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質問108:打点が体に近すぎる。遠心力を使って威力あるボールが打てない

私の最大の悪い癖は打点が体に近すぎることです。
そのため遠心力がうまく使えず、腕が縮こまって窮屈そうに打っているので威力あるボールが打てずに悩んでおります。これはスクールに入った10年前からなかなか改善されず、コーチからは毎週のように「ほらまた打点が近い!」「ボールからもっと離れて」といわれ続けております。僕もいい加減わかっているのでストロークのたびに「左手を右方向に伸ばしてボールをつかむように距離をとる」とか、
「右足を引いて打点と距離をとる」とか、「空振りするつもりで遠くにあるボールをうつ」とか、コーチにアドバイスされたことや雑誌で読んだ処方箋を試しているのですが、意識したときは一時的に治るのですが、意識しないとまたすぐ戻ってしまいます。
 
困ったことに、初心者ではないのでこの腕が縮こまったスタイルである程度のボールがコントロール良く打てるようになってしまったため、大幅な改造がなされず現在まできてしまいました。
 
トッププロやコーチらがゆっくり軽〜くスイングして威力あるスピードボールを打っているのにはインパクトとラケットヘッドの遠心力が関係していると思いますが、どうすれば改善できるでしょうか。
 
テニスゼロ流にいうと、フォームを気にせず、ひたすらボールに集中することで理想のフォームは自然に現れる、とのことですが、私が10年悩みに悩んでいるこの打点の距離感も改善されるのでしょうか?
 
いい矯正法がありましたらご教示下さい。

回答


▶距離感を意識すると「行ったり来たり」すれ違う


距離感を上手く合わせる上で大切なポイントは、距離感を合わせようと意識しないことです。
 
頭で「ボールに近づきすぎないようにしよう」「ラケットのトップ側で打つつもりで打とう」と考えると、今度は遠ざかりすぎます。
 
それを調整しようとして、また近づきすぎるという行ったり来たりの繰り返し。
 
あみんの『待つわ』ではないけれど、「行ったり来たりすれ違い、あなたとボールの距離」という相関です。
 
距離感が合わないプレーヤーは、距離感を合わせるために調整しようと意識しているのが特徴です。

「左手を右方向に伸ばしてボールをつかむように距離をとる」「右足を引いて打点と距離をとる」「空振りするつもりで遠くにあるボールをうつ」

そういうことをしていると、「いつかどこかで結ばれるってことは、永久(とわ)の夢」です。
 

▶「最長距離」から合わせ始める

 
距離感を合わせるには、相手が打つ瞬間のボールもよく見てください(そのシーンだけを強く見るのではなく、終始見続けます)。
 
ボールが手元に近づいて来てからだけではなく、相手のインパクトから見て距離感を合わせ始めます。
 
プロも「ボールからこれくらい離れよう」「もうちょっと近づこう」など、頭で考えて打点との距離感を調整しているわけではありません。
 
相手のインパクトを見て「自分から最長距離の地点から合わせ始める」から合うのです。
 

▶フライを「途中」から見て捕球するのは難しい

 
たとえば野球のフライを受ける外野練習で後ろを向いておくとします。
 
打球音が鳴ってから振り返り、フライの途中から見始めて捕球するのは難しいでしょう。
 
バッター、あるいはノッカーのインパクトから見ているほうが、テニスよりも飛距離も高さも随分あるにも関わらず、ずっと簡単に距離感を合わせられます
 
といっても、意識して合わせる必要はありません。
 
相手のインパクトを見ていれば、後述するイメージのズレがない限り、体が適切な距離感を測ってくれます。
 
むしろ事前に「ボールに近づきすぎないようにしよう」「ラケットのトップ側で打つつもりで打とう」などと意識すると、相手のインパクトが見えなくなります
 

▶打点を遠くしてもボールスピードは上がらない

 
ボールスピードが上がらないのは、ボールに近づきすぎてスイングの遠心力が使えない、からでは「ありません」
 
打点を体から離してヒッティングポイントを10数センチ遠くしてみても、ボールスピードはほとんど変わりません。
 
変わらないどころか、ラケット面の真ん中を外すフレームショットになったり、体が伸び切るアンバランスな打ち方になったりして、ボールスピードはかえって落ちると思います。
 
恐らくご自身も試してみて、上手くいかなかったのではないでしょうか?
 
