寺島佑@理学療法×自律神経×心理学

神奈川の訪問看護ステーションで働く理学療法士。様々な徒手療法の研修を経て、心理が身体に…

寺島佑@理学療法×自律神経×心理学

神奈川の訪問看護ステーションで働く理学療法士。様々な徒手療法の研修を経て、心理が身体に大きな影響を及ぼすことを痛感。心理学と自律神経、神経科学などの視点から、臨床に活きる内容を発信していきます。

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最近の記事

バーンアウトの対処法 〜理学療法士の燃え尽き症候群〜

前回の記事で、燃え尽き症候群(バーンアウト)の概要をお伝えしました。 バーンアウトは対人援助職が陥りやすいとされています。 患者や医療者との関わりが重要な役割を果たす理学療法士もまた、バーンアウトに悩まされる可能性が高いと言われています。 そこで今回は、 スペインの理学療法士を対象とした論文を基に、バーンアウトの実態とその対処方法についてお伝えしていきます。 まずは、上記参考資料である論文の詳細から。 対象評価バッテリー日本語に対応した簡易チェックが上記サイトから行え

    • 燃え尽き症候群の正体

      前回は、やる気の心理学と題して前向きに自己研鑽に取り組む方法についてお話しました。 それに関連して今回は、 近年増加していると言われている燃え尽き症候群について解説していきます。 医師や看護師といった対人援助職に多いとされている燃え尽き症候群。 知らず知らずのうちに罹患している人も多いのではないでしょうか。 燃え尽き症候群の定義 燃え尽き症候群とは、 責任感を持って仕事に取り組んでいた人が、急にやる気や熱意を失くしてしまう状態のことです。 「バーンアウト」とも呼ばれ、

      • やる気の心理学〜やる気が出ない、5つの理由〜

        理学療法士として働いていると、常に自己研鑽することを求められます。 職場での研修参加が義務付けられている所もあるでしょう。 「外部研修に参加すること」が無言の圧力となっている施設もあるでしょう。 もちろん勤めている施設によると思いますが… 自分が患者の立場になったとして、 卒業以降全く勉強してこなかったセラピストに担当してもらいたい、と思う人はいません。 でも、身銭を切って勉強を続けられる人は決して多くない。 時間だって限りがあります。 家族ができれば、勉強の優先順位

        • 99%の人が知らない、マッサージの意外な効果

          理学療法✖️心理学で記事を書いている寺島です。 前回の記事では、腸&セロトニンの話をしました。 セロトニンを増やす方法の一つにマッサージがあるよ、ということはご存知だったでしょうか? 今回は、 マッサージの効果について検討した論文を元に、その効果について幅広くご紹介していきます。 対象となる疾患が多いので、興味がある部分だけ読んでもらっても大丈夫です! マッサージによる3つの効果マッサージを受けることによる生化学的な効果は主に3つあります。 ✅コルチゾールの減少 免疫

        バーンアウトの対処法 〜理学療法士の燃え尽き症候群〜

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        • リハビリと心理学
          24本
        • 幸福と心理学
          11本
        • 対人関係と心理学
          6本
        • 認知行動療法
          6本
        • うつ病の心理学
          4本
        • ストレスと心理学
          4本

        記事

          腸と幸福をつなぐ、セロトニンの増やし方

          前回の記事で、 腸内環境が精神状態を左右する可能性がある、という事を解説しました。 今回は、 幸福ホルモンとして有名になったセロトニンについてさらに詳しく説明していきます。 セロトニンは腸で作られる セロトニンの90%は腸で作られる、と言われています。 そして、セロトニンは幸福に関係する神経伝達物質です。 だから腸を労われば幸福になれる!! …というほど実は単純ではないのです。 なぜなら、 「腸で作られたセロトニンは血液脳関門を通ることができない」からです。 腸で

          腸と幸福をつなぐ、セロトニンの増やし方

          メンタルを整える「腸」の真実!

          心が疲れている時は、心に対してアプローチするのが第一と考えがちですよね。 もちろん、メンタルを整えるために心理学を学び実践することも大切ですが、 今回は別の視点からメンタルヘルスを語ってみましょう。 メンタルを整えるために腸内環境を良くした方が良いよ! というのが今回のテーマです。 心と腸は繋がっている脳腸相関、という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 「腹が立つ」 「はらわたが煮え繰り返る」 「腹の虫が治まらない」 「太っ腹」 「腹をくくる」 「腹黒い」 「腹を割っ

          メンタルを整える「腸」の真実!

          失敗しない!対人関係の心理学

          以前の記事で、 自分あるいは相手の性格(パーソナリティ)を理解することが対人ストレスを減らす上で有用ですよ、という話をしました。 今回は、 対人場面において取りがちな考え方や行動を指標化したモデルについて解説していきます。 その名も、対人円環モデル。 対人円環モデルとは 円環という名前の通り、 対人特性を8領域に分類し、円環状に配置することで視覚的にも対象者の対人特性を分かりやすく認識することが出来るようになっています。 それでは、 対人領域を説明する8つの特性につい

          失敗しない!対人関係の心理学

          共感しない権利

          「相手の気持ちを考えなさい」 小学生の頃によく言われる言葉です。 医療系の学生になってからも、「患者さんの立場に立って考えましょう」と言われることがよくあります。 いわゆる共感、ですね。 対人コミュニケーションにおいて重要とされてきた「共感」について、 ポジティブな印象を抱いている人が多いのではないでしょうか。 ですが、 行き過ぎた共感が元で精神に不調をきたしたり、場合によっては社会的暴力を助長することもあるんです。 今回は「共感」について、 神経生理学的な視点から

          慢性腰痛に最も効果的な治療とは?

