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TikTokで学ぶ若者たち

column vol.906

最近、若い人たちと話しているとTikTokで情報を入手している傾向が強まっています。

ひと昔前はTwitterで情報を集めるという声をよく聞いていましたが、やはりTikTokには短尺動画の強さがあります。

若者が情報収集にTikTokを活用している例は、世界各地でも見られます。

情報源は報道機関からインフルエンサーへ

英国情報通信庁「オフコム」によると、イギリスではTikTokでニュースコンテンツを消費する人の数が、2020年の80万人から、2022年には390万人に増えているそうです。

〈BBC / 2022年7月21日〉

13歳以上のティーンエージャーの間では、29%がニュースを得る媒体としてInstagramを活用。

続いて人気なのがTikTokYouTubeとのこと。

ちなみに、新聞を読むと答えるティーンエージャーの割合は、過去5年間で19%から13%に減っているそうです。

オフコムの戦略研究担当イーチョン・テー局長は

今のティーンエージャーが新聞を手にしたり、テレビのニュース番組をつけたりすることは珍しくなり、むしろソーシャルメディアのタイムラインをスクロールすることで情報を得ることの方が多い

と説明しています。

オムコムの調査では、かつてイギリスの若者の間でニュース媒体として最も人気の高かった「BBC One」「BBC Two」のテレビチャンネルは、5位にランクダウン

調査対象の若者のうち、昨年ニュースを見るためにBBCの2つのテレビチャンネルを利用したと答えたのは24%で、5年前の45%から約半分に減っています。

「そんなSNSの情報を信じるなんて…!」という大人世代の声もありそうですが、イーチョン・テーさんは

若者はソーシャルメディアで見つけるニュースはあまり信用できないと感じているものの、その日の話題について幅広い意見を見ることができるという面でソーシャルメディアを評価している

と仰っています。

実際、TikTok経由で見つけたニュースの中身を実際に信用していると答えた若者は3割未満だったそうです。

ほど良い距離感でSNSの情報と付き合っていることが分かりますね。

教師が教えないことをTikTokで学ぶ

私が10代の頃はそもそもニュースに興味がなかったので…(汗)、興味があるだけ素晴らしいです。

さらに最近ではTikTokで勉強する若者も増えているようです。

アメリカでは人種性別セクシュアリティなど、学校の先生がなかなか教えられないセンシティブなテーマをTikTokで学ぶ傾向があるとのこと。

〈NewSphere / 2023年1月2日〉

例えば、警官の射殺行為に対する抗議市民活動、アメリカにおける黒人やヒスパニック系の歴史に関してなど、TikTokにはさまざまな社会問題を語るアカウントで溢れています。

もちろん、その中にはNPO元教師が発信しているものもあります。

教師の中にはセンシティブなテーマを議論したくてもできないジレンマを抱え、活躍の場をSNSに移す方もいらっしゃるとのこと。

実際、この2年ほどの間に成立した法律の施行により、10を超える州では人種差別性差別にまつわるテーマについて教室で議論する動きに制限がかけられています。

子どもたちが読む本にまで、そうした議論の是非が及ぶようになってきており、国内の禁書を追跡調査しているアメリカ図書館協会によると、2021年には図書館、学校、大学で1597の文献が禁書の対象に。

729件の撤去要求があったそうです。

これは2000年の調査開始以来、最も多い件数とのこと。

一方で、TikTok自体も多くの教育コンテンツを掲載するよう奨励しており、コロナで巣篭もり真っ盛りの2020年5月数百万ドルを投資

専門家や有名人、教育機関と協力して「#LearnOnTikTok(ティックトックで学ぶ)」のハッシュタグをつけて学習教材を投稿していくと発表しました。

これがTikTok学習に繋がっています。

今後も若者にとって知りたいことを学ぶメディアとして注目を浴びそうです。

3人に1人が「医者よりまずTikTok」

その傾向はどうやら医療情報にも及ぶそうです。

処方箋の割引カードを発行する「CharityRx」がアメリカの成人2000人を調査したところ、Z世代の3分の1は医師に相談する前にTikTokで健康情報を探しているのです。

〈Forbes JAPAN / 2022年12月30日〉

ちなみにYouTubeでそうすると回答した人は44%にのぼっているとのこと。

全世代でもアメリカ人の5人に1人が、医師よりも先にTikTokに助言を求めています。

また、地元の医療専門家よりも健康系インフルエンサーを信頼するという回答も同じ割合を占めているのです…

インフルエンサーを頼る理由としては

「近づきやすさ」(37%)
「費用の安さ」(33%) 
「親しみやすさ」(23%)

が上位に挙げられており、5人に1人近く(17%)は、医療専門家の判断は避けたいため、あるいは医療専門家と会えないためと答えています。

一方、冒頭のイギリスの調査同様で、多くの消費者は情報に対して適切な距離を保っているとのこと。

CharityRxの調査では4分の3は健康系インフルエンサーが勧めていることについて、事実かどうか確認すると回答。

89%は、インフルエンサーはネット上での誤った医療情報の拡散を助長している可能性があると考えています。

インフルエンサーがお勧めするブランドについても、正直なアドバイスをするとは信用していないという回答も、全体の36%にのぼっているのです。

非常に「冷静な試聴」態度が窺えますね。

情報はもちろん信頼できる情報源を見つけることも大切ですが、100%信頼できるところはないので、やはり多角的に情報を集めるにこしたことはありません。

いずれせよ、若者にとってTikTokがいかに身近な情報源になっているかが分かるかと思います。

私も時流研究としてTikTokをちょこちょこチェックしていますが、アルゴリズムのより、自分にとって興味があるコンテンツが次々と出てくるので、一度見ると止まらなくなります……

いつも必ず時間を決めてみるようにしているのですが、そうしないと本当にエンドレスになるぐらい人の心を惹きつける魔力がある…

TikTokの動向には、今後ともマーケティングの観点においても目が話せません。

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