地方から「新しいビジネス」の風
column vol.422
最近、地方からの熱い風を感じています。
その一つが「週一副社長」です。
その名の通り、週一回、副社長を担うということなのですが、週五副社長の私としては、この取り組みがとてもとても気になります。
移住未満の新しい活躍
仕掛けているのが「鳥取県」です。
都市部で本業を持ちながら、鳥取県内の地方企業で週1回だけ副業や兼業をしてもらうという試みで、地方企業にとっては人材難の打開策として期待が寄せられています。
〈産経新聞 / 2021年9月12日〉
リモートワークなどで週1回だけ副業するこの仕組みは地方活性化の新たな潮流になりつつあるのです。
ちなみに、8月23日に開催された「副業兼業サミット2021」はオンラインながら、首都圏や関西圏を中心に全国各地、香港など海外からも含めた約370人が参加されたそうですよ。
この週1副社長企画の背景には人口の減少問題があります。
だから外から人材を呼び込みたいところですが、移住はなかなかハードルが高い。そこで、「関係人口」を増やすことで、地域活性化を図りたいというわけです。
私も週一で新しい挑戦ができるなら、ちょっとやってみたいですね。
個人的にもう少し深掘りしていきたい取り組みでした。
プロ投資家が「ある県」に大期待
続いての舞台は「富山県」です。
『投資家が「お金」よりも大切にしていること』の著者であり、レオス・キャピタルワークスの代表取締役会長兼社長・最高投資責任者である藤野英人さんは
「富山県が日本の最先端を進み始めるのではないか」
と本気で思い始めているそうです。
〈現代ビジネス / 2021年9月9日〉
まず、藤野さんが委員を務められている「富山成長戦略会議」の顔ぶれが凄いのです。
ヤフーCSO(最高戦略責任者)で慶應義塾大学教授の安宅和人さん、出前館代表の中村利江さん、地域経済に詳しい日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介さん、先端的なコミュニケーションのプロであるニューピースCEOの高木新平さんなどなど、今を時めく方々が勢揃い。
精鋭メンバーが集まる会議では、刺激的な議論が続いているそうです。
そしてその中で
「富山県でIPO(新規上場)できるようなスター企業を育成しませんか」
という話も出ているそうです。
その裏付けは、日本全国で不足し続けるIT人材にカギがあります。
現在、弱い見込みで16万人不足、強い見込みだと79万人不足していると言われています。
仮に79万人のうち7〜8万人、10%を富山から輩出することができたら、富山が日本のシリコンバレーになり得るという計算です。
薬売りの街から、ITの街へ。
昨日も話しましたが、硬直した日本経済に光明を射すのが成長戦略で、その要となるのがIT人材。
富山が先進的に取り組むことで、日本経済の「良薬」となるか。結構、注目したいところです。
NHKも注目する地方の熱波
鳥取や富山だけではなく、この潮流は全国に広がっています。
今回のテーマの総論的な記事として共有したいのがNHKの記事。地方の熱い取り組みが目白押しです。
〈NHK / 2021年8月30日〉
例えば、東京メトロが採用した最先端技術。
新たに設置されたカメラにはコロナ禍での「密」を避けるために車内の混雑状況を知らせるサービスに活用されているのですが、開発したのは盛岡のベンチャー企業。
そして、地方だから見える課題もあると言います。
青森にあるIoT/AI分野の製品開発・販売を行う株式会社フォルテの葛西純社長は
「人口が少ない地方にいるからこそ、社会の課題がより明確に見えてくる」
と話します。
もともとはドライバーの居眠りや脇見を検知するシステムなどを開発してきましたが、当初は全く売れなかったとのこと。
しかし、コロナが転機になったそうです。
飲食店で“黙食”を呼びかけるセンサーがヒットしたのですが、開発のきっかけは地域の声。
葛西さんが知り合いの飲食店の経営者から「客に対して静かに飲食するよう呼びかけるのが難しい」という悩みを聞いたことでした。
葛西さんは、地方にいるからこそ、いろんな人が抱える悩みを直接把握しやすく、その声を商品開発に繋がられると考えているそうです。
確かに地方の地縁の濃さは、上手く活かせば生活者の実感をダイレクトに入手することができます。言わば、地域全体が商品開発基地になる。
人と人との繋がり自体がブレーンストーミングにもなり、リサーチの場になることにもなるのです。
そう考えると、地方には大きな鉱脈が眠っています。
何だか、地方の仕事に関わりたい気持ちが高まってきました。まずは週一副社長から。ちょっと本気で考えてしまう事例でした。