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テクパンの私的博物誌

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自然や様々な生物に関するお話
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不死鳥料理

不死鳥料理

(ヘッダー画像及び文中の画像は全てウィキメディア・コモンズより拝借しました)

古代ローマ帝国の第23代皇帝で、セウェルス朝の第3代当主であったヘリオガバルス帝は、異常な程奔放な性生活と様々な内容の過激な逸話で有名な人物である。
本名はウァリウス・アウィトゥス・バッシアヌス。

ヘリオガバルス帝は、ローマ史上は愚か世界史の全てに置いても稀に見る程の、特異で破天荒な為政者であったと言われている。
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優雅な"猛禽"

優雅な"猛禽"

(ヘッダー画像及び文中の画像は全てウィキメディア・コモンズより拝借しました)

goo辞書によると【猛禽】の定義は以下の通りになるそうである。

近年であればこれに更にハヤブサ目が加わる事になるだろう。ハヤブサの仲間はつい最近まではタカ目に含まれていたが、遺伝子的見地から寧ろスズメ目やオウム目に近い鳥だと判り、独自の目を立てられるようになった。以下、タカ目・フクロウ目・ハヤブサ目の鳥の括りには猛禽

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フラミンゴ・ジュース

フラミンゴ・ジュース

日本のそこそこ大きな規模の動物園に行くと、大抵フラミンゴが飼育されている。
一番多いのは南米産のチリーフラミンゴ、次いで多いのがカリブ海周辺に棲息するベニイロフラミンゴである。この2種は形態が似ているが、チリーフラミンゴは淡い桜色、ベニイロフラミンゴはオレンジがかった淡赤色の羽毛を持つので簡単に区別がつく(体はベニイロフラミンゴの方がやや大きい)。

近年まで分類に混乱があった鳥で、昭和時代にはコ

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そこのけそこのけオオバン通る

そこのけそこのけオオバン通る

(ヘッダー画像及び文中の画像はウィキメディア・コモンズよりお借りしました)

近頃、近所の船着き場でオオバン(大鷭)の姿を頻繁に見かけるようになった。

オオバンは鳥綱ツル目クイナ科に属する水鳥である。馴染みの無い方の為にその外観を軽く説明すると、全長は32〜40cm、翼開張(翼を広げた端から端までの長さ)が70〜80cmとコールダック位のサイズ感である。頭部や頸部は黒い羽毛、胴体は灰黒色の羽毛で

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北の【ヤマドリ】

北の【ヤマドリ】

北海道と本州以南は、生物相特に哺乳類や鳥類の種類に大幅な相違がある事で知られる。例えば日本に於いてヒグマは北海道にしか棲息しない代わりに、ツキノワグマは本州以南(九州で絶滅した為に南限は四国・中国エリアと言う事になろうか)にしか棲息しない…と言う風に。
【ブラキストン線】と言う概念が存在する。北海道の動物相が寧ろ極北アジアのそれと相似する事を根拠に、津軽海峡を境界線として動物相を隔てるラインが存在

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小さな猛獣

小さな猛獣

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより借用)

今泉忠明博士は自著で、イヌの事を【人為的猛獣】と呼んでいる。オオカミの一種を祖先に改良されたイヌは、今や世界のあちこちに存在し、それぞれの地域で野生化して問題になっている。
例えば中国では最近、大型犬のティベタン・マスティフが野生化してブルーシープやヤク等の野生動物にとっての脅威になっているばかりか、同じ生態的地位にあるユキヒョウの生存をも脅か

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都会のカワセミ

都会のカワセミ

我が家の近所に小さな川がある。
川と言っても、生活排水由来の人工的な川であり(昔は大きな川から流れが通じる船着き場だったらしい)、途中で海からの水と交わり半ば汽水と化している。
鳥類保護区を内包する公園の外周を流れる川で、河岸にはそれなりに緑が多い。

