質問001:鋭いボールが打てないのは、力がないから?
回答
▶ジュニアプレーヤーの打球が鋭い理由
鋭いボールが打てないのは、力がないからではありません。
それが証拠にジュニアのトッププレーヤーたちは、線のか細い体から目の覚めるようなショットを連発させます。
なぜ彼ら、彼女たちが、大人ほどの筋力は備えていないのにそのようなショットが打てるのかというと、「打球タイミングがピッタリ合っているから」なのです。
▶スイングエネルギーとラケット反発性との相乗効果
なぜ打球タイミングがピッタリ合うと、ショットが鋭くなるのでしょうか?
スイングエネルギーのロスがないからです。
ラケットを振ったら振ったぶんだけ、(ほぼ)余すことなくボールに伝わります。
それに加えてフレームとストリングの反発性が最も高まるラケット面真ん中のスイートスポットでボールを捕えられるため、力を入れなくても(むしろ力が抜けていたほうが)、鋭いショットになるというわけです。
ボレーなどは、その影響が顕著に見て取れます。
ストロークに比べてさほどラケットを振らなくても鋭いボールが射出されるのは、ドンピシャ合った打球タイミングに由来するスイートスポットでの捕球精度が高いからだと説明できます。
▶テニスは力のいらないスポーツ
ですからテニスは、いらないといったら語弊がありますけれども、力のいらないスポーツ。
それによって体力差の著しい老若男女が一緒にプレーできるのも魅力だし、お婆ちゃんシニアプレーヤーが若い男子学生をこてんぱんにする醍醐味も、面白みといえます。
▶着地タイミングを誤ると、ヒザから崩れ落ちる
逆に言うと、打球タイミングがズレるのが鋭いショットが打てない原因だと分かります。
それはあたかも段差をまたぐとき、足の着地タイミングがズレるとヒザから崩れ落ちかねないのに似ています。
着地時に、地面からの反力に対して体を支える力が逃げてしまって、エネルギーロスが大きくなるのです。
また足裏で地面を的確に捉えられずに足首をひねるさまは、テニスでいうスイートスポットを外したオフセンターヒットに似ていると形容できます。
▶面ブレを起こさない方法
着地タイミングを誤ると不都合が生じるのと同じように、テニスの場合は打球タイミグを外すとオフセンターヒットになり、フレームやストリングの反発性を十分に活用できません。
また面ブレも起こしますから、コントロールが定まらない原因にもなります。
これは、ラケット面の端で打ったら飛びにくい、ミスしやすいといえば、テニスプレーヤーなら誰しも合点がいくのではないでしょうか。
逆に言えば、打球タイミングがドンピシャだと、スイートスポットでの捕球精度が高まるから、面はブレようがないのです。
▶テニスを上手くプレーするための最優先事項
打球タイミングを外した場合に、ボールに対するスイングエネルギーのロスはあったとしても、「エネルギー保存の法則」に従います。
逃げたエネルギーは、ボールではないどこへ伝わるかというと、手首やヒジへの衝撃となって現れるのです。
ですから、打球タイミングを外すとガツッと腕に響きますし、面ブレも起こすからグリップが手のひらの中で回って、そのトルクが生み出す摩擦によりヒリヒリとするマメを作る原因にもなってしまいます。
つまりテニスにおいて打球タイミングというのは、鋭いショットを打つうえでも、怪我なく快適にプレーするにも、プライオリティ・ワンの要素と言えるのです。
▶フェデラーのこんにゃく打法
スクールのコーチやテニス上級者が、力を入れている様子もなくゆっくりスイングしているように見えるのに、飛び出すボールはなぜかものすごく速いというシーンを、ご覧になった経験はありませんか?
