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「自由形」の人生へ

column vol.1218

先月、政府が経済財政諮問会議を開き、高齢者の定義について「5歳延ばすことを検討すべきだ」という意見が出たようですね。

〈JIJI.COM / 2024年5月23日〉

世代を問わず希望する人が働き続けられる社会を目指し、全世代に対してリスキリング(再学習)を推進していこうというわけです。

ちょうど同じ時期、今月83歳になる義父と仕事について話していたら

私も80歳までは働きたかったなぁ…

と語っていたことが印象的でした。

義父と初めて会ったのは、まだ義父が60歳の定年を迎える前

外資系の大手企業で人事部長を務めていた義父は、十分な退職金もあり、「定年を迎えたら、ゆっくりと楽しい時間を過ごすよ」と話していましたが、

定年後、すぐに新しい仕事を見つけ、働き始めます。

もちろん、趣味人でもあるので、楽しい時間は過ごしていましたが、結局75歳まで働くことに。

近所に住む義父と同じ世代てるちゃんと、ともちゃんも、義父以上の趣味人で、定年前は「早く趣味だけで生きたい」というのが口癖だったようですが、結局はセカンドキャリアを謳歌

私もお金に困らなくなっても仕事は続けたいと思っていまして、むしろ、お金に困らなくなってからの方が、もっと楽しく仕事ができるのではないかと期待しています(笑)


年齢不詳の時代

冒頭の話に戻りまして、高齢者の定義ですが、制度上の都合の良さとしては必要だとは思いますが、日常的にはもはや定義する必要はないと思っています。

今は、昔に比べて世代間の上下がフラットになり、様々な選択が許容される世の中。

いわば、年齢は「記号」のようなものになっています。

実際、最近の60代、70代の方々若い人が多いですし、80代の義父は私が知らないような最新のVRゲームを楽しみ、昨年始めた料理はプロ並みに上手くなっている

若者に負けないぐらい新しい挑戦に対して意欲的です。

心が若い人も、若者と呼ぶ。

よく「アンチエイジング」という言葉を聞きますが、歳を重ねることにアンチにならなくても良いのではないかと感じているのです。

昭和女子大学総長の坂東眞理子さん

若いほうが絶対に美しい、魅力的とはいえません。能の世阿弥がいっているように、若いときは「時分の花」がありますが、それがなくなった中高齢期に「真の花」を咲かせる方は多いのです。 
つまり、日本は美しさについては「若さ」に価値を置いてきましたが、そろそろ見直すべき時期になっているのだと思います。人間の能力が試験の成績や偏差値だけでは測れないように、人間の総合的な価値も、体力や見た目だけでは測れないものなのです。

と仰っていますが、とても共感いたします。

〈東洋経済オンライン / 2024年4月26日〉

さらに

知的能力でも集中力や記憶力のように、若い時期のほうが優れている分野もありますが、判断力、包容力、洞察力、類推力、共感力のように、年を取ってから伸びる能力もあります。

と、坂東さんは指摘されていますが、まさに人間には「流動性知能」「結晶性知能」2種類の知能があるわけです。

歳を重ねて高まる知能

流動性知能とは、新しい環境にすばやく適応するために、情報を処理し、操作する能力で、暗記力計算力直感力などにあたります。

パッと計算したり、覚えたり、問題を素早く解決したりする能力のことです。

これは一般的には20歳が頂点で、その後だんだんと落ちていき、40代以降になると急速に下降するという傾向があります。

一方、「結晶性知能」経験学習などから獲得していく能力。

言語能力、理解力、洞察力、社会適応力などにあたります。

ものをよく知っていたり、1つのことにじっくり取り組んだり豊かな経験から若い人たちにアドバイスをしたりする能力のことです。

こちらは年をとるにつれてむしろ上昇し、60代頃にピークを迎えるとのこと。

つまり、年をとってからの方が輝く知性もある

ちなみに、約5000人を対象に、加齢による脳の変化を追跡調査してきたワシントン大学「シアトル縦断研究」によると、記憶力の低下でさえも、被験者の15%は、若い頃より年をとってからの方が記憶力が優れているという結果が。

それだけ脳は歳を重ねてからも可能性に満ち溢れているのです。

私も「40歳超えての人間修行」ということを意識し、人間力の向上に努めている最中です。

一昨年、80歳で他界した先代社長

40〜60代の生き方が、人生の豊かさを決める

と言っていましたが、歳を重ねるたびに「魅力的な人になる」「美しい人生になる」と考えたら、今後の自分に期待できますし、希望も膨らみます

幸せの定義は人それぞれですが、その1つに「自分の未来にワクワクすること」なのではないでしょうか😊

50歳で教師へ

そんな自分の気分を高めてくれる同世代の新たな挑戦に出会いました。

その方とは、京都に住む田中信乃さん

1973年生まれ50歳なのですが、小学校の先生になることを目指して日々がんばっていらっしゃるのです。

〈京都新聞 / 2024年6月3日〉

もともと子どもの頃から教師になる未来を思い描き、英語学科のある大学に進学。

中学と高校の教員免許を取得していたそうです。

ただ、就活した1990年代後半は就職氷河期。

教員は「高根の花」と諦め、一般企業の道を選んだとのこと。

しかし、ずっとその夢を捨てられないまま日々を過ごしていたそうです。

そんな中、転機が訪れたのは2022年7月

京都市教育委員会小学校の非常勤講師を募集を目にしたことでした。

そして恐る恐る市教委に問い合わせてみると「教員免許があれば今からでも大丈夫です」と歓迎されたとのこと。

そこから通信制大学に入学し、ご家族の支えもありながら、勉学に励む生活に。

…とはいえ、共に学ぶ仲間がいない孤独との戦いに心が折れそうになる時もあるそうです…

そんな時は、子どもの頃、教師になることを勧められた祖父の不可止さん短冊に遺した一文に向き合うとのこと。

「人生はこれから勝負古稀の春」

亡くなる73歳まで書道に打ち込んでいらっしゃったそうですが…、…なるほど…、人生70歳からが勝負ですか…😅

田中さんは、そんな不可止さんの熱意に突き動かされながら、5月からは地元の小学校で教育実習に臨んでいたとのこと。

そして、早ければ来年度には教師デビューが待っている。

同世代として心が熱くなります。

そして「自由形」へ

一方で、ファッションインフルエンサーOtomatoさんのように、50代で英語教師を辞め、YouTubeに活躍の場を移した方もいらっしゃいます。

〈文春オンライン / 2024年6月2日〉

思うようにいかなくて発信を辞めようと思ったこともあったそうですが、娘さんから

「今やめたらファンの人が悲しむんじゃない?」

と励まされながら、続けてこられたそうです。

今は50代で教師になる方もいれば、50代で教師を辞めてインフルエンサーになる方もいる時代。

さらには、子どもが親の夢を応援する時代でもあります。

「これが普通」「こうじゃないといけない」という固定観念を壊しながら、自分の成長に期待し、未来に希望を持ち続ける

これが、100年人生の幸福論なのではないかと思う今日この頃です。

「100年も生きれて嬉しいと思うのか、100年も生きなくちゃいけないと思うのか。お前の人生はどうなのか?」

これは、先程、先代社長に「40〜60代の生き方が、人生の豊かさを決める」と言われたと話しましたが、その前段に語られた言葉でした。

人生は「自由形」へ。

そうした時代の気配を感じながら、今までの常識に囚われずに人生の後半に挑んでいきたい

改めてそんなことを考える今日この頃です。

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