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テニス上達メモ099.「ラケット破壊」は天使か悪魔か。テニスだけで多発する「本当の理由」
▶ミスしたあとの「素振り」の狙い
ミスショットをしたあとに、素振りをするプレーヤーがいます。
プロの試合を見ていても、そういうシーンをよく見かけます。
ただしやる「狙い」によっては、効果が180度違ってきます。
▶フォームの修正、確認は逆効果
一般プレーヤーによくありがちなのが、ミスショットのフォームを修正、正しいスイングの確認をしようとして行なう素振り。
でもこれは、逆効果です。
もちろん、フォームを意識するからです。
テニスのスイングに限らず意識すると、私たちの動作はぎこちなくなります。
そもそもフォームの修正などというのは、試合中に(練習中でも)、できるものではありません。
日頃さんざん練習してきたのだから、試合中に一振りしても、ほとんど何も変わらないでしょう。
▶心を変えるには「体に働きかける」のがコツ
一方ではそのワンスイングで、ミスショットの悪印象を振り払う素振りは有効です。
その一振りでネガティブな思いを断ち切るイメージです。
メンタルというのは、頭の中だけでいくら「ミスを気にしない」「前向きにいこう」などと考えても、なかなか思いどおりにコントロールできません。
体による具体的な行動を通じて、心に働きかけるのが効果的です。
こちらでご紹介している「アズイフの法則」と同じです。
幸せは、「なる」のではありません。
幸せになりたかったら、幸せを「する」のです。
▶「産むより案ずるは難し」
イライラしたり、ソワソワしたりする場合は、体を使って掃除などすると、頭がスッキリします。
出産を待つ男性は、分娩室の前を行ったり来たりします。
あるいは心で「緊張感を高めよう」と思っても難しいけれど、体をグラグラ揺れる吊り橋へ連れていったら、一発で心が引き締まる話と同じです。
「案ずるより産むが易し」の教えのとおり、体による働きかけで、心が具体的に変わります。
「体験」に勝る学びはありません。
言い換えれば、「産むより案ずるは難し」。
頭の中だけで考えてどうにかしようと企むのは、「産む」以上に、とてもとても難しいのです。
▶エキジビションで「キレる選手」はいまい
まったく推奨される行為でありませんけれども、「ラケット破壊」もその役割りを担う。
決して擁護するつもりはない上でお伝えしますと、ラケット破壊は「かなり真剣にプレー」していないとできません。
和やかな雰囲気のなか催されるエキジビションマッチで、「プロがキレた」という話は聞いたためしがありません。
あったらむしろ、可笑しみを誘うでしょう。
まるで「兄貴」です。
▶あのフェデラーでさえ、耐え切れなかった
しかも「ラケット破壊」は対戦相手への怒りというよりも、不甲斐ない自分のプレーに対する発火です。
それが証拠に、いつかの全豪でグリゴール・ディミトロフがアンディ・マリーからリターンエースを奪われた例などはあったにせよ、相手に決められてラケット破壊に及ぶ蛮行は少なめ。
あのロジャー・フェデラーでさえ、自ら犯した不甲斐ないミスには耐え切れない(時代があった)のです。
相手のエースであろうと自分のエラーであろうと、結果は同じ1ポイントの失点。
ですがおおよそ自分が犯したエラーのときに発火します。
その理由は、あの、打った瞬間の打球タイミングを外した「違うッ!」という感覚が、プレーヤーにのっぴきならない「衝撃」を与えるからです。
▶テニスだけラケット破壊が多発する「本当の理由」
綿貫敬介プロをはじめ多くの識者が言うとおり、確かにテニスは個人競技で、オフコートコーチングの試行はあるにせよオンコートコーチングはご法度だからプレーヤーは孤独であり、ストレスをチームスポーツのように分かち合えないためラケット破壊に及ぶという理由も一理あるでしょう。
しかし、それだけではやはり十分ではありません。
将棋は対局中に第三者による助言が禁止されている個人競技ですけれども、悪手を打ったからといって将棋盤をひっくり返すなどは、あまり聞いたためしがありません。