たとえばこちらでもご紹介しているロジャー・フェデラーの「こんにゃく打法」。
このようなボールが実現するのは、打球タイミングを合わせる精度が高いから。
そしてそのようなプレーは、「ボールに集中する」ことで可能になる話は後述します。
※「こんにゃく打法」は、脱力を「意識」するので、あくまでも練習として行なってください。試合本番では、脱力を「意識」するのではなく、ボールに「集中」することが大事だからです。
▶インパクトで「ギュッ」がいらない理由
力が抜けていたほうが、鋭いショットになると先述しました。
よく、力の入出力の話題に及ぶと、「グリップを握る力は抜いておいて、インパクトの瞬間だけギュッと握る」などと言われるけれど、そのようなギュッも必要ありません。
必要どころか不要です。
もちろんそれが、力む原因だからです。
ではなぜギュッが、常識的なテニス指導では推奨されるのかというと、インパクトでボールにパンチを与えたり、面を支えたりすることができるような錯覚をするからだと思います。
しかし、打球タイミングよく面の真ん中でボールを捕えるスイングそのものが、ボールに与える何よりも強烈なパンチになっているのだし、面ブレも生じないから、支える必要もないのです。
むしろ意識してギュッすると、せっかく加速してきてタイミングよくボールを捕えようとするスイングに、ブレーキをかけてしまいます。
よく言われる「押す」「運ぶ」などの意識も、同じようにスイングにブレーキをかけてしまいます。
その結果、打球タイミングが合わなくなるからスイートスポットを外し、鋭いショットにならないため、ますます力を入れようとする悪循環にはまりかねません。
そもそもスイートスポットでボールを捕えれば衝撃がないですし(スイングエネルギーはボールを鋭く飛ばすために漏れなく賄われる)、ラケット面がブレたりもしないので、ギュッしなくても面安定性は保たれるのです。
▶面を被せてトップスピン?
ラケット面の真ん中を外して打ったら、握力では支え切れない力が、手のひらに加わります。
それが証拠にトッププロでもたとえば、ストローク時に打球タイミングを外して面の下側で打ってしまった直後にはフェイスが被る様子を、秒間60コマを映す連続写真は捉えます。
それを見て読者が、「トップスピンは面を被せて打つ」などと誤解を生む可能性も、否定できません。
トップスピンストロークで面を被せて打ったら程度の差こそあれ、どんなにラケットを振り上げようとも、ボールはネットに引っかかります。
▶飛ばないのではなく、「飛びすぎる」問題
テニスを始めたばかりの初心者は、やりがちなのです。
テニスというのは、ボールが満足に飛ばないよりも、むしろ飛びすぎるきらいがあるために、いかに飛びを押さえるかが当初の課題となります。
飛ばせば飛ばすほど好成績につながりやすい野球のホームランやゴルフのドラコンとは、ここが大きく違うところ(ゴルフの場合はカップをオーバーする打ちすぎはありますけれども)。
そこでテニス初心者は、飛びすぎを押さえるために面をかぶせて打とうとするのだけれど、それだとボールはネットを越えないから、今度はラケットを極端に振り上げようとする不自然なスイングをやらかしてしまいがちです。
▶タイミングは「集中力」でドンピシャ合う
さて肝心の、ではどうやって打球タイミングをドンピシャ合わせるのか?
それが、ボールに対する集中力を発揮すると、叶えられます。
当然ですよね。
「打球」というのは球を打つわけですから、ボールに集中しないとタイミングは合いません。
集中力とは、たとえば虫眼鏡で太陽光を「1か所」に集めてエネルギーを高める力です。
エネルギーは他所から賄わなくても、すでに持っているのです。
分散しているそれらを、ただ集めればいいだけなのです。
光の焦点を集中させるからこそ、紙を燃やせるエネルギーが生み出されます。
「1か所に集める」のです。
▶フォーム指導が集中力を破壊する
ところが常識的なテニス指導で教えられるのは、一般的にはフォームです。
テイクバックを小さくする。
ヒザを曲げる。
打点を体の前にする。
つまりフォームに焦点を向けるため(意識を分散させるため)に、ボールに集中できなくなって、ドンピシャの打球タイミングとはなりにくくなってしまうのです。
鋭いショットを打ち放ち、なおかつ怪我なく快適にテニスをプレーするためのプライオリティ・ワンが、打球タイミングだと先述しました。
つまりボールに対する集中力を高めれば、テニスに関するほとんどの悩みは解決するといっていいくらいなのです。
▶鋭さは「相対的」
最後に、鋭さは「相対的」でもあります。
鋭いショットであったとしても、単調だと、対戦相手に慣れられてしまいかねません。
チェンジアップ的なボールも混ぜて、「緩緩急」「急急緩急」といったスピードの変化をつけるのも、相手に「鋭さ」を感じさせる要因です。
チェンジアップは、対戦相手の打球タイミングを外すための球種ですから、タイミングが命のテニスにとっては、使えるようになると効果的といえます。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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