ですから「トップ寄りで打てば遠心力が効いて、速いボールが打てる」などというよくある解説は、疑問符がつくところです。
 
 

▶ゆっくり軽~くスイングして威力あるスピードボールを打つ「方法」


ボールスピードの上がらない原因は遠心力が使えないからではなくて、打球タイミングが合っていないからです。
 
身体バランスが崩れて、窮屈感があるくらい近づきすぎる場合は、スイングエネルギーそのものが弱い原因が考えられますけれども、それは伸び切り感を覚えるくらい遠すぎる場合も、やはり同じようにスイングエネルギーが弱く、スピードは遅くなります。
 

「トッププロやコーチらがゆっくり軽~くスイングして威力あるスピードボールを打っている」

その理由は、打球タイミングがぴったり合っているからです。
 
打球タイミングが合うと、スイングエネルギーを余すことなくボールに伝えられます

ですからスコーンと突き抜けるような当たりになり、インパクトの「手応え」はありません。
 
逆に打球タイミングを外すと、エネルギー保存則にしたがい手首やヒジに衝撃が及んでガツッと「手応え」が響きます
 

▶「テニスエルボー」の原因も打球タイミング

 
テニスエルボーになったりするのは、フォームが悪いからではなくて、これもタイミングのズレた打球回数が多いからです。
 
また打球タイミングがズレると、筋力的に不利なフォームにもなってしまいます。
 
あるいはテニスのやりすぎや、相手の強いボールを受けるのが、テニスエルボーになる理由でもありません。
 
それが証拠に、アマチュアの比ではない相手の強いボールを受けるプロは、ほかの原因で痛めるヒジの怪我はあっても、毎日のようにテニスをプレーしてもテニスエルボーにはなりません
 
それは、体が屈強だからなのではなくて、打球タイミングが正確だからです。
 
ですから、腕立て伏せが10回できないような線のか細い女子選手であっても、世界のトップレベルで毎日のように戦いながら、テニスエルボーになったりはしないのです。
 

▶フレームとストリングの「反発性」を最大に使う

 
打球タイミングがぴったり合うと、ラケット面の真ん中(スイートスポット)でボールを捕えられるため、フレームとストリングとの反発性が最大化し、スイングエネルギー保存則と相まって、なおさらゆっくり振っても飛び出すボールスピードは速くなります。
 
ボールをその場でぽんぽんとラケット面で突き上げる、簡単なラケッティングをお試しください。
 
フェイスの先端側で打つのと、真ん中で打つのとでは、弾み方がまったく違うと分かります
 
フレームとストリングが飛ばしてくれるから、鋭いショットを打つのに力も必要ありません。
 
力が要らないといったら語弊があるかもしれませんけれども、テニスは力が要らないスポーツだから、オープンスキル系の対戦型競技であっても、老若男女が一緒にプレーできる稀有な生涯スポーツと言えるのです。
 
私はこれを、「テニスの素晴らしい価値」だと思っています。
 

▶「良薬口に苦し」「麻薬口に甘し」


お試しになった「左手を右方向に伸ばしてボールをつかむように距離をとる」「右足を引いて打点と距離をとる」「空振りするつもりで遠くにあるボールをうつ」などを試して、「10年悩みに悩んだ」というのもうなずけます
 
そういったフォームや打ち方を意識させる「コーチにアドバイスされたことや雑誌で読んだ処方箋」が、距離感を喪失させる最たる理由だからです。
 
フォーム矯正は、表面的な見た目を扱うから分かりやすいため、納得するから錯覚します
 
しかし、「麻薬口に甘し」。
 
そのせいで、多くのテニス愛好家がそのような指導内容に「甘み」を覚え、何年も、何十年も悩み続けている、そして今後もずっと悩み続ける、というのが実情です。
 

▶「現実に対するイメージのズレ」がある根本原因

 
ボールから離れようとしているにも関わらず、ボールに近づきすぎてしまうのですよね。
 
言い換えれば、食い込まれているのだと思います。
 
この根本的な原因は、先に少し触れました「現実に対するイメージのズレ」が、ご自身の中にあるからです。
 
具体的に言うと、ボールが「これくらいのところに飛んでくるだろう」とご自身がイメージするよりも、もっと飛んでくるから、詰まった打ち方になっ
てしまうのです。
 
この場合は、相手のインパクトを見て最長距離から合わせようとも、距離感はどうしても合いません。
 
私たちはイメージの力にはあらがえないからです。
 
頭ではボールに近づきすぎると分かっていても、体は誤った動き方をしてしまうのです。
 
それが「10年悩みに悩んでいる」理由です。
 

▶ゆっくりなボールにも食い込まれるのでは?