バドミントンやスカッシュなどはテニスに比べて簡単にラケットを折れそうですけれども、テニスに比べて破壊は圧倒的に少ないでしょう。
テニスの場合はやはり、打った瞬間の打球タイミングを外した「違うッ!」というあの特有な感覚が、プレーヤーにのっぴきならない「衝撃」を与えるのです。
野球やほかの競技などに、破壊は皆無とは言いません。
しかしあの衝撃が「特有」だからこそ、テニスにだけラケット破壊は著しく多いのです。
▶ゲーム前の素振りで心をほぐす
そして最初に取り上げた素振りも、エースを取ったあとにやるというよりも、決まってミスしたあとに行われます。
ゲームが始まる前のコイントスの時などにする選手もいますけれども、あの素振りはどちらかというと、体を動かして心の緊張をほぐしたりするのが狙い。
先の分娩室の前を行ったり来たりする男性と同じ狙いです。
ゲーム前の素振りは、決してフォーム確認のためなどではありません。
▶作戦を「考えない」ための一振り
あるいは試合前にはいろいろ作戦立案してきたけれど、ゲーム開始となったら何も考えずにプレーするための、思考を「振り切る」役割も素振りは担います。
作戦立案も、プレーに入る前までであれば、「考える」のもアリなのでしたね。
しかしいざゲームが始まったらボールに集中。
作戦であろうと何であろうと、何も「考えない」のです。
▶舌が「天津飯」になって、作戦は意識しなくても実施される
作戦はすでにイメージされているため、改めて変更しない限りは、それが状況に応じて「考えなくても」実施されますか。
今日のお昼は中華にしようと作戦を決めたら、やっぱりイタリアンにしようと変更しない限り、脳は仕事に集中している最中も、中華の情報をバックグラウンドで検索し続けるのと同じです。
舌が天津飯になるのです。
そのイメージができたら、たとえより豪華でも、ステーキやお寿司を体は受け付けません。
ゲームが始まる前の素振りは、事前に作戦立案していたとしても、いざプレーが始まったらボールに集中するための、思考を振り切る一振りです。
サラリーマンなら中華飯店をネット検索したら、あとは仕事に集中するために、ブラウザのウインドウは閉じるワンクリック(あるいはAlt+F4)です。
▶考えないようにしようとすると「考える」
やはり頭の中だけで「考えないようにしよう」と考えても、「青い象は、絶対の絶対の絶対に思い浮かべないようにしてください」と同じで、考えないようにすればするほど、考えてしまいます。
「産むより案ずるは難し」
ですから、頭で考えるのではなくて、体に働きかける具体的なアクションで思考を振り切るのです。
「食べすぎないようにしよう」「早食いを改めよう」などと頭で考えても、口の中に残っているうちに次のおかずへお箸が伸びるようであれば、箸置きを使う具体的な体によるアクションへ落とし込む「一石五鳥」の話と同じです。
▶人間だもの
ラケット破壊とまではいかなくとも、自身の不甲斐ないプレーで遣る瀬無いとき、その思いを断ち切る素振りを取り入れてみてはいかがでしょうか。
ただしフォームを意識するのではなく、その一振りで思いを断ち切ります。
テニスに限らず、やり切れない気持ちになることだってあります。
私たちは人間です。
▶自分の中に「悪魔」がいる
最後に、決して推奨される行為ではないものの、確かに「ラケット破壊」後に、吹っ切れる(場合もある)のです。
たとえば2021年全豪オープン準々決勝。
「ラケットを折ったあと、集中力を取り戻した。それから状況が変わり、いい流れが来た」とノバク・ジョコビッチ。
「こんな気分転換の方法は推奨されない。誇りにも思わない」
「自分の中に戦わなければならない悪魔がいる」
このように述懐します。
ビッグ4の一人アンディ・マリーも、ラケット破壊後に吹っ切れるタイプの選手だと顧みます。
▶「罪は罪でも人は憎まず」
誰もが聖人君子ではありません。
非は認めつつも、選手によっては「事情がある」。
「罪は罪でも人は憎まず」、それが「自己肯定感」です。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero