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技術史

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物作りの歴史・様々な身の回りの製品の歴史を簡潔に紹介します。
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2023年8月の記事一覧

【技術史】遺伝子組み換え作物の誕生②

【技術史】遺伝子組み換え作物の誕生②

アメリカの巨大企業モンサントは、遺伝子組み換え技術により、莫大な収入をえることになります。
農家は「ラウンドアップレディ大豆」導入にあたり、モンサントと契約を交わして、この種子を毎年購入しなければならず、特許料を含む割高な価格により、コストがかかるため借金がかさみます。さらに、モンサントは子世代の種子自体が自殺する遺伝子「ターミネーター」を組み込んで、収穫した種子は発芽しないようにする技術も確立し

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【技術史】遺伝子組み換え作物の誕生①

【技術史】遺伝子組み換え作物の誕生①

アメリカの巨大化学企業、モンサントが、「ラウンドアップ」という除草剤を1970年に開発しました。成分はグリホサートという分子で、植物の葉から吸収され、細胞のなかでアミノ酸を合成する反応を促進する酵素をブロックします。
アミノ酸の合成ができなくなると、タンパク質が合成できずに枯死します。あらゆる植物の葉にふれて枯死させる強力な除草剤です。ラウンドアップとは「一網打尽」を意味しています。
しかし、ラウ

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【技術史】ガガーリン、初の宇宙旅行

【技術史】ガガーリン、初の宇宙旅行

1961年、ついに人類は宇宙へと旅立ちました。それまでは犬や猿をテストとして宇宙に送っていましたが、機は熟したとばかりに、1960年代はじめ、ソ連とアメリカが初の有人宇宙飛行を競いました。

先手をとったのはソ連です。1961年4月12日、コロリョフが設計した「ボストーク1号」で、酸化剤の液体酸素と燃料(灯油)のものすごい化学エネルギーの上に乗って、ガガーリンはバイコヌール宇宙基地から旅立ちました

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現代文明を支える“チタン”

現代文明を支える“チタン”

金属のチタンは、鋼より強く、軽量です。さらにチタンの原料鉱石である酸化チタンは、海岸の砂にも混じっているようなありふれた鉱石で、チタンは埋蔵量が多い元素です。
しかし、鉱石から金属のチタンを取り出す(精錬する)のに手間がかかること、金属チタンの加工や溶接に高度な技術が必要なことから敬遠されてきました。航空宇宙産業や軍事用など、コストに糸目をつけない分野で花を咲かせることになります。
ボーイングB7

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【技術史】レーザーが実用化

【技術史】レーザーが実用化

現代の生活を陰で支えているものの一つがレーザー光線です。スーパーマーケットのレジでバーコードにかざしたり、CDやDVDを読み込んだり、手術で腫瘍を焼いたり、脱毛したりする際に使われます。
レーザーの原理は、アインシュタインが20世紀の始めに解明していましたが、実現するまでに半世紀が必要でした。
アメリカのチャールズ・タウンズ博士は、ベル研究所でレーザーに使うマイクロ波の研究を行いました。アンモニア

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【技術史】サランラップが生まれた経緯

【技術史】サランラップが生まれた経緯

100年前に比べて、私たちの生活は劇的に変えた物質は何でしょうか。
それはプラスチックです。青銅器時代や鉄器時代のような分類をすれば、現代はプラスチック時代といえます。
第二次世界大戦で金属が兵器の生産に優先されると、その不足した分の素材をプラスチックに求めていく動きが活発になりました。例えば、どこの家のキッチンにもあるラップがその象徴です。正式名称は、ポリ塩化ビニリデンといいます。アメリカのダウ

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【技術史】選ばれなかった道

【技術史】選ばれなかった道

エネルギー問題は、経済問題だけでなく政治問題にも大きく左右される。
1979年、アメリカ大統領ジミー・カーターは「ソーラー・アメリカ」計画を打ち出して、ホワイトハウスの屋根の上に太陽熱温水器用のパネルを設置させた。
カーター大統領は、2050年までにアメリカのエネルギーをすべて再生可能エネルギーでまかなえるようにするという希望を表明した。石油危機を経験し機器は脱したものの、石油依存を解消し、化石燃

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