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慢性腰痛に最も効果的な治療とは?

「非特異的腰痛」(以下、腰痛)は、あらゆる疾患の中で最も多くの障害を引き起こしていると言われています。

最近の推計では、
成人の20~56%が1年以内に腰痛を経験し、ほとんどの人が生涯のどこかで腰痛を経験することが示唆されています。

また、
腰痛は後期高齢者に最も多くみられ 、症状が4~6週間以上持続する場合には慢性化するリスクが高いことが示唆されています。

「最近腰痛くて」とぼやいている人が、職場にもちらほらいるのではないでしょうか。

こうした“明確な器質的障害のない腰痛“への治療法として推奨されているものはなんでしょう?

・患者教育
・運動
・徒手療法
・鍼治療

標準的な治療は上記のような感じです。

しかし、
これらの治療法が長期的な機能改善をもたらすというエビデンスは不十分である、というのが昨今の見解です。

その一方で、
腰痛に対する認知行動(CB)介入に関する知見が近年増加傾向であり、
「腰痛に対して利用可能な最も費用対効果の高い治療法の一つである」とまで言われています。

今回はシステマティックレビューを元に、その概要を整理していきます。


研究概要

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4526658/

本システマティックレビューには23の研究が含まれ、合計3,359人が参加した。

●目的

腰痛に対する認知行動療法的介入が、
待機者/通常ケア(WL/UC)および、ガイドラインに基づく積極的治療(GAT)と比較して効果的か否かの検討。

●認知行動介入の方法

・グループベース(n = 10)
・個人(n = 9)
・複合(n = 4)

●介入期間

1~52週間(平均8.4週間)で、総接触時間は20分~91時間(平均19時間)

●治療提供者

・心理士(n=8)
・理学療法士(n=6)
・多職種(n=5)
・GP(n=1)
・自己指導(n=3)

結果


疼痛に対するCBの効果のフォレストプロット

長期的なQOLに対するCBの効果のフォレストプロット

長期的な機能障害に対するCBの効果のフォレストプロット

ほぼすべての研究において、
臨床的に意味のある効果が認知行動療法的介入に認められ、ガイドラインに基づいた治療と比較してもその大部分において優れていた。

障害については平均54週間、疼痛については平均49週間追跡されており、
長期間にわたってその効果が維持されている。

<ガイドラインに基づいた治療>
典型的な理学療法を含み、教育、家庭や臨床での運動、いくつかの受動的な方法(手技療法を含む)が混在

結論

腰痛患者に対する認知行動療法的介入は、
治療期間や年齢を問わず、無治療やガイドラインに基づく積極的治療と比較して、
疼痛、障害、QOLに対して長期的に有益な効果をもたらす。

まとめ

この論文は、
徒手療法や運動よりも認知行動療法でのアプローチの方が患者にとって有益である可能性を示唆しています。

単なるマッサージが腰痛に効果的だと思う理学療法士は少ないでしょうが、
いささか衝撃的な内容ですね。

そしてもう一つ注目したいのは、
認知行動療法的介入をした治療者の中に理学療法士が含まれている、という点です。

つまり、
僕ら理学療法士にもできることはあるってことです。

心理的介入が効果的だからと言って、
臨床心理士や公認心理士に丸投げすれば良い、というわけではないんですね。

僕が心理学の勉強をしようと思った一つのきっかけがここにあります。

解剖生理学の知識ももちろん大切なんですけど、
それだけでは太刀打ちできない現場に僕らは日々立たされているのかもしれません。

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