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蔵出し映画レビュー『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

 

元の『ジュラシック・パーク』シリーズが三部作だったからか、『ジュラシック・ワールド』シリーズも三部作というつもりで作る側も見る側も思って見た『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』。

後半はそれなりに面白いと思える部分もあるにはあったけど、全体的に「何でこうなったかな?」とか「これ、違くない?」と思うシーンが多いシリーズ最終章だった。

確かに凶暴なギガノトサウルスとかアロサウルスとか出てて、後半は恐竜パニックになってたし、『ジュラシック・ワールド』シリーズのメインキャストだけでなくサム・ニールやローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムといった『ジュラシック・パーク』シリーズのキャスト、そしてどっちにも出ているB・D・ウォンと壮大な『ジュラシック・パーク』&『ジュラシック・ワールド』大同窓会になっている、という面白さはあった。

が、巨大イナゴ大発生とかエメリッヒ版『ゴジラ』みたいな小さい・中型恐竜が多いとか、それなりに新しいことをやりたかったんだろうけど、この新しい仕掛けに「コレジャナイ感」がムンムン。ことごとく裏目裏目に出ていて、これまでの『ジュラシック・ワールド』シリーズ(及び『ジュラシック・パーク』シリーズ)らしさが一番薄まってしまうという事態に至ってしまった。

さらには本作の売りである恐竜と人間の共存する世界観がもう一つピリッとしてない。その「恐竜と人間の共存する世界観」大喜利的なラッシュもできていなくはないが小ネタばかり。どうしても『インデペンデンス・デイ』や『シン・ゴジラ』みたいな政府全体取り組みみたいな必死さがなく、ニュース番組の海外トラブル映像集レベルばかりやってしまっている。コミカルさこさ出ているが、作品のダイナミズムさが削がれている。

それに、あんなADSみたいな装置があるなら、翼竜だけじゃなくて、他の恐竜にも適応できるんじゃないかとか余計なことをつい考えちゃう、というかアイデアが貧弱で詰めの甘さを露呈している。

中盤からジュラシック・ワールド組とジュラシック・パーク組の動きとメイジーの誘拐、とそれなりに楽しめる展開にはなるんだけど、恐竜の扱いが各イベントのトラップ的なものでしかなくなっている。

それと、『シャイニング』や『鳥』のオマージュや後半の恐竜パニックに『JAWS』や洞窟探検アドベンチャーに『インディー・ジョーンズ』風といったスピルバーグへのリスペクトオマージュなど、小手先のオマージュが目につく。よく考えると、マルタ島の裏マーケットに『スター・ウォーズ』シリーズの惑星の市場のシーンだったり、バイオシン社への乗り込みに『007』シリーズや『北北西に進路を取れ』、ジャングル突き進みに『地獄の黙示録』、派手な車の横転に『ワイルド・スピード』シリーズ風の危険演出など、『ジュラシック・ワールド』シリーズ最終作を使ってやりたいことを全部盛りにした様子がうかがえる。

つまらなくはないんだけど、肝心の本題は練り込み不足なのにやりたいこと・出したいキャストは全部盛り&全部出し、さらにはクリス・プラットはともかくブライス・ダラス・ハワードや久しぶりの登板のローラ・ダーンにもやや無茶なハリウッドアクション体験のオマケ付き。バランスの悪さというか、超ハイカロリーなファミレスディナーフルコースのようなシリーズ最終章。つまり、ツッコミどころを包括した良くも悪くも娯楽大作という結論に落ち着き、最後の答えに多様性の世の中らしさはあるんだけど、終始「う〜ん…」というモヤつきが消えない。

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