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拡がる「地方移住」のアイデア

column vol.891

本日は世田谷美術館の企画展「祈り・藤原新也」を観てきました。

この美術館は砧公園内にあり、小学校3年生まで世田谷に住んでいたので、非常に懐かしい風景を楽しむことができました。

その後、鎌倉→横浜と、それぞれに思い入れのある地に住んできた人生なのですが、比較的狭いエリアでの移住なので、一度は全く知らない土地に住んでみたいと薄ら思っています。

このコロナ禍で移住を考えた(頭に思い浮かべた)人は少なくないとは思いますが、ウィズコロナが浸透してきた現在はどうなのでしょうか

ということで、本日は「移住」についてお話ししたいと思います。

「移住ニーズ」の現状

まず、移住へのニーズを見ていきます。

内閣府

内閣府「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏での移住ニーズはコロナ前の2019年の時と比べて2022年

強い関心がある(2.6%→4.0%)」
関心がある(5.5%→9.7%)」
やや関心がある(17.0%→20.5%)」

伸長しています。

〈プレジデントオンライン・ウーマン / 2023年1月7日〉

一方で、実のところ、コロナ禍において初期の頃の方が考えた人は多いのではないでしょうか?

それはFinasee【コロナ禍で進んだテレワークは終了? 地方住宅地の値崩れが映す現実】という記事からも窺えます。

〈Finasee / 2022年10月24日〉

第一生命経済研究所ライフデザイン研究部主任研究員の稲垣円さんが書いたレポート「コロナでは地方分散は進まない、と思う理由」では、「関心がない/関心がなくなった」という回答率が高いのです。

2022年の全体では79.8%「東京圏」は74.3%

「東京圏・テレワーク経験者」の中で、引越しに関心のない人たちが挙げた理由を見ると、最も高かった理由が「現在の生活環境(買い物、交通、教育、医療機関等)に満足しているため」で63.0%を占めました。

これに次いで、「引越ししたからといって、新型コロナウイルスの感染リスクは減らないと思うため」が28.8%「旅行は良くても、暮らすことは別だと思うため」が23.9%となりました。

そして「暮らしやすさ」という点でいえば、住宅地の基準地価を圏域別に見ると、利便性を求める傾向が掴めてきます。

移住先は「地方四市」に集中

三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)は平均で1.4%の上昇となり、前年の0.1%から上げ幅を拡大しました。

また、地方圏の中でも地方四市である札幌、仙台、福岡、広島は、東京圏よりもさらに活況で、2019年が4.9%上昇、2020年が3.6%上昇、2021年が4.2%上昇。

そして2022年が6.6%の上昇しているのです。

つまり、東京や大阪、名古屋といった大都市圏に準じる規模の経済圏を持つ地方都市には、東京圏からの人口流入があるのかも知れません。

…しかし一方、地方四市以外の地方圏は非常に厳しく、2019年が0.7%下落、2020年が1.0%下落、2021年が0.8%下落、2022年が0.5%下落となっています。

地方における住宅地の値崩れの原因は人口減少。

若い世代の流出の多さに比べると、大都市圏からの移住が少ないという現状を抱えているところが多いのです…

今後はリモートワーク主体からオフィス勤務回帰の企業(ハイブリッドワークも含めて)も増えてくると思うので、やはり地方移住というのは、まだまだ大都市圏の人からするとハードルが高いと言えるでしょう。

「お試し」から拡がるマッチング

そういったワケで、各地でさまざまな移住促進が行われています。

例えば、支援金情報提供などが分かりやすいですね。

一方で実際住んでみないと分からないところもあります。

もちろん、移住を検討している人もそうですが、受け入れる側も “お困り移住” は避けたいわけです。

ですから、双方にとって「お試し」は有効的だと言えます。

まずは「関係人口=地域のファン」を増やすというワンクッションを入れる。

例えば、2年前に【地方から「新しいビジネス」の風】という記事で紹介した鳥取県「週一副社長」は好事例の1つです。

これは、都市部で本業を持ちながら、「地方で働いてみたい」「ビジネス経験を生かして地域活性化に関わりたい」という人が、副業・兼業を前提に「週1で地方企業の副社長になる」というもの。

3年前の開始以降、応募者は年々増加し、2021年度は、3000人以上に上っているそうです。

他にも山形県の上山市では移住支援の一環として、お試し居住施設を設置。

市内の企業での研修などを受ける人は、最大1ヵ月利用できます。

(利用料金は、9泊10日までは無料。11日目から1日500円)

高知では独自の「二段階移住」という制度があるそうで、まずは都市とのギャップが少ない高知市に住み、そこからもっと自然豊かな地域に移住するという形を用意しています。

そして、この「お試し移住」を推進している企業もあります。

無印良品が考える移住体験計画

その1つが「無印良品」を運営する「良品計画」です。

「都市部と地方の交流」の仕組みをつくるべく、『空き家リノベーション』物件を活用した移住体験計画に力を注いでいます。

〈ウォーカープラス / 2023年1月3日〉

昨年9月にはホームシェアリングプラットフォーム・Airbnbと提携し、無印良品がリノベーションした空き家は、1泊単位でも貸し出しすることが可能になりました。

1泊単位で滞在できるようになったことで、例えばワーケーションで試せるなど、移住を身近な存在にすることに繋げています。

また、各地方自治体との連携も積極的に行っており、直近では高知・四万十町と連携し、すでに移住体験住宅のリノベーションを無印良品が行うことが決まっています。

無印良品では

「(団地や空き家の)リノベーション」「移住体験」を両輪で走らせながら、地方創生にかける取り組みをさらに拡大させていきたい

と語っており、今後の展開に期待が集まります。

高齢者にも優しいIT「マッチング」

地方移住というと、受け手側が高齢者移住側が若者というイメージもあるかと思います。

高齢者の中には「オンラインが苦手」という方もいらっしゃり、コミュニケーションの面でひと工夫が必要となります。

そういった点で好事例となるのが、農業アルバイトに特化したマッチングサービス「AIagri.(アイアグリ)」です。

〈毎日新聞 / 2022年12月18日〉

こちらは、収穫期など、ここぞという時に欲しい人手をアルバイトとして募集するためのマッチングサービスです。

2020年5月に地域活性化コンサルティング会社「KIRI」(松山市)が愛媛県で開始。

22年上半期に徳島香川に、同10月に高知にも拡大し、今では四国全域で提供しています。

まず利用者にとって使い方が簡単なのです。

同社のホームページやインターネット求人サイトを経由して、LINEAIagri.のアカウント友だちに追加すれば、アルバイト探しから応募までアプリ上で全てできます。

名前や住所などの個人情報を登録しておけば、履歴書の提出や面接の必要がないなど、応募のハードルが極めて低くなるようにしているのです。

そして、農家にとっても募集が出しやすい仕組みにっております。

求人の掲載ファクス電話から申し込むことができ、掲載費もかかりません

ゆえに、IT(情報技術)の知識に疎くても容易に使えるのです。

実際、知識不足からインターネットに求人などは掲載していなかった農家の方々からも求人が集まっておりマッチングが活性化しているというのです。

というように、移住への課題を踏まえつつ、各地・各社でさまざまなアイデアが拡がっています。

ちなみに、冒頭のプレジデント・ウーマンの記事では、移住した方が感じたメリット・デメリットを、事例として4つ紹介していますので、移住に興味のある方はぜひそちらも見ていただけると幸いです。

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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