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自動車から宇宙船まで。3Dプリント試作のプロフェッショナル企業に聞く「夢とロマン」の経営哲学

3DプリンターとChallenge Spiritsで多様な製品を造形

ー日本積層造形の事業概要をご説明いただけますか?

日本積層造形は2017年に設立されました。日本における金属積層の草分け的存在である株式会社コイワイ(神奈川県小田原)の技術を引き継いで、商社の双日が出資してできた会社です。
加えて、東北大学の未来科学技術総合研究センターより技術指導を受け、東北大学ベンチャーパートナーズからも出資頂いています。

 金属の試作造形サービスをメインにPREP(プレップ)というプラズマ回転電極法という製法で作られた、いわゆる真球度が高い粉末材料を一部製造しています。またタイアップ先と協業して、量産に向けた各種解析サービスや設計サービスも対応しています。

ー2017年設立とのことですが、競合企業もいらっしゃる中で、日本積層造形独自の強みや特徴はございますか?

造形機は大きく分けて電子ビームとレーザービーム両タイプに分けられますが、当社グループではそれぞれ加えて計8台所有(内2台コイワイ社所有)しています。高融点材料及び造形が難しいと言われている純銅など反射率が高い材料を電子ビームタイプで造形し、レーザービームタイプは、それ以外の数多くの金属材料に対応しています。

最新鋭の造形機も導入しています。例えば、昨年導入したレーザータイプのEOS M400-4は4機の400Wレーザーを搭載したもので、造形速度が最大4倍になります。また、日本最大級の造形領域(800 x 400 x 500ミリ)を持つ造形機(X-Line)も所有しています。

 大学や研究機関から実験的な造形を依頼されることもあり、日々Challenge Spiritsを持ちながら研鑽を重ねている次第です。

ー遊佐さんが思う造形の魅力を教えてください。

3Dプリント最大の魅力は自由形状の造形が可能な点です。従来の工法では加工が難しい形状でも3Dプリンターなら製作できます。自分が本当に作りたい理想の形状を追及できるということは、今までは成し得なかった性能を引き出し、効率性も追求できます。言い換えれば、お客様の「夢とロマン」の実現に幾ばくかでも寄与できるということが言えるのではないかと思っています。これは大きなやりがいです。

ーどういった市場で需要がありますか?

主な顧客は自動車関連メーカーを中心に、航空宇宙産業、半導体メーカーとの取引実績もあります。県内ではJAXA角田宇宙センターさんなどの宇宙関連、半導体、射出成型メーカー様等魅力的かつ可能性のある企業の方々にご利用いただいています。

「宇宙の起源」に想いを馳せる、スケールの大きさが宇宙ビジネスの魅力

ー日本積層造形で取り組まれている今回のテーマ「宇宙×モノづくり」についてお聞かせください。

直近のお話ですと、JAXAさんが手掛けられている小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」が2024年1月20日に月面に着陸しましたが、その月面着陸実証機の緩衝器、いわゆる着陸するときにクッションになる部品を造形しました。これは、当社としても大きなトピックですね。
その他、複数の造形実績があります。

ー宇宙ビジネス分野に取り組む魅力は?

宇宙空間はまさにオリジン = すべての起源で、未知の領域がたくさんあります。また今後宇宙ビジネスが拡大すると予想されていますが、「宇宙と関連するものを作る技術」は様々なものへ応用できる可能性があります。そういったオリジンと未来の可能性を感じながら、ものづくりで創意工夫できる点が宇宙ビジネスの魅力ですね。

スタートアップ協業のメリットは、同じ夢に向かって二人三脚できること

ースタートアップ企業でいらっしゃいますが、「スタートアップだからこそできる」ことはなんですか?

大企業だと敷居が高いという理由で遠慮されるお客様もいらっしゃいますが、そこをフランクに、お互いの夢とか、技術を出し合いながら、新たなスタンダードを作ることができます。

最終的には世の中のスタンダード、グローバルスタンダードまでいきたい、そういった夢を掲げながら、一緒に、小回りを利かせながら二人三脚できるというメリットがあります。スタートアップ同士ならではの歩み方ですかね。

ースタートアップ企業が協業する上で、重要だと思うことを伺えますか?

自分自身は技術者でもなく、あくまでも今迄当社で培われた技術と実績の代弁者としてしかお伝えできませんが、自社の強みを生かせる接点があるか確認した上で、その技術が突抜け可能なものかどうか奢りなく見極め、共鳴できるパートナーをとことん探すことが肝要だと思っています。

ー今後どういった方とお仕事していきたいですか?

自社に必要なものを違った視点で発想、クリエイトできる方、更にコーディネートできる方でしょうか。異なったカラー、個性を持つスタートアップ企業同士が繋がることによって、シナジー効果が生まれるような関係になれれば一番理想だと思っています。

そのためにも、まずは宮城県の中で素晴らしい企業の存在をきちんと認識すること。認識した上で「何か一緒にできることはないか?」、もしくはお相手の方から「こんなのできるんじゃないですか?」と、そういった想いを互いに伝え合うことができればありがたいと思っています。


互いに「ご利益」を授かりあえる会社と出会いたい

ー遊佐さんは色々な会社を経験されていらっしゃいますが、どういった経緯から現在に至ったのかお伺いできますか?

東京の大学を卒業後、商社に入りました。新卒では輸出業務を担当し、後に人事関係の研修担当となりました。その後、地元の岩手に戻りまして、試行錯誤もありながら同じ商社のグループ会社に入社。そして、同じ商社系の鉄鋼商社に入り、現在に至ります。

ー地元に戻られたのは、やはり東北に魅力を感じたからでしょうか?

そうですね。震災を経て、東北の地にてたくさんの経験や気づきを頂いていると実感しています。色々な仲間や企業の方々に「恩返しをしたい」という気持ちをベースに持ちながら、この日本積層造形という会社を通じて、様々な夢を実現していきたいという気持ちがありますね。

ーテクスタ宮城マッチングイベントに望むものはなんですか?

 企業を代表していくわけですので、良き出会いと、良き気づきがあり、それが最終的にビジネスに繋がれば嬉しいです。

 利益じゃなくて「ご利益(ごりやく)」をいただける。Win-Winの流れを作れる出会いの場になればと思っております。


■日本積層造形株式会社
〒985-0874 宮城県多賀城市八幡一本柳3-8
https://www.jampt.jp/