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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2023年9月の記事一覧

『困惑を超えるもの 大沼隆遺稿説教集』(大沼隆・教文館)

『困惑を超えるもの 大沼隆遺稿説教集』(大沼隆・教文館)

日本基督教団仙台川平教会主任担任牧師、宮城学院宗教総主事などを務め、東北の地で50年にわたり伝道に奉仕した牧師が残した説教集。膨大なノートの束から掬い上げられた、生涯をかけて福音をあかしし続けた著者による心打つ魂の言葉。
 
本の帯にそう説明されており、これが本書の概略を簡潔明瞭に伝えている。その帯に、より大きな文字で書かれてある文句はこうである。「信仰とは、困惑があってもそれを超えて生きてゆくこ

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『川滝少年のスケッチブック』(小手毬るい・川瀧喜正絵・講談社)

『川滝少年のスケッチブック』(小手毬るい・川瀧喜正絵・講談社)

表紙のイラストが、この「スケッチブック」の一例である。
 
小手毬るい氏は、多くの文芸書を出しているが、とくに児童文学の分野では大きな役割を果たしているものと見える。確か猫がお好きだったはずだ。
 
ツイッターで時折これらの絵を公開していたらしい。それらが評判になり、ここに1冊のストーリーを交えた作品となった。自身を重ねた校正で、語り手は中学生の少年としている。母親と共にアメリカで暮らしているが、

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『東京大学の式辞』(石井洋二郎・新潮新書)

『東京大学の式辞』(石井洋二郎・新潮新書)

東京大学の教養学部学位記伝達式において、学部長として式辞を告げたことが、マスコミの話題になったことがある。2015年のことである。1964年の東京大学の卒業式で大河内一男総長が語った、J.S.ミルの式辞がメディアで大きく報道されたことについて、三つの間違いがそこにあった、と話したのである。そこから、「けっして他者の言葉をただ受動的に反復するのではなく、健全な批判精神を働かせながらあらゆる情報を疑い

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『不要不急』(新潮新書)

『不要不急』(新潮新書)

著者の名が10人並んでいるので、この場でご紹介する。横田南嶺・細川晋輔・藤田一照・阿純章・ネルケ無方・露の団姫・松島靖朗・白川密成・松本紹圭・南直哉
 
なんだこの表紙は。著者である10人の僧侶の顔写真にも魅力があって購入したが、そのカバーの下に、茶系のグラデーションのデザインの、ふつうの新潮新書のカバーも隠れているではないか。カバーが二つ着けられているのである。
 
サブタイトルが「苦境と向き合

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『わたしたちはいま、どこにいるのか』(日本基督教団代田教会編・新教出版社)

『わたしたちはいま、どこにいるのか』(日本基督教団代田教会編・新教出版社)

新教コイノーニアというシリーズの第27弾である。2003年に亡くなった、隅谷三喜男先生を記念する本である。東京の代田教会は、晩年隅谷三喜男先生が在籍した教会である。それで、亡くなった後も、先生の業績を大切にし、協力者を得て、シンポジウムを開催した。雑誌に一部公開されたが、質疑応答を含む全貌を世に問うために本書が成立した。
 
代田教会は、聖書から福音を毎週語る教会である。そこには日本で最高レベルの

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