新しい発想を生み出す「形容詞」
column vol.1101
8月29日(火)、代官山 蔦屋書店のシェアラウンジにおいて行われた、『アート思考サロン in 代官山 第1回 久門剛史氏と語る「未来の不確実性」』で実施された、偶発性と遊び心を活用してワクワクするコンセプトを創出するワークショップについての様子が、NewsPicksで紹介されていました。
〈NewsPicks / 2023年9月10日〉
新しいアイデアの発想法としての興味深い事例です。
どういうものかと言いますと、「不確実な未来」などお題を設定し、まずは参加者が思いつくだけ名詞と形容詞を挙げていく。
その上で「普通はつなげない言葉の組み合わせ」を行い、それについて考えます。
そうすることで発想を飛躍させられるというわけです。
例えば、「不確実な未来」から連想された形容詞「もこもこ」と、名詞「資本主義」を組み合わせてみる。
この言葉を見て、どんな資本主義が頭に思い浮かぶでしょうか?
「違和感形容詞」が発想を飛躍させる
私は「やさしい資本主義」が頭に浮かびました。
もこもこのセーフティーネットに守られ、起業などチャレンジしやすいビジネス環境が整っている様子です。
また、「のんびり資本主義」を思いついた方もいらっしゃるでしょう。
もこもことした雲のように、自由気ままにマイペースで楽しむ資本主義。
他にも「綿菓子」のようにもこもこと「可愛い」資本主義というのもあるかもしれません。
そうして普段の発想にない「資本主義」に出会った時、それを深掘りしていくと新たな発見に出会うというわけです。
若い女の子が「資本主義って、可愛い〜」と盛り上がるためにはどんな資本主義であると良いのだろう?
仮に現状の資本主義だとしても、どのように説明したら「可愛い〜」と思ってくれるのだろう?
そんな風に考えていくイメージです😊
「資本主義の未来を語りましょう」と議論を始めても、ステレオタイプの批評と発想からなかなか逃れられませんが、普段は前に付けない「違和感形容詞」をつけることで、新しい着想が生まれていく。
例えば、ブラック企業と聞くと暗い気持ちになりますが、「明るい」ブラック企業と聞くと、どうでしょうか?
仕事が楽し過ぎて、ついつい超過労働になってしまう様子が頭に浮かんできます。
「ブラック企業の是正」と考えると、管理体制や業務シェアなど、超過労働させないようにするためのアイデアに終始しそうですが、「明るい」と形容詞をつけることで、新たな切り口が生まれやすくなっていきます。
従業員がまるでゲームを楽しむかのように、つい時間を忘れて熱中できる会社(働きがいのある仕事)をつくっていくためにはどうしたら良いのだろうか?
仕事が楽し過ぎる会社が日本に増加した場合の労働法はどうある方が良いのか?
などなど。
他にも「(お金を払ってでも)やりたい」ブルシットジョブ(クソどうでもいい仕事)というのはどうでしょう?(笑)
ここで、「そんなのねぇーわ!」で終わらせるか、「ちょっと面白いから考えてみよ〜♪」と考えるのかという差が、明暗を分けるような気がするのです。
「極端な設定」こそが大ヒットの種に
これは、「氷結」「スプリングバレーブルワリー」「淡麗」「キリンフリー」など数々のヒット商品を生み出してきた元キリンビール商品開発プロジェクトリーダーの和田徹さんのアイデア発想法に通ずるものがあると感じました。
〈DIAMOND online / 2022年3月27日〉
ヒット商品を考える上で、和田さんは「極端な設定」が重要だと語ります。
例えば、消費者に1ヵ月に1回しか買ってもらえないお酒があるとします。
その販売機会を増やそうとするならば、普通は「1ヵ月に2、3回買ってもらうにはどうしたら良いか?」と、考えるでしょう。
ところが、和田さんは
もしくは逆に
といったように、「極端な設定」で発想するようにしているそうです。
前者であるなら、「1000回は無理にせよ、ビール好きに春夏秋冬、365日、時の移ろいに合わせて一年間をコーディネートするサブスクリプションサービスを考えてみたらどうだろう」など、新しい着想が生まれてくるはずです。
つまり、極端な設定というのは、自分で自分に対して行う「無茶ブリ」のようなもの。
例えば、「髪を切らない美容室」という無茶ブリを自分に与えて考えてみる。
それを見事に叶えたのが、シャンプー&ブローの専門店「Jetset」ですね。
〈Oggi / 2020年9月12日〉
重要なのは、なるべく発想を飛躍させる状況に自分を追い込んであげることです。
「違和感形容詞」も「極端な設定」も、その1つの方法論として活用できるかと思います😊
常に頭の中を柔軟に。
私の中で、歳を重ねるたびに気をつけていることの1つです。
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