【ゾッとする話】「絶対に回避できない罠」がある幸せ
「今日から新しい部署か・・・」
今から10年以上前の春先
社命により、入社から7年間就業した部署に別れを告げ、新たな部署に異動していました
異動先は社内でも特に高齢化が進んでおり
若返りを図るべく、自分のような中堅を迎え入れたようです
異動先でのメンターは60歳を超えた元管理職の方
白髪のやせ型で、パッと見て「おじいさん」という風貌ですが
眼光が鋭く、不愛想な印象だったため、いかにも専門家という雰囲気を醸し出していました
(このメンターに仕事を教えてもらうのか・・・)
入社して7年も経過していたので、もちろん新入社員を相手にするような初歩的な指導はありませんでしたが、
肝心の仕事の指導も
「この教科書を読んでおいて」
とか
「この仕事やってみて」
という超絶OJT指導
自分も早期習熟にはOJTが効果的と思っているので否定しませんが
ほぼ放置に近い状態だったため
メンターに対して多少の不満も持っていました
また、メンターは昔風の社員だったため
日中に堂々とスーパーに行き、両手いっぱいに買い物袋をぶら下げて帰ってくるなど
入社時から「公私混同はダメ」と言われて育った自分からはやや違和感を感じる行動も多く
(この人がメンターで大丈夫なんだろうか)
とも感じていました
そんなある日のこと
入社時から自分をよく知るおばちゃん社員が自分に声を掛けてきます
「こしば屋くんはさー、独り暮らしなんだっけ?ご飯とかどうしてるの?」
そんな他愛のない内容だったと思います
そんな会話をしていると、突如メンターが2人に割って入り
女性社員に向かって
「彼のことを新入社員の頃から知っているからと言ってね、いつまでも『くん』付けは失礼でしょ」
真面目な顔で言い放ちます
「彼はもう若手じゃないんだから、『くん』じゃなくて『さん』と言いなさい!」
歳を重ねるに連れ、「くん」で呼んでくれる人が少しずつ減っていくため
(「くん」も悪くないんたけどな・・・)
と思いながらも
(自分を一人前と言ってくれるなんて、メンターも意外といいとこあるのかもなー・・・)
と見直していました
その数ヶ月後
とある行事に参加すべく、メンターと自分、そして、自分が以前所属していた部署の後輩である入社3年目の女性社員の3名で出張に行くことになりました
メンターと自分は一緒に会社を出発
後輩とは駅で待ち合わせて3人揃って電車で会場に向かうことにしました
昼間の電車のため、席はガラガラ
横並びでメンター → 自分 → 後輩の順に座ります
(いやー、散り散りに座りたかったなー・・・)
会社の人と一緒に出張に行ったことがある人には共感してもらえると思いますが、出張で最も困ることの1つが移動中の会話
仲の良い同僚でもずっと会話を続けるのは困難なところ
無愛想な年配メンターと普段仕事で関わりのない女性の後輩との会話となれば、共通の話題を見付けることすら至難の業です
(初手を間違えると変な雰囲気になるからな・・・)
何を最初の話題にするか考えます
(休日は何をしているのか、好きな食べ物は何か、何でうちの会社に入ったのか、兄弟はいるのか・・・もっと無難に天気の話題にするか)
すると、意外や意外
あの不愛想なメンターが口火を切ります
「後輩さんは、ドラマとか見るの?」
確かに、女性の多くが興味を持っているであろう「ドラマ」
ほとんどドラマを見ない自分には思いも付かないテーマでした
「あっ、はい!私、ドラマが大好きで、ほとんどのドラマを録画して観ています」
まさかの特大ヒット、後輩さんの目が輝きます
おそらく後輩さんも何を話そうかと悩んでいたんだと思われ
その目はまるで、「私、ドラマがテーマなら1時間でも2時間でも話せますよ!」と言わんばかりでした
「私ね、最近、あの女優さんにハマっててね・・・あの・・・」
