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新しい「人間」と「AI」の共創ワーク

column vol.1169

今年は「AIイヤー」と呼べる年になりましたが、私たちの仕事の現場でもAIとの共創関係が目立ってきています。

そんな中、これからの新しい可能性を示唆する事例がどんどん生まれておりますので、本日はいくつかご紹介したいと思います。

まずは、ここ最近、私が最も興味を持ったトピックからお届けさせていただきます。


あの巨匠の人気漫画に新作が登場!

11月、私が子供の頃に読んでいた手塚治虫先生『ブラックジャック』に新作が登場。

同月22日発売の『週刊少年チャンピオン』52号に掲載されました。

〈ORICON MEWS / 2023年11月22日〉

もちろん、手がけたのはAI

『ブラック・ジャック』200話分のテキストデータ短編マンガ200話分のテキストデータ手塚キャラクター2万枚の顔画像データ『ブラック・ジャック』4000ページ分のコマデータをAIが利用・学習し、今回の作品を生み出したのです。

新作のタイトルは「TEZUKA2023 ブラック・ジャック 機械の心臓-Heartbeat MarkII」

32ページ掲載されました。

実は、3年前に「手塚先生がもしも新作をつくったのなら」という考えのもと、AIを駆使して生み出した『ぱいどん』という作品があります。

今回は、その時の経験が活かし、クリエイティブの分野においてはインタラクティブ性の高い共創型AIサポートシステムの存在が、人ならではの能力である創造性の発揮につながることに着目。

研究を重ね、今回の制作においてはクリエイターとAIのインタラクティブなやりとりがポイントになっており、クリエイター自身がAIを操作しながら制作したとのこと。

まさに人間の力とAIの力の結晶ですね。

プロット制作参加メンバーの1人である手塚眞さん

今回の実験では『ブラック・ジャック』という高いハードルを設定したので、完璧にできたとは言えませんが、初のAIによるマンガ制作という意味では興味深い結果を出せたと思います。AIによるストーリー作りの支援は大きな可能性を感じました

とプログラムを総括。

もちろん、「より読み手の感情に沿ったシナリオを組み立てられるデータが必要である」など、課題は多いとご本人も感じていらっしゃいます。

それでも、

●AIの一番の魅力は何度でもリテイクができること
●(何度もやり直せることで)何か一つアイデアに引っ張られることなく自由なアイデアを出せること

など、AIとの共創のメリットを挙げていらっしゃいます。

今後はマンガだけではなく、人間だけでは生み出せなかった新しいクリエイティブが多方で見られそうですね。

コンビニの省人化に寄与するロボット

続いては、私の専門である小売業のトピックをご紹介させていただきます。

野村総合研究所(NRI)AI搭載のアーム付きロボットを活用し、有人営業が前提の店舗を夜間だけ無人に切り替えて運営するシステムを開発。

昼間は通常の営業、夜間は無人化といった2通りの店舗運営を実現しようとしています。

〈ニュースイッチ / 2023年10月18日〉

夜に無人化する時は、店内にお客さんが入れないように閉鎖

ニュースイッチ

来店者は店先にある専用端末で購入したい商品をタッチ操作で選び、支払いは電子決済で済ませます。

そうすると、ロボットが注文ごとに商品のある場所まで自走し、吸着機能を備えたアームを用いて商品をピックアップ

店頭の受け渡しボックスで商品を引き渡すという仕組みになります。

ですから、店舗が巨大な自動販売機になるようなイメージでしょうか。

このお店は「ロボットコンビニ」と名付けられ、深刻化する夜間の人財採用難を解決することを目指しています。

来年中試行版を投入し、2025年以降に実装していく予定とのことです。

恐らく「無人化」と聞くと、「Amazon Goのようなウォークスルー型の完全無人化店舗でも良いのでは?」と思う方もいらっしゃると思いますが、ロボットコンビニはコストの低さがウリとなります。

導入費用は1店舗当たり1000万〜1500万円程度

さらに、コンビニは昼間は人手で多様なサービス業務を行いたいという要望も多く、そうした声にも寄り添えるわけです。

コンビニとして実装した後は、夜間に閉店する病院の売店やドラッグストア、空港内の店舗への採用も働きかける方針とのこと。

防犯機能を生かし、海外展開も視野に入れているそうです。

店舗でのロボットの使い方としては世界にも類がないとのことで、日本の新しいビジネスチャンスとして期待が集まります。

AIが生み出す「新しい仕事」

AIは「人間の仕事を手伝ってくれる」こと以外にも、もう1つ大きなメリットを私たちに提供してくれています。

それは「人間の新しい仕事を生み出している」ことです。

〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2023年11月5日〉

ビジネス特化型SNS「LinkedIn」のチーフエコノミスト、カリン・キンブローさんは、この1年で同サイト上でのAIに関する話題が急増したと語っております。

さまざまな業界で、専門家や雇用主がすごい勢いでAIや生成AIの導入を進めている。そのペースは、暗号資産(仮想通貨)や仮想現実といった技術が台頭したときと比べても際立っている

このコメントが本当なら、大きなムーブメントを期待できますね。

実際、リンクトインユーザーのプロフィールには

「ChatGPT」
「プロンプトエンジニアリング」
「プロンプトクラフティング」
「生成AI」

などの用語が大幅に増加しているとのこと。

具体的な数字でいえば、例えば生成AI汎用型AI製品への言及については、今年1月から9月にかけて60%増加しているそうです。

さらに、「AI責任者」という役職がある企業の数は、過去5年間で3倍以上に増加し、2022年12月以降では13%増加

求人検索エンジンの「Adzuna」でも、生成AIブームに伴い、過去1年間で新たな職種の誕生が見られているのです。

イギリスプロンプトエンジニアの募集は、昨年10月は0件だったのに対して、今年の10月は7件に。

他にも、AI倫理責任者、AI最高責任者、AI監査役、AIトレーナー、機械マネージャーの求人も増加

アメリカでも現在、7000以上の求人「生成AI」の専門家が求められており、約5万9000の求人「機械学習」の知識が求められているそうです。

考えてみると、私の仕事であるマーケターも19世紀に生まれた職業

それまではなかったわけです。

時代の変化とテクノロジーの進化により、職業も変容していく。

きっと100年後、200年後は、今とは全く違う業界と職種に変わっているのでしょうね。

今後、新しく生まれる仕事に期待を抱いていきたいと思います😊

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