いつの頃からか、この人工的な川の淡水域にカワセミが棲むようになった。
カワセミと言う鳥はその美しい緑青色の羽毛から非常に人気が高い鳥であり、バーダ

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ラクダの乳

ラクダの乳

【バイアステスト】と呼ばれるテストがある。

国連が提唱しているテストのひとつで、海外諸国の漠然としたイメージ(例えば水道の普及率やら就学率やら、その他諸々の生活水準が主。他に自然や文化等)に関する問題を解答者が解き、その成否を試すと言う内容である。
例えばこんな感じだ。

【◯◯国の水道の普及率は西暦2000年以前より高いか、同程度か、低いか?】

海外情勢に詳しい人間ならばともかく、日本の事し

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美醜徒然イルカの話

美醜徒然イルカの話

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより借用)

昔の動物図鑑には、イルカとクジラの判別方法として【体長4m以下がイルカ、4m以上がクジラ】と書かれていたものである。流石に近頃の図鑑では、このような乱暴な判別方法は用いられて居ない。もしもこの判別方法が現役だったら、最小のヒゲクジラとして知られるコセミクジラ(鯨偶蹄目ケトテリウム科、4m)はイルカだと言う事になってしまうし、逆にシャチ(鯨偶蹄目

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悲劇の巨獣

悲劇の巨獣

ゾウは、激しい生存競争と人類との対峙に振り回された悲劇の生き物である。

現存するゾウはアフリカに棲むサバンナゾウ(ヘッダー画像参照)とマルミミゾウ(シンリンゾウ)、そして南アジアに棲むアジアゾウの3種類だけである。

東南アジア各国では古くからアジアゾウの子供を捕らえ、飼い馴らして役畜として用いた。他方、アフリカのサバンナゾウは、スポーツハンティングの獲物としてハンターに追い回され続けた。
そし

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動かない鳥

動かない鳥

動物の世界では、時折「何故この動物がこのタイミングで流行るんだろう」と疑問符を浮かべざるを得ないようなマニアックな動物の流行がしばしば起こる。
昭和時代末期にはテレビのコマーシャルを切っ掛けに、エリマキトカゲやアホロートル(メキシコサンショウウオ)がそんなカタチでメジャーになった。世が平成に入ってからもその流れは続き、これまでに様々な動物が突然と言って良いタイミングで知名度を上げている。アルパカ、

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幻の毒蛇

幻の毒蛇

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより、ツチノコの【正体】のひとつに数えられている毒蛇・ヒメハブ)

日本には【ツチノコ】と呼ばれる未知の毒蛇の存在が各地に伝わっている。所謂【未確認動物】(UMA)と呼ばれる生き物のひとつだが、外国の未確認動物研究家の間では実在の可能性が高いと評されている。
【バチヘビ】【ゴハッスン】【カヤノヒメ】【ノヅチ】【ヨコヅツヘンビ】【タテクリカエシ】等、様々な別名

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毛刈り

毛刈り

大陸由来の致死性感冒が猛威を振るう前までは、各地の動物園に足繁く通って動物を眺めていたものである。今はもう松葉杖無しでは歩けなくなったので、すっかり無沙汰であるが。

そんな動物園行脚の小旅行で、時折ヒツジの毛刈りに出くわす事があった。
出会ったヒツジの多くは、コリデール種と言う長い毛を持つ毛用種のヒツジではなかったかと思う。刈られた毛を実際に触る機会があったが、脂を含むやや湿った手触りだった。

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古代南米の猛獣達

古代南米の猛獣達

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより、最も有名と思われる砕歯目の肉食動物、ティラコスミルス)

【収斂進化】と言う言葉がある。
隔てられた大陸で異なる系統の動物が、その環境下で担っているニッチェ(生態的地位)に適応した結果、外観が似通った姿になる進化の事である。
オーストラリアに棲息する有袋類(嘗ては【有袋目】と言うひとつの目にまとめられていたが、現在では双門歯目、フクロネコ目、クスクス目

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