メンターは女優さんの名前を思い出すべくしばらく眉間にしわを寄せた後
大きな声でその女優さんの名前を呼び上げます
「・・・蒼井そら!」
・・・何ということでしょう
メンターは豪快にやらかしてくれました
メンターが大声で言い放ったのは、多くの人が知る女優さん
しかし、女優は女優でも「セクシー女優」です
(メンター・・・あなたが言うべきは「蒼井そら」じゃなくて、「蒼井優」ですぜ・・・)
メンターと2人きりの会話だったら「セクシー女優と間違えてますよ」と指摘して笑いに変えることもできますが
今、そんなことを言えば、メンターがセクシービデオを観ていることを後輩さんにお伝えしてしまうようなもの
そして、セクシービデオも立派な文化でありお仕事ですが、職場に水着のポスターを貼っても問題になる時代
一歩間違えば、会社のセクハラ委員会に掛けられてしまいます
前門のメンター、後門の後輩
(このまま気付かないフリして、会話を成立させるしかないな・・・)
そう思った瞬間、メンターが次の言葉を発します
「えっ、もしかしてこしば屋さん、知らないの!?蒼井そら!有名人だよ」
メンターは、自分の回答に窮する様子を「知らない女優の名前が出て困っている」のだと思ったようです
人を小馬鹿にするような表情で、「あの蒼井そらを知らないの?」を連呼します
もうこんなに繰り返し言われたら聞き間違えにはできません
徐々に追いつめられる自分
何とかこの場を立て直さないといけないと思いつつも
自分の口からは、
「えぇと・・・あはは・・・あぁ・・・」
と、上手く言葉が出てきません
するとメンターは、微妙な反応をする自分に見切りを付け
後輩さんに向かって
「蒼井そらは、和の感じというか、艶っぽいいい演技するよね!」
艶っぽいいい演技・・・もうセクシービデオの話をされてるのではないかという気すらしてきました
ここまで来たら、後輩さんに頼るしかない
後輩さんが「蒼井そら」を知らなければ「蒼井優ですよ、誰ですか?ハハハ」で済むかもしれない
おそるおそる後輩さんを見ると・・・
おそらく「蒼井そら」を知っていた様子
さっきのキラキラした目から一転して、虚ろな目で自分の方を向いています
(この子、特に真面目そうなタイプだから・・・知らないとは言えないんだろうな・・・)
蒼井そらを連呼するメンター
黙り込む後輩さん
この地獄絵図がこのまま目的地まで続くのかと思われたそのとき
メンターが何かに気付きます
「蒼井そ・・・ほら、蒼井・・・ほら何というかあの演技が・・・そらね」
「ほら」とか「そら」とか掛け声のような言葉で誤魔化そうとしていますが
誤魔化そうすればするほど、雰囲気はおかしくなっていきます
「蒼井さんがね・・・ほら、蒼井さんが・・・そら、蒼井優の演技は素晴らしい!」
ついに「蒼井優」の名前が登場します
しかし、その名前を出してしまえば、「蒼井そら」と「蒼井優」を間違えていたことを認めたようなもの
(頼むからもう次の話題に行ってくれ、メンター!)
そう思ったそのとき
メンターは顔を真っ赤にして大きな声で自分に向かってこう言います
「おいっ、こしば屋!黙ってないで何か言ったらどうだ!・・・こしば屋ー!」
その瞬間、先日のおばちゃん女子社員とメンターの会話が走馬灯のように自分の頭を駆けめぐります
・・・「彼はもう若手じゃないんだから、『くん』じゃなくて『さん』と言いなさい!」
あの立派な発言をしていたメンターはどこへ行ったのだろう・・・(涙)
もう自分のこと、呼び捨てじゃないかー!
以上!
癖の強いメンターに翻弄されたというお話でしたが、いかがでしたでしょうか
この後、無理やり話題を変えて事なきを得ました(?)が、これは最大級に困ったエピソードでした
皆さんもこんな窮地に立たされた面白エピソードがあったら教えてください!
ではまた