相手のボールスピードが速いから、打点が食い込まれるのではありません。
 
恐らくゆっくり飛んで来るボールにも、毎回食い込まれるでしょう。
 
あるいはむしろゆっくり飛んでくる高い弾道のロブなどでは、バウンドしたら頭の上を越されたり、そこまでいかなくても図らずも、力の入りにくい高さの打点で打たされたりしないでしょうか
 
ほかにも、ゆっくり浅く飛んで来る「チャンスボール」なのに、打点に近づきすぎてミスするなど。
 

▶症状には「手をつけない」が鉄則


ですから、相手のボールスピードが速いから、食い込まれるわけではありません。
 
これらはすべて、イメージがズレているために起きている「症状」です。
 
治すにあたって、症状には「手をつけない」が鉄則
 
ボールに近づきすぎるから意識してボールから離れる、ラケットの先端側で打とうとするなど、現れている症状に直接的に手をつけようとすると、「真の原因(イメージのズレ)」に気づけなくなってしまうのです。
 
「麻薬口に甘し」です。
 

 ▶過食症に「食べるな」と言うと、死ぬほどつらくなる

 
高熱になるのはウイルスなどと戦ってくれている精緻な体による防衛反応なのに、発熱の症状を風邪薬で安易に抑えようとすると、体はウイルスにやられてしまいます。
 
「安易に」と但し書きするのは、高熱により他所にさらなる悪影響が及ぶ場合は、この限りではないからです。
 
とはいえ私の知る限り、現代人はケミカルな薬に頼りすぎているきらいがあり、そのせいで体の免疫バランスなどが崩れ、不調をきたしているように見受けられます。
 
あるいは拒食症や過食症はストレスが原因なのに、食べない人に無理やり食べさせようとしたり、食べすぎる人に食べるのを我慢させたりするのは、原因となっている「ストレスを増すばかり」で、まったくの逆効果というわけです。
 
なのでボールに近づきすぎる症状が見て取れるからといって、「左手を右方向に伸ばしてボールをつかむように距離をとる」「右足を引いて打点と距離をとる」「空振りするつもりで遠くにあるボールをうつ」などの処方箋を試すと、かえってひどくなるのです。

▶練習では打てるけど、試合になると打てなくなる


また練習のときは調子よく打てるのに、試合になると打てなくなるというプレーヤーも少なくありません。
 
それは、イメージは「揺らぐ」からです。
 
練習でポイントを意識せずにプレーする場合と、試合でポイントをかけてプレーする場合となどでは、イメージが変わります。
 
またサーフェスの違いや、対戦相手の体格、風の有無、あるいは相手が打った1球前の印象によってすら、イメージはグラグラと揺らぐのです。
 

▶小さな子どもとラリーするとき、どこに構える?


たとえば体格の小さな子どもとラリーするとき、コート内で構えたりしませんか?
 
しかしテニスボールはガスにより内圧が高められていて、コアを形成するゴムの弾力性によるバウンド以上にもっと弾みます。
 
ですからノンプレやペコ球で練習するのは、「現実に対するイメージのズレ」を拡大するので危険
 
プレッシャーライズドボールであれば小さな体格の子どもが打っても、サービスライン付近でバウンドすればベースラインにおおよそ到達するから、コート内で構えていると対応に苦慮するというわけです。

▶「基準」を実装すれば、もう間違えようがない!

 
コップに入った水の量を推し量るとします。
 
のどがカラカラのときは「半分しかない」と少なく感じますし、お腹がタプタプなのに飲み干さなければならないときには「まだ半分もある」と多く感じます。
 
そのせいで、当て推量だと答えにバラツキが出ます。
 
しかしそのコップに入った水が何ミリリットルなのかは、ビーカーなどメモリのついた「基準」を用いると、もう間違えようがありません
 
あとは水を注ぐ水面の高さに「集中」するだけです。
 
『テニス・ベースメソッド』~あなたのテニスがドラマチックに改善するたったひとつの方法~
 
脳内に「基準」をインストールして、相手の返球が速すぎたり遠すぎたりと閾値を超えない「追いつくボール」の場合は、いつでもぴったりの打点に入り、ジャストのタイミングで打てるようになります。

冒頭であみんの『待つわ』を引いたのには、もちろん理由があります

一般プレーヤーの多くが、相手の返球が速すぎたり遠すぎたりして困るというよりも、「ボールに追いつきはするのだけれどミスをする」対応に困っています。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero