「発達障がい」を救うロボットの力
column vol.1046
「マインドワンダリング」という言葉はご存知でしょうか?
恐らく「ADHD(注意欠如・多動症)」の方が有名かもしれません。
会議や勉強など集中しようとしている時に、まったく別のことを考え、心が迷走してしまう心理現象を指します。
私は…きっと、恐らく…、子どもの頃はADHD特性だったのではないかと思う節があります…
授業中も一人机に向かう時も、すぐに空想の世界に飛びだってしまう…
さらには授業中、落ち着いていることができず…、小学生の頃はよく廊下に立たされていました、、、(汗)
…もちろん、当時調べたわけではないですし、確かなことは言えないので、私のことはこの辺で…
一般的には子どもの5%~10%が該当すると言われています。
そして普通は、年齢を重ねるごとに多動が好ましくない行為だということを本人が学習し、自らの多動的な行動を規制する能力が身につきます。
そうして、大人になるにつれて症状が弱まっていく。
それでも、大人になってからも2〜4%の人がADHD特性を抱えているそうですよ。
そんな中、ADHD特性の人たちに光明が射すAIを使った研究に注目が集まっています。
AIで「心の迷走」をコントロール
その研究を手がけているのは、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)などの研究グループ。
AIを用い、本人が同現象に入ったことを音で知らせる手法を開発しているのです。
〈産経新聞 / 2023年5月11日〉
ADHDは発達障がいとは言われている半面、斬新なアイデアが生まれる素地にもなるとされ、上手く活かせば宝となる。
適切にコントロールする方法が求められていたのです。
そこで研究チームは、約4年前からマインドワンダリング状態になったことに本人が気づくシステムの開発に着手。
マインドワンダリングの影響で特定の脳波が強くなるといった現象に注目し、メカニズムをAIに学習させたのです。
これにより、AIが脳波を判定するとスピーカーから音が流れ、本人に知らせてくれる。
実験では、注意の持続が必要である単調な課題を与えられた被験者の脳波をAIが判定できているのです。
被験者はしばらくすると自覚もなくマインドワンダリングに入ったことに気づくなどし、自ら注意散漫状態から脱出しようとする効果が認められたとのこと。
今は実験段階なので物々しい印象ですが、今後は可愛いキャラのロボットとして開発され、心の迷走から連れ戻してくれるに違いありません。
これにより、ADHDの良い部分を活かしながら、上手にコントロールできると良いですね。
ちなみにロボットといえば、別の発達障がいを救うべく開発されている事例もありました。
ロボットから始めるアイコンタクト
それは「ASD(自閉スペクトラム症)」に対する取り組みです。
ASDとは人とのコミュニケーションが苦手・物事に強いこだわりがあるといった特徴をもつ発達障がいの1つです。
約100人に1人の割合と言われています。
こちらもマイナスだけではなく、さまざまな分野で「天才」と称される人がASDであることがあり、有名なところではアインシュタインにもその傾向があったと指摘されているのです。
ASDの人はアイコンタクトが苦手と言われているのですが、ここでもロボットが役に立つと期待されています。
〈現代ビジネス / 2023年6月22日〉
ロボットは人間よりも表情や仕草が分かりやすく、目を合わせても刺激が少ないとのこと。
さらに、人間は感情に左右されていろいろな行動をしますが、ロボットならば同じ行動を繰り返すので、ASDの人は安心感を持つようです。
実際、
というように、人間とロボット双方と交互に会話していくと、人間だけと会話していた時よりも相手の目を見る頻度が高くなるという結果が。
さらに、顔の識別でも効果を発揮するようです。
ASDの人は顔の認識が苦手と言われていますが、すでに物の識別と同じ領域が活動していることが分かっています。
これは顔の識別を、物の識別を応用して行っているということです。
この仕組みを上手く活かせば、人間に似たロボットという物で学んだことを、人間に対しても応用できる可能性を示唆しています。
こうして考えると、ロボットの果たす役割は大きいと感じますね。
働く人のやる気を高めるロボットの笑顔
そして、このロボットの存在は全ての人たちの生活も豊かにしてくれる可能性を秘めています。
そう感じさせてくれるのが、冒頭の記事でも登場したATRでフェローとして活躍する石黒浩教授の目指すロボット像です。
〈ビジネス+IT / 2023年6月2日〉
働く現場で協働するロボットに対して「人間らしさ」を高めていこうとされているのです。
仕事において、「生活(生きる術)」を超えて「人間とは何か」「生きる意味とは何か」といった問いと一緒に考えていく時代になっている中、人間同士のコミュニケーションに、より一層スポットが当たってきています。
仕事は楽しい方が良い。
そして、楽しくやるには社員同士で気持ちの良いやり取りをしたいわけです。
例えば、褒められたり、同じ目標に明るい気持ちで向かったり。
単純に明るく声を掛け合うだけでも気持ちは弾むはずです。
そこで、石黒教授たちが目指しているのは無味乾燥に働くロボットではなく、人間らしい表現で反応してくれるロボット。
確かにロボットに荷物を運んでもらう際、人間らしい声と表情で
と言ってくれたら、こちらの気持ちも明るくなりそうです。
ちなみに以前、【「天才かよ」と思うNews!】という記事で紹介しましたが、不満を持っている人に1台のロボットで謝るよりも、2台のロボットで謝った方が許せるそうです。
つまり、ロボットも人間らしい行動をするとこちらも人間のように感じるわけです。
よく社員同士が明るく挨拶し合うだけでも業績が上がると言われていますが、挨拶のない職場に「とにかく明るい挨拶ロボット」を導入するだけでも変わるかもしれません。
ASDに寄り添うロボットのように、ロボットを挟むことで声の掛け合いを慣らしていく。
頭に浮かぶのは、ロボットが人間同士の心の交流を促してくれる、そんな未来です。
そして何より今回のロボットの事例で、改めて「人間らしさ」「人間力」の大切さを感じることができました。
心を磨いていきたいと思います😊
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