          「非特異的腰痛」(以下、腰痛)は、あらゆる疾患の中で最も多くの障害を引き起こしていると言われています。 最近の推計では、 成人の20~56%が1年以内に腰痛を経験し、ほとんどの人が生涯のどこかで腰痛を経験することが示唆されています。 また、 腰痛は後期高齢者に最も多くみられ 、症状が4~6週間以上持続する場合には慢性化するリスクが高いことが示唆されています。 「最近腰痛くて」とぼやいている人が、職場にもちらほらいるのではないでしょうか。 こうした“明確な器質的障害のな

          慢性腰痛に最も効果的な治療とは?

          不定愁訴の正体

          「これは心因性の痛みだな」 「あの患者さん不定愁訴だよね」 療法士であればこのように思ったことも少なくないと思います。 特に高齢の患者さんについてはなおさら。 実際、心療内科の外来を受診する高齢者が増えているというデータもあります。 そこで今回は、 主に高齢者の心身症について深掘りしていきたいと思います。 心身症とは 心身症とは、身体疾患のうち心身相関が認められる病態のことを言います。 疾患名ではない、という所がポイントですね。 高齢者の心身症の特徴として以下のもの

          トラウマへの対処法、TICとは

          脳に異常がないのに身体が麻痺する。 以前の記事で、 精神的な問題が元で身体に麻痺が起こる「機能性神経障害」について解説しました。 心の状態が身体に影響を与える、「心身相関」とも呼ばれるこの現象の最も一般的な例は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)として知られています。 理学療法士にとっては馴染みのない疾患かもしれませんが、 実は事故による骨折や突然の脳卒中の発症など、PTSDのきっかけになってもおかしくない病状を抱えた患者さんと日々関わっているんですよね。 実際に、日

          トラウマへの対処法、TICとは

          うつ病の原因〜反すう思考の正体〜

          反芻(はんすう)思考とは、 ネガティブな出来事を何度も思い出して悩んでしまう心の状態のことを言います。 うつ病などでよく見られる特徴の一つとして知られていますが、 失敗したことを繰り返し思い出して憂鬱になることって、別にうつ病を罹ってなくてもありますよね。 今回は、 ストレスを引き起こす要因の一つである反芻思考について解説していきます。 反芻思考の定義Nolen-Hoeksemaによると、 反芻とは、「抑うつ症状、原因、意味、結果に対して繰り返し注意を焦点づける思考や行

          うつ病の原因〜反すう思考の正体〜

          ネガティブ思考、8つの原因

          同じ出来事を前にしても、人によって感じる気分やその後に取る行動は異なります。 なぜかというと、 行動のきっかけを作る「認知」のメガネが人それぞれ違うからです。 厄介なのは、この認知メガネは自分でかけている自覚がない点です。 ネガテイブな認知メガネは、こと対人関係において様々な問題を引き起こします。 考え方の癖、自動思考とも呼ばれる認知メガネについて今回は解説していきます。 8つの自動思考について理解する自動思考によって、知らず知らずのうちにネガティブな考え方や極端な思い

          ネガティブ思考、8つの原因

          行動を変えるために必要な2つの条件

          認知行動療法について解説した以前の記事で、 問題となる行動が繰り返される原因は、「行動の前ではなく後にある」と説明しました。 https://note.com/terasuyu/n/n252066e43d69 リハビリ拒否という問題行動の原因は、患者にやる気がないからではなく、 以前リハビリをしたことで嫌な思いをした、ということが理由になるのです。 行動の後にどのようなことが起こるか(起こったか)によって、その行動の増減は決まる。 今回は、その「行動」についてさらに掘

          行動を変えるために必要な2つの条件

          楽しんで生活していると認知症にならない!?

          人生全般にわたるポジティブな心理状態のことを「心理的ウェルビーイング」と言います。 この心理的ウェルビーイングと循環器疾患が関連する! といった報告は結構あるんですよね。 で、今回は心理的ウェルビーイングと認知症の関連を研究した論文を見つけたので、 簡単に紹介したいと思います。 ウェルビーイングについての詳しい記事はこちら↓ 研究方法生活を楽しんでいる意識が高い人は、認知症リスクが低い✅10年の追跡期間中に、4,642人が認知症と診断 ✅生活を楽しんでいる意識が低い

          楽しんで生活していると認知症にならない!?

          リハビリ中のNGワード

          認知行動療法に関する記事が続いたので今回は違う話題です。 リハビリ中に何気なく使っている言葉が、 実は患者さんによっては悪影響がある!…かもしれないというお話。 以前の記事でも「言葉の使い方」について言及したことがあります。 セラピストの言葉によってリハビリにどのような影響があるのか? について、論文を元に深掘りしていきたいと思います。 言葉のもつ力 イギリスの詩人が言うように、 言葉には患者を癒す効果も傷つける力もあります。 今回引用している論文の著者らは以下の