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質問031:ゆっくり振ってるのに、飛びがいいのはなぜ?

かなりうまい人の試合を見てると、ボレーが物凄く威力があったり、ストロークはゆっくり振ってるのに、ボールの飛びがいいのはなぜですか?
それを出来るようになるにはどうしたらいいですか?

回答


▶最大の鍵は「打球タイミング」

 
ご質問内容のようなボールが実現するための要素は、2つです。
 
ひとつは、反発係数が最大化するラケット面のど真ん中でボールを捕えること
 
もうひとつは、打球タイミングをドンピシャで合わせること
 
この両要素の精度が高ければ高いほど、おっしゃるようなボールが飛び出します。
 
もう少し詳しくいうと、ラケット面のど真ん中で捕えられるかどうかも、打球タイミングの精度によりますので、空間認知の細かな話は脇に置いておけば、最大の鍵は「打球タイミング」にあると言って差し支えありません(※注1)。
 

▶フェデラーは「5」のタイミングで打つ

 
ところで一口に打球タイミングといっても、タイミングは、「合う」か「合わないか」の2とおりだけではありません。
 
下記をご覧ください。
 
(早い)←1 2 3 4 5 6 7 8 9 10→(遅い)
 
この1~10の間なら、どこで打ってもミスはしないものとします。
 
1で打っても10で打っても、一応相手コートにはミスせずボールが返る。
 
エラーが発生するのは、打球タイミングが早すぎる−1や−2、打球タイミングが遅すぎる11や12になった時のみです。
 
だけど上級者になればなるほど、「5」付近のタイミングで打てます。
 
これが、力を入れずにゆっくり振っても、球威・球速のあるボールが飛び出す現象の正体です。
 
初級者は、−15や20などで打つケースが多い(=打球タイミングを外してミス)。
 
中級者になると、1~3や7~10が多くなります(=相手コートには返るけど、スピードやコントロールがいまひとつ)。
 
そして上級者は4~6で打ち、ロジャー・フェデラーは常に「5」に合わせる精度が著しく高いということです(=スピードとコントロールが高次元)。

https://youtu.be/zL1cyNbgM7I

▶ラケット面の「向き」を意識しても意味がない


打球タイミングの1や2のズレは、外から見ていてもほとんど分かりません(※注2)。
 
ですから見かけ上は同じようなスイングに見えても、一方は速いボールになったり、一方は遅いボールになったり、一方はミスしたり、というさまざまなバリエーションがテニスコート上では現れます。
 
また付け加えると、ゆっくり振って球威・球速のあるボールを打つには、インパクトの瞬間にラケット面の向きが、地面に対して垂直になっていると有効的ですが、ラケット面の向き(傾け具合)など「1000分の4秒」と言われるインパクトの瞬間に、意識して調整できるものではありません(※注3)。
 
そうではなくて、ドンピシャの打球タイミングで打ったら、ラケット面の向きは「垂直になっていた」というのが実際です。
 
ですから、いくら「インパクトで垂直なラケット面を作りましょう」「そのためには手首を固めて振りましょう」などのフォームを意識させるアドバイスを採用しても、無効なのです(※注4)。
 
「ネットしたのは、ラケット面が下向きだったからだ」「バックアウトしたのは、ラケット面が上向きだったからだ」という指摘の誤解。
 
テニスコーチは言います。
 
「ですからそうならないように、インパクトの位置で垂直のラケット面を作ってから、そのまま引いてそのまま戻しましょう!」
 
疑問符がつかないでしょうか?
 
飛んでくるボールがさまざまなのに、そんな一律のスイングなど、できるはずがありません。

全部が全部、同じフォームで打てるのだとしたら、それはもう「戦うテニス」というよりも、お膳立てされた舞台で披露する「お遊戯会」です。
 

▶「きれいなフォーム」は主観・感想

 
打球タイミングは「感覚」です。
 
この感覚を研ぎ澄ませてコンスタントに「5」で打てるようになる精度向上が、テニスが上達する本質です。
 
決して「いいフォーム」「きれいなフォーム」で打つことではありません(「いい」や「きれい」などの評価は主観・感想にすぎません)。

▶注釈まとめ・「ライジング」は球威・球速を上げる本質ではない 


※注1
もちろん、相手ボールの勢いがまだある「ライジング」で捕えるのも、速いボールを実現するひとつの手段です。
 
しかし、本質ではありません。
 
バウンドの上がり際を捕らえるライジングで打っても、打球タイミングが2や9ではやはり飛び出す球威・球速は衰えるから、「打球タイミングありき」なのです。
 
ライジングの強みはどちらかというと、ボールの「速さ」というよりも、返球タイミングの「早さ」が活きるショットと言えるでしょう。
 
※注2
打球タイミングのわずかなズレは、見た目には分かりませんが、「音」を聞けば一発で分かります。
 
プロのインパクト音は、ゆっくり振っても「スパーン!」とコートに響き渡るのに対し、初中級者のインパクト音がフルスイングしても「ボコッ」と鈍いのは、打球タイミングの差異が起因しています。
 
また外から見ても分かりませんが、プレーヤー本人には打球タイミングのズレがあからさまに分かるから、打った瞬間には、そのショットがバックアウトするかネットミスするか、結果を見なくても分かります。
 
結果を見なくても分かるから、ボールに集中できなくなる原因にもなっています。

打球タイミングは「間違えてもOK!」だから、最後まで集中し続ける持続力が大事です。
 
※注3
インパクトの瞬間に、ラケット面が上向きになったり下向きになったりすればするほど、打球方向に対するインパクトのエネルギーが逃げやすくなり、反発係数の低下を招きます。
 
ぶつかるエネルギーが最大になるのは「正面衝突」というイメージです。
 
※注4
「無効」どころか、フォームを意識する、させると、ボールへの集中力が下がって余計に打球タイミングが合わなくなる「逆効果」になります

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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