質問060:テイクバックは早く引く? 打点をうまく合わせるには?
回答
▶私のスマホだけメールを送れない?
「リズム合わせ」は、「単純作業」の繰り返しを通じて、体が自然と集中状態に入っていくツールです。
ツールですから、基本的には誰が使ってもおおよそ同じ効果が出ます。
「私のスマホだけメールが送れない!」ということはありません。
ぜひご活用いただき、思考ではなく、感覚的にプレーするテニスをお楽しみください。
不具合があった場合はいつでも下記「テニスゼロ・カスタマーセンター」へお問合せをお願いいたします。tenniszero.note@gmail.com
▶テイクバックのタイミングを意識するのは「大問題」
さて、お問い合わせいただきました内容についてお答えします。
意識してバウンドに合わせてテイクバックしているのならば「大問題」ですけれども、無意識的な引き方をしていて、たまたまテイクバックがバウンドのタイミングと同時なのであれば、「OK」です。
体は、ボールに集中していれば、テイクバックのタイミングを、その人が持っているスイングリズムに合わせて、自動的に調整しますから。
ですからロジャー・フェデラーも、ラファエル・ナダルも、ノバク・ジョコビッチも、みんなラケットを引き始めるタイミングは違います。
なのにむしろ、「対戦相手が打った瞬間にラケットを引き始める!」「相手から飛んできたボールがネットを越えたらテイクバックは完了させる!」などと、頭で考えて、型にはめてやろうとすると、上手くいきません。
「大問題」になります。
常識的なテニス指導では、よくありがちな技術的アドバイスではありますけれども……。
そのようなやり方では、まったく上手くいかなくなる理由は後述します。
▶自分が打った「飛んで行く」ボールから見る
ではテイクバックで引き遅れないようにするには、どうすればいいか?
対戦相手が打つ瞬間、もっといえば自分が打ったボールが飛び出していく瞬間から、ボールをよく見ておくようにしてください。
そうすれば(現実に対するイメージがズレていて、飛んでくるボールに突っ込むような誤った動き方でもしない限り)、遅れることはなくなるはずです。
後ほど詳述しますけれども、「飛んで来る」ボールから見始めようとするから、時間が足りなくなって引き遅れるのです。
▶大事なのは「打点」ではなくて「打時」
次に打点についても、回答はテイクバックの引き遅れ問題と同様です。
意識して「もう少し前で打ちたい!」と頭で考えていると、打点はやはり合わなくなるのです。
もっと根源的なことを言ってしまえば、インパクトで大事なのは「打点」、すなわちどこで打つかの「場所」というよりも、「打時(だじ)」、つまり、いつ打つかの「時間」なのです。
「打時(だじ)」というテニス用語はテニスゼロによる造語なので、一般的ではなく、耳馴染みがないかもしれません。
野球では「適時打(てきじだ)」などとも言いますけれど。
一般的にいう「打点(場所)」は、高い、低い、遠い、近い、前、引きつけるなど、毎回変わります。
ロジャー・フェデラーも、ラファエル・ナダルも、ノバク・ジョコビッチも、みんな打点は違うし、毎回変わりますよね。
ですが「打時(時間)」は、変わりません。
自分が「ここだ!」と感じる瞬間のタイミングにドンピシャ合わせて打てば、テニスでミスはしないと、「大発見コラム」でご説明したとおりです。
▶「打点」が変わるのは「無問題」。「打時」が変わるのは「大問題」
飛んできた ボールに対する、自分が「ここだ!」と感じる「打時(時間)」のタイミングに応じて、「打点(場所)」が、高くなったり、低くなったり、遠くなったり、近くなったり、前になったり、引きつけられたりと、変わります。
たとえば歩行で着地するタイミングについて、自分が「ここだ!」と感じている「瞬間」は、自覚するしないに関わらず、いつも変わりませんよね。
その着地する「場所」が、急いでいたり、のんびりしていたり、カーブしたりする状況に応じて、遠くなったり近くなったり右になったりと、毎回変わるだけです。
場所が変わるのは、問題にならない。
だけど着地するタイミングである「時間」がズレると、転倒するなど大怪我する「大問題」にもつながるのです。
▶ボールを見ていれば打点の位置は「勝手に改まる」
仮にご自身が、体に近くなってしまう打点を窮屈に感じているのであれば、先の引き遅れの対処と同じように、対戦相手が打つ瞬間、いえもっといえば自分が打つボールが飛び出していくところから、ボールをよく見ておくようにしてください。
ラリーが繰り返される最中、ずっとそうし続けます。
そうすればおのずと、その時々に応じた最適な「打時」のヒッティングポイントで打てるようになってきます。
結果として、より体の前でボールを捕える「打点(場所)」によるヒッティングも、必要に応じて、自然と増えるでしょう。
▶ラリータイムを「あまねく有効活用」
「終始」、ボールを見続けるのです。
簡単な手出しのボールでさえ、コーチの手元よりリリースされるボールから見ておかないと、打時がズレてしまいかねません。
注意すべきは、頭で考えて、引くタイミングや打点の位置を、調整しようとしないこと。
「テイクバックを早く引こう」や「もっと体の前で打とう」など、考えません。
よくよく時間経過を観察すると、自分がボールを打って、対戦相手のラケットに到達し、そこから打ち返されて、また自分の手元にボールが返ってくるまでに、もちろんショットのスピードにもよりますけれども、結構な時間があるはずです。
そのラリータイムを「あまねく有効活用」すれば、テイクバックで引き遅れたり、打点が窮屈になったりする(つまり「打時」を合わせられなかったりする)エラーは、「速度と距離の閾値」を超えない限り最小限内に収まるはず。
▶ ラリーで「慌てる」理由
ところが上手く打球タイミングを合わせられない多くのプレーヤーは、対戦相手から打たれたボールが飛んで来て、ネットを超えた付近から、「見始める」のです。
ですから「慌てる」のです。
ざっくりと計算すれば、仮に、対戦相手に打たれてからボールを見始めるとすると、往復するラリーのうちの、2分の1しか、見る時間に費やせなくなります(そうならざるを得ないリターンは、だから余裕を感じにくい)。
ボールが近づいてきてネットを超えたあたりから見始めるようだと、往復するラリーのうちの4分の1しか、見る時間に費やせなくなるから、慌てる対応にならざるを得ないのです。
▶ボールが「スッスと消える」
なぜ、見られないのでしょうか?
それこそ、「バウンドに合わせてテイクバックしよう!」や「打点を体の前に取らなきゃ!」など、頭のなかで「考え事をしている」からであり、それが理由(原因)で見られなくなるのです。
私たちは「考えている」とき、同時にはよく「見えていない」のです。
考えているとき、よく見えていません。
考えているとき、よく聞こえていません。
考えているとき、よく感じ取れていません。
たとえばこのメール回答例の文章をある程度集中して読んでいる今、室内に「空調の音」が鳴っているかもしれないけれど、「聞こえていなかった」はずです。
それは文章を読む作業を通じて、「考えていた」からです。
だけどこうして指摘されると、よく「聞こえる」ようになった。
その瞬間、今度は空調の音をよく聞きながら、同時には先ほどと同じようには文章を「読めなくなっている」はずです。
それと同じようにテイクバックや打点についてプレー中に「考えている」とき、行き来するボールが、よく「見えなくなる」のです。
よく見ているつもりでも、ラリー中にスッスとボールが消えるのです。
▶ボールを見ている「つもり」
「ボールならいつも見ているよ!」
多くのプレーヤーがこう言うのですけれども、打ち方やフォームなどについて考えている以上は、見ている「つもり」になっているだけというのが、先ほど確かめたとおりの現実です。
考えるのをやめれば、ボールは見えるようになります。
すなわち、ボールに対する高度な視覚的集中が叶うようになる。
たとえばボールの回転やフェルトの毛羽が見えていたり、遠近法の科学的観点から、自コート側にあるボールは大きく目に映り、相手コート側へ遠ざかるにつれ、小さくなっていく見え方になったりします。
ボールのサイズがみるみる変化し続けるダイナミズムが、臨場感をもって楽しく感じられるようになる。
ずーっと見えていないと、そのようなボールのサイズが刻一刻と変化し続けているさまに、気づけないのです。
▶湧き上がる思考を「止める効果」
先ほど、「考えるのをやめれば、ボールは見えるようになる」とお伝えしました。
さらっと申し上げましたけれども、もちろん考えるのをやめるのは、簡単ではありません。
考えるのをやめようと「考える」からです。
「ボールをよく見る」とは、とめどなく湧き上がってくる思考を「止める効果」と言い換えても、よいかもしれません。
自コート側に飛んで「来る」もっともっと手前の、相手コート側へ飛んで「行く」ボールから、(考え事なしに)見るようにすると、感じられる時間的な余裕はずいぶん違ってくるでしょう。
そうすると、体は目で見た状況に応じて自動的に、その時々にふさわしい最適なリアクションを行ないます。
▶体のリアクションを「引き出す」
「頭で考えずに、体が自動で動くはずがない!」などと、お考えでしょうか?
いえ。
転倒しそうになったら、「腰をかがめて、片足を一歩踏み出すとともに、両手を斜め前へかざしながら転倒ダメージをガードしなきゃ!」など、いちいち頭で考えなくても、「体はリアクションしてくれる」ではないですか。
しかも素早く、状況に応じた最適なフォームになりつつ、ベストのタイミングとバランスで体は態勢を立て直します。
だからといって「絶対に転ばない(ミスしない)」などと、言いたいわけではありません。
先述したとおり「速度と距離の閾値」を超えて反応し切れなければ、つっかかって転ぶ(ミスする)ことも人間ですから当然あります。
その体によるリアクションを、「する」のではなく、「引き出す」というのが、素早く、状況に応じた最適なフォームになりつつ、ベストのタイミングとバランスで、テニスを上手くプレーするためのポイントなのです。
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