見出し画像

知性の“レンジ”を広げよう

column vol.865

3泊4日の京都出張が無事終わりました…(ホッ…)

今月1日・2日の第一弾の出張も含めて、7人の方をインタビューいたしました。

華道、京焼、お茶、東洋思想、禅、京料理、西陣織、それぞれ普段はお会いできないような超一流の方々ばかり。

どの道も極めていくと、人生に対しても、仕事に対しても、通ずる哲学があると改めて感じることができました。

今回はマーケターというよりも、編集者として一つの書籍を通じて、7名の賢者と向き合いましたが、一通り取材を終えた時、就職活動をしていた頃を思い出しました。

社会人になる自分を想像して、最初に入りたいと思った会社はベースボールマガジン社

私はスポーツ雑誌『Number』が大好きで、編集者になって、二宮清純さんのような作家になりたいと意気込んでいました…

人間ドラマに人生の本質を見出したいと思っていたからです。

…今考えれば大それた夢でしたが、超一流のプロフェッショナルを取材し、メディアをつくるというその時の希望は叶っている。

そしてスケールは小さいですが、こうして毎日noteで作家活動を行っている(笑)

遠回りしながらも、若い頃の志に触れ、不思議な気持ちになっている今日この頃です。

…と、前段長くなってしまいましたが、「読み物」ということで言えば、最近話題になっている本があります。

それは、日経BPが刊行した『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊』です。

天才が「知識の幅」を重視するワケ

マスクさん、ベゾスさん、ゲイツさん。

3人の天才に共通したことがあります。

それは “読書の鬼” だったこと。

そして「知識のレンジ(幅)」を重視したことでした。

〈日経ビジネス / 2022年12月9日〉

天才たちは少年時代から猛烈な読書家でしたが、起業家として成功してからも多様なジャンルの本を読みあさり、知識をアップデートし続けています。

ゲイツさんはこのように語ります。

学ぶことをやめるまで、本当に年を取り始めることはない。

最近、自分の会社、業界を越えて他分野の知見を学ぶ「越境学習」に注目が集まっていますが、書籍はまさにその入口

天才たちが読書において分野のレンジにこだわるのも分かりますね。

個人的にはイノベーションに0→1は無いと思っていまして、異なる分野の知見の組合せで生まれるものだと考えています。

例えば、EVの心臓部である電池ノートパソコン用のサイズのリチウムイオン電池を大量に使うというテスラのアイデアは、自動車産業において異端でしたが大成功を収めました。

今回、私が取材した禅宗の和尚さんも、他の宗派だけではなく、他の宗教、さまざまな哲学・思想に触れたそうです。

そうして、さまざまな見方を手にして、全ての道に通ずるエッセンスを見つけ出すとともに、自らの道の成り立ちをより深く理解していったそうです。

こうした時代の空気を敏感に感じているのが若者だとも言われています。

書籍に「多様性」を求めるZ世代

フォーブスジャパンの記事によると、18歳から24歳の読者の大多数は本や映画、その他のエンターテインメントを選ぶ際に、公平性や多様性を優先しているそうです。

〈Forbes JAPAN / 2022年12月13日〉

さらに、彼らの読書の好みはミレニアル世代、X世代、ブーマー世代に比べて幅広いと言われています。

ある調査によると、Z世代の読者は、ファンタジーやSF、ホラー、スーパーヒーローやアクションなど、他の世代に比べて、あらゆるジャンルをより多く受け入れているという結果があるのです。

読書自体もZ世代の35%が2年前よりも現在の方が読書量が多いと答え、33%は以前とほぼ同じ量の読書量であると答えています。

そんなこともあり、Z世代の55%が毎週、40%が毎日読書をするようになっている。

そもそも、Wattpadを始めとするストーリーテリングのプラットフォームでは、さまざまなマッシュアップ(混ぜ合わせ)革新的なジャンルミックスのカテゴリーがしばしば登場していることもあり、若者の間で旧来のジャンル分けは気薄になっています。

最近、経済、社会、歴史、哲学、宗教、心理などなど、さまざまな学問領域を自由にそして積極的に学ぶことで、複雑化した社会の中でブレイクスルー力を身につけるというリベラルアーツに注目が集まっていますが、知性のレンジを広げるという今回の話と通ずるところがありますね。

「問い」を立ててくれる本と出会えるか

かつて義兄から「自己啓発は30代まで。40代からは文学に戻ると良い」と言われたことがありました。

最近、それが少し分かってきたような気がします。

学生時代は時間があったのでよく文学を読んでいたが、社会人になり、専門書や自己啓発本など、ビジネス本ばかり読んでいるという方は多いのではないでしょうか?

私もその傾向にあります…(汗)

しかし、最近はビジネス本も若干ひと段落しているので、たまに文学に戻ることがあるのですが、やはり同じ本でも年輪を重ねて読むと全く違った話に感じることがあります。

酸いも甘いも人生経験で見えてくるものがある

また学生時代、こうだと決めつけていた答えが、大人になると「こうかもしれないし、いや、こうかもしれないな」と迷うこともあったりします。

最近、「文学や芸術は、答えを与えるものではなく、答えを考えるきっかけを与えるものだ」と誰かから聞いたのですが、非常に共感します。

人生も、ビジネスも、30代までは明確な指針が欲しくて、答えのあるものばかりを求めていたような気がします。

でも、40代にもなると、そんなに簡単な答えがあるのなら、人間そんなに悩むことがないなと考えるようになりました。

今回、京都で取材した七人の賢人も、さまざまなメディアで成功体験をインタビューされているような方々でしたが、皆さん、日々自問自答し、ようやく見つけられたと思った答えに裏切られ続け、それでも前を向いて歩いていらっしゃる

ずっと考え続けることが人生を仕事を豊かにする唯一の答えだとしたら、少しでも多くの問いを自分に与えることが賢明であり、問いを立ててくれるような書籍に私は少しでも触れたいと感じています。

恩師に感謝を込めて

…そして、少し遅ればせながらのご報告なのですが、当社を創業し、私たちを導いてくれた当社会長の谷口正和が11月30日に他界いたしました。

享年80歳。

私は15歳で父を亡くしたので、社会人になってからは父親のような存在でした。

谷口は京都に生まれ、京都で育ち、そして最後に私に対して今回の京都の仕事を授けました

今回の京都出張で、掛け替えのない多くのことを学びましたが、谷口が最後に私に教えたかったことなのではないかと感じてしまいます。

もう谷口から新しい教えは受けられませんが、谷口は年齢の数よりも多い89冊の本を出しています。

今まで読んできた本も、まだ読んでない本も。

一冊一冊にまた向き合って、谷口の教えをより深く学び直したいと考えています。

…と、何だかすみません…

非常にセンチメンタルな章になってしまいましたね…(汗)

今後は恩師の名に恥じぬようなマーケターに成長して参りたいと思います!

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

この記事が参加している募集

#マーケティングの仕事

6,991件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?