ますます「地方局」がアツくなる
column vol.951
出張や旅行で地方に訪れた時、いつも気になって見るのが「地方番組」です。
その土地ならではの色と、ご当地タレントのキャラクターは、非常に個性があって魅力的に映ります。
そんな番組をつくり出している地方局にスポットライトが当てるイベントがあるのをご存じでしょうか?
それが、「楽天市場」で開催されたオンラインイベント「聞き上手グランプリ」です。
ご当地アナウンサーを通して地方をPR
このイベントは、全国の地方局8社の “ご当地アナウンサー” が、それぞれの地元に暮らす人々にインタビューしながら、観光名所や魅力あふれる食べ物に関する情報を集めるというもの。
〈PHILE WEB / 2023年3月3日〉
インタビューの動画は楽天市場の特設サイトに公開され、視聴者が一番の「聞き上手」なアナウンサーに票を投じてグランプリを決めます。
近々では、2022年11月29日から2023年1月30日まで、3回目が実施されました。
今回は全国北から南まで、青森放送株式会社、株式会社テレビ岩手、日本海テレビジョン放送株式会社、南海放送株式会社、株式会社サガテレビ、株式会社テレビ大分、株式会社テレビ宮崎、沖縄テレビ放送株式会社が参加。
イベントの特設サイトには楽天市場に掲載されている各地域の名物・特産品や旅の情報にもリンクされており、地方経済の活性化にも一役買っているのです。
しかし、なぜこのようなイベントが盛り上がりを見せつつあるのか?
そこには、インターネットによるコンテンツ配信プラットフォームが人々の生活に根を下ろす中、全国各地のテレビ局がいま、放送と配信を組み合わせた独自の地方創生エンターテインメントの制作に力を注いでいるという背景があるのです。
地方局の「個性」を活かす
今、テレビの世界は大きな転換期を迎えています。
以前は、地方局は放送ネットワーク系列の中心となる在京キー局がつくったテレビ番組を受けて放送していました。
ところが昨今はキー局の番組が「TVer」のような見逃し無料配信動画サービス、または各キー局のWebやアプリを通じた配信プラットフォームを使って、視聴者が全国どこからでも見られるようになりました。
これは地方局からすれば、多くの視聴者を獲得するチャンスでもあり、逆に地元の視聴者が全国の放送局に奪われてしまうピンチでもある。
ゆえに、各社「鎖国意識」を捨てて、コンテンツの独自性や面白さに磨きをかけているのです。
その各地方局の「やってやるんだ!」というアツき想いを集約したのが「聞き取りグランプリ」ということ。
これは、単に放送局同士の競争ではなく、地方活性につながることから、各地方同士の「絶対に負けられない戦い」でもあるというわけです。
このイベントがいかにアツアツであるか、少しは感じていただけたでしょうか…?
ちなみに、第3回のグランプリには青森放送の筋野裕子アナウンサーが輝いています。
気になるイベント内容はこちらをご覧くださいませ。
〈聞き上手グランプリ / Webサイト〉
「地元の逸材」の発掘がカギ
この各地の戦いでカギを握るのが「人(発信者)」です。
もちろん、名所や美味しいものの発掘も大切ですが、それを上手に伝えてくれる人が非常に重要になります。
同じものを紹介したとしても、誰が紹介するかで大きく変わります。
最近ではSNSで自らを発信する人も多いですが、地方にも魅力的な人は数多います。
例えば最近@DIMEの記事で、Instagramで情報発信する「お茶農家の嫁みさき」さんという方を知りました。
〈@DIME / 2023年1月18日〉
みさきさんは茶畑を経営する山本亮太さんの妻として嫁ぎ、自ら「お茶農家の嫁みさき」と名乗っていらっしゃるのですが、その茶畑がただの茶畑ではないのです。
何と、世界農業遺産にも認定された静岡県掛川市東山の「茶草場農法」を受け継ぐ茶畑なのです。
お義父さんからお茶づくりのいろはや知識を教わりながら、お茶を深く知っていく中で「農業は無限の可能性がある」「お茶作りは楽しい!面白い!」と感じるようになり、その魅力を発信するようになったとのこと。
お茶農家の知られざる暮らしやお茶作りに関する専門的な知識を軽快な音楽に乗せて、楽しいショート動画という形でお届けしているのです。
■「お茶農家の嫁みさき」Instagramアカウント
https://www.instagram.com/ochanouka_misaki/
発信してから半年であっという間に1000人にフォローされ、本日時点で1284人。
ショート動画を拝見しましたが、みさきさんの親しみのあるキャラクターはさることながら、やはりご本人の「お茶好き」具合が伝わってくるので、見ていて非常に楽しい。
今後ますます人気になりそうな予感です。
青田買いと大物釣りを目指す
このようにSNSで現地の魅力を発信する方をいかに早く発掘できるかどうか。
まだ、フォロワーが少なかったとしても、逸材をいち早く見つけられれば、テレビの力を使ってスターにすることだってできるわけです。
魅力的な人の発掘は、「聞き取りグランプリ」のみならず、地域活性においてキーポイントになるでしょう。
他にも、最近では芸人さんの中にも、その土地に訪れることが好きという理由で、その土地の番組のレギュラーを務めたりすることも多いそうです。
当然、地方局のギャラが安いことは織り込み済み。
お金よりもその地で働くことに意義があるらしいですよ。
つまりは、その地方の魅力が伝わりさえすれば、全国区の人気芸人でさえ味方につけることができるというわけです。
青田買いと大物釣りを心がけ、魅力的な発信者を集めて地元の宝を余すことなく伝えていく。
それによって、旅行者が増えたり、名産がお取り寄せされたり。
移住者が増えたり、関係人口が増えたり。
その地が活性されるような大きなエネルギーを生み出すことができるかもしれない。
そう考えると、地方局の今後の番組づくりがいかに肝になるかということですね。
ゆえに、今後ますます地方局がアツくなる予感がする。
少なくとも私は、引き続き地方局に注目していきたいと思います!
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