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哲学のかけら

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哲学も少しはかじっています。なにもそんなこと考えなくてもいいんじゃない、と言われるところも、でもさ、と考えてみる、それが哲学。独断と懐疑に終わらずに常に自分の至らなさを認めるあた…
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2022年3月の記事一覧

『いつもの言葉を哲学する』(古田徹也・朝日新書)

『いつもの言葉を哲学する』(古田徹也・朝日新書)

2021年12月発行。ウィトゲンシュタインについての分かりやすい本を書いた人だと後で気づいた。言語についての堅い話がお得意である。が、これは至って分かりやすい。「いつもの言葉」なのだ。なにげなく広く使われている言葉遣いだが、ふと考えると、何かおかしい。違和感が消えない。そんな言葉があるものだ。私は実はかなり多い。こだわる必要のない場面もあるし、事実使っているのだが、何か引っかかる。抵抗がある。そん

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理論と実践と地域猫

理論と実践と地域猫

地域猫という問題に関心をもつようになった。猫を保護し、公園などに住まわせるということについては、近隣住民の理解が必要である。猫が来て土地を汚したり、うるさかったりすると、やはり近くの人には迷惑である。
 
だからといって、無闇に殺すようなことはできなくなっているから、地域で猫を保護するということは、近くの人々に申し訳ないことでもあるのだ。
 
「殺処分」という言葉を私は好まない。野生の動物が「処分

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『感染症としての文学と哲学』(福島亮大・光文社新書)

『感染症としての文学と哲学』(福島亮大・光文社新書)

2022年2月の発行。著者は中国文学科卒業だというが、そんな気配は少しも感じられない。西洋文学中心かと錯覚していた。文章が巧い。読ませる力があり、それはまた、読者がすいすい読めていながらちゃんと内容が把握できていくということである。一読して何が言いたいのかが伝わり、また少し複雑なところは、ただ読めば説明が即座になされるというようなスタイルで、読者に悩ませる暇を与えないのである。
 
もちろん、20

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データの危険性

データの危険性

ネットでいろいろ調べていると、不思議な見出しによく出会う。次のようなものはぎょっとする。「日本人の三人に一人は離婚している」
 
そんなはずがない。ほかのを見ると、「日本人の離婚率は30%」あるいは「○○県の離婚率は45%」などとなる。
 
離婚率。なんだそれは。
 
開いてみると、どうやらそれは、その年の「離婚した人」÷「結婚した人」であるらしい。たとえば離婚件数が20万組で、結婚件数が50万組

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