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こころ

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ひとのこころ、見つめてみます。自分のこころから、誰かのこころへ。こころからこころへ伝わるものがあり、こころにあるものが、その人をつくり、世界をつくる。そんな素朴な思いに胸を躍らせ…
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2023年8月の記事一覧

『セラピスト』(最相葉月・新潮文庫)

『セラピスト』(最相葉月・新潮文庫)

執筆の順番としてはこちらが先だが、私は『証し』を先に読んだ。そして、心理学、否心の病という問題に挑んでいた同じ著者の作品に臨んだ。「セラピストとクライアントとの関係性を読み解く」という紹介があったが、この作品のためにも、『証し』の6年という取材に近い、5年という歳月をかけている。じっくりと向き合うその誠実さには敬服の思いしか返せない。
 
河合隼雄と中井久夫との関わりが、その多くの部分を占めている

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寝るより楽はなかりけり

寝るより楽はなかりけり

「寝るより楽はなかりけり」
 
母が夜よくそう言って、布団を被るのを見ていた。一日中家事やらなにやらで疲れた結果、布団に潜ると、もう何もしなくていい。その安堵感を物語っていたのだろうか。一時は内職もしていたから、疲れはなおさらであったことだろう。
 
生活は必ずしも楽ではなかったと思う。入浴も1日おきだったから、「今日はふろの日」などと無邪気に言っていた小さな私だったが、それから思うと、毎日体を洗

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つたえてください

つたえてください

教会の近くに生協があった。それで京都では生協に加入していた。が、福岡では利用店舗が行きやすい場所にはないため、加入していなかった。それが、立ち寄りやすいところに新しくひとつ開店したので、そのオープンセールのときに、ようやく加入した。エフコープという。加入に必要な費用は、直ちに金券で還元された。実質出資金制度ではなくなっているのかと少し驚いた。LINEでつながると、生協商品もプレゼントしてもらえた。

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親と神

親と神

若い時代は、理性よりも感情が精神を司る、というような説明の仕方をしている人がいた。言い切ってしまうのは極論のような気もするが、言おうとしていることが伝わってこないわけではない。親の視野とは違い、自分から見える景色の中で、自分の思いや願いを正当化するために、理屈を用いるということは、確かにある。もちろん、若くなくてもあるが、若い頃の自分を思うと、そうしたことが顕著であったことは省みるものである。
 

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