパターンですね。

④注意の調節困難

・自己没入
自己に注意が向きやすく、向いた注意が持続する
・注意制御の不十分さ
注意を切り替える能力の不足

上記の結果、悪いことばかりに目が行くようになリます。

「この前も同じような失敗したし、今回もダメだった。どうせ今度も失敗する。大体昔から僕は…」
「明日の休日は友達と出かける予定だったけど、憂鬱な気分だからキャンセルしようかな…」

等々、自分のネガティブな面に注意が向いて、しかもその注意が持続することで悪循環に陥ってしまいます。

③の客観視の不足もそうですが、前回取り上げた自動思考の中にも該当する部分がありますね。

詳しくは以下の記事をご参照ください。

⑤生物学的特徴

・女性であること、年齢が若いこと

上記が反芻思考と関連しているとされています。

元々女性は身体が男性に比べて弱いので、ネガティブな出来事に敏感です。
これは進化上の必然なので、別に悪いものではありません。

同様に、年齢が若いうちは経験値が低いので、危機回避手段として反芻思考が敏感に働く…というのもうなづける話です。

反芻思考がもたらす3つの害

❶精神的健康の悪化

ネガティブな感情が増加することで、抑うつ状態や不安状態が増悪します。

❷身体的健康の悪化

・免疫機能の低下
白血球数、リンパ球数の低下

・心拍変動の低下(自律神経異常)
交感神経の亢進、睡眠状態の悪化によって生じる

・身体的不調

など、心身相関と呼ばれる現象によって身体に様々な悪影響が生じるとされています。

❸ストレスの増悪

・ストレス知覚の増加
体験したストレスが強く知覚されてしまう状態

・不適切な対処法
飲酒や暴飲暴食、回避行動などその場限りの対処法

参考文献より引用

リハビリへの応用

反芻思考によって思考を制御できなくなることは、
自己を見失い、自己の尊厳が脅かされる状態にあると言えます。

したがって、反芻思考への対策を実践することは、対象者の尊厳を維持する重要なケアとなります。

また、
身体的健康の悪化を引き起こす反芻を改善することは、精神のみならず身体的健康の保持に貢献します。

重要なのは、
反芻思考の出現に影響する、客観視の不足や注意の調節困難は改善が可能だという点です。

認知行動療法に代表されるように、
自分の思考の癖を知ってそれを改善することで反芻思考の抑制が可能になるんです。

そのためにもまずは、

対象者にどんな反芻思考が生じているのか? 
その原因はどこにあるのか? 
どのような精神身体的症状につながっているのか?

などを探る習慣をつけると良いのではないでしょうか。

【参考文献】

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