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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2021年9月の記事一覧

『あなたはどこにいるのか』(関田寛雄・一麦出版社)

『あなたはどこにいるのか』(関田寛雄・一麦出版社)

私はそのタイトルに惹かれた。「あなたはどこにいるのか」、それはもちろん創世記3章にある、神から人への最初の呼びかけである。私はこの言葉に救われた。神の前に連れ出され、一旦は殺されたのだが、復活させられた。この言葉は私にとり命の言葉であった。諸事情で入手に手間取ったが、ついに手に入れると、期待に違わず心が癒やされ、満たされた。
 
青山学院大学第二部関田アドヴァイザーグループの企画で出版されたという

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自由意志

自由意志

「現代思想」という月刊誌があって、毎回ひとつのテーマを特集して、それに関して様々な論者にその分野から論じた文章を集めている。先頃の特集は「自由意志」であった。
 
カントを少しでも学んだ者としては、これは聞き捨てならないテーマである。これが内としたら、カント哲学はすべて崩壊する。自由意志論があるとすると、反対するのは決定論というところであろうか。
 
この特集には、副題がついていた。「脳と心をめぐ

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語られる説教

語られる説教

このたび、『世界 説教・説教学事典』を手に入れてご機嫌である。以前教会の棚にあるのを見て、いつか欲しいと思っていた。だが如何せん、値段が高い。Amazonの「あとで買う」にずっと入れて、価格を見張っていたが、ふと見ると、定価の4分の1ほどで「中古品・良い」というものが現れた。溜まっていたポイントをここぞとばかりに使うと、CD一枚分で買えるのである。誰かに取られないうちに、と注文した。
 
届いたも

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『キリスト教の幼年期』(エチエンヌ・トロクメ : 加藤隆訳)

『キリスト教の幼年期』(エチエンヌ・トロクメ : 加藤隆訳)

ちくま学芸文庫から2021年8月に出たばかりであるが、これは『キリスト教の揺籃期』という題名で出ていた単行本の文庫化である。そちらをすでにお読みの方は購入の必要はない。
 
トロクメはフランスの神学者。2002年に77歳で亡くなっている。訳者はその弟子である。博士論文を書かせてもらい、それを直ちに出版するところまで連れて行ってもらっている。こうした事情は、訳者のあとがきにたんまり書かれている。特に

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『群衆心理』

『群衆心理』

(ギュスターヴ・ル・ボン/100分de名著2021年9月放送テキスト)
 
邦訳だがすでに関心をもって新しい訳のものを読んでいた。それは私の中に大きな位置を占めた本となった。百年以上も前に指摘されたことが、私の常々考えていることに大きく重なってきたからだ。当時の社会慣習や背景と今はもうずいぶん変わっている。もはや古典として、そのままでは使えないかもしれない社会心理の指摘ではあるが、私は今だからこそ

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