Taro Matsumoto

書きます。

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最近の記事

秒速5センチメートル

まあ確かにキモいなというのが初見時の感想だった。まだ幼かった頃の微かに芽生えた恋心と美しくてロマンティックな離別にずっと思いを馳せている青年というだけでも割とキモいが、なんとなく周りの女性をキープしたり付き合ってみたりしつつも自分の中のロマンチシズムに酔ったアンニュイな感じを醸してるところが本当にキモい。 と、開幕早々悪口で始まってしまったわけだが、別に遠野貴樹がそんなに嫌いなわけではない。キモいと言っときゃいいと思ってない。正直なところ僕はこの手のノスタルジックな思い出に

    • THE FIRST SLAM DUNK

      THE FIRST SLAM DUNKの物語の構成の美しさは正しく美術品を見ているかのようだった。 スラムダンクを知らない人も観ることを想定して製作されていると思う。だからこその原作からの引き算、元よりある傑作を削りに削って124分の3Dアニメーションというフォーマットに落とし込む。新たに何かを作ることとは全く別種の、されども決して容易でない作業があったと思う。ある意味ではまた一つの創作である。 主軸となる人物は宮城リョータだ。宮城には父と兄の喪失というバックグラウンドが

      • すずめの戸締り

        新海監督は前二作でも災害、気候変動などの人智の及ばぬ領域を描いてきた。そのマクロで神秘性すら感じる超自然的な現象と2人の生命の関係のコントラストは「セカイ系」とも呼ばれてきた。 『君の名は。』では周期性のある災害とボーイミーツガールを掛け合わせ、最終的には彼らを再開させることで非常に明るく前向きな、運命的なストーリーであった。 『天気の子』は昨今の課題である気候変動を描きながら、世界と愛する誰かを天秤にかけ、世界を壊してしまうティーンと変わりゆく東京をスピード感のある作劇で描

        • ヨーロッパ旅行記#8

          ヴェネツィアに一週間滞在したのち、バルセロナに向かいます。 正直この時、咳がしんどすぎるあまりバルセロナで全く楽しめる気がしませんでした。正確には咳による寝不足が僕の観光する気力を奪っていたのですが、サグラダ・ファミリアだけでも拝んでおこう…という弱気な感じでした。 バルセロナにお昼に到着し、ホステルにチェックイン。その辺をフラフラする元気はギリあったので、ビーチを見たり散歩したのですが、なんかパリに似てるなぁという印象を受けました。実際人の感じとか観光してる中で受ける印象

        秒速5センチメートル

          ヨーロッパ旅行記#7

          『松本太郎、死す』とは言いましたが、生きております。 何を死と表現したかったのか。それは僕の咳です。 事の発端は異常な体のだるさ。それ自体は一晩寝るとそれなりに取れました。ですがその翌日あたりから止まる事のない席が猛威を振います。 恐らくこれらはコロナウイルスの症状だったように思います。確たる証拠はないですが、自分の行動を顧みたときにかかってないと断言するのはほぼ不可能でした。かかってしまったものは仕方ない精神です。 ネットで調べても確実な情報は僅かしかなく、この長引く咳

          ヨーロッパ旅行記#7

          ヨーロッパ旅行記#6

          ヴェネツィアです。 ずっと行けるなら行ってみたかった場所。そう、特にやりたいこともないんです。行けないならまあ仕方ないかくらいの熱量。ですが、せっかく行くなら何か目的が欲しい。そう思って旅行前にネットの海をぷかぷか浮いていると、あるじゃないですか!ヴェネツィア国際映画祭が!ちょうど僕の行く日程内に! ということで学生認定なるものを申請したところ通ったので行ってきました!ちなみにこの学生認定では映画はタダになり、公共交通機関(水上バス)もタダ、かっこいいカードも貰える感じで

          ヨーロッパ旅行記#6

          ヨーロッパ旅行記#5

          ポーランドの次はクロアチア・ドゥブロヴニクです。 魔女宅を観たからでもゲースロを観たからでも無いのですが、ひと目見た時から一度はこの場所に行ってみたいと思い今回の旅行に組み込みました。 クラクフの空港からウィーンで乗り継いで3時間くらいかけて行ったのですが、空港から旧市街へのシャトルバスでなぜかめちゃくちゃに酔ってしまいました。吐けるなら吐きたいけど吐けないというしんどい状況の中で観光する元気もなく、初日から日陰のベンチで休むというスロースタートとなりました。 ドゥブロ

          ヨーロッパ旅行記#5

          ヨーロッパ旅行記#4

          さて、前回ブリュッセル旅行が終わったところでした。次はクラクフ…の前にシュトゥットガルトへ向かいます。どうしても立ち寄りたいポルシェミュージアムがあるのです。 ブリュッセル出発当日、ブリュッセル南駅へ向かい時刻表でホームを確認すると、電車がありません。6番線(予約確認資料に書いてあったプラットフォーム)の近くにDB(ドイツ国鉄)の窓口があるので聞いてみると、どうやら列車がキャンセルされたとのこと。欧州ではたまにあるみたいですね。 僕はブリュッセルからフランクフルトの電車とフ

          ヨーロッパ旅行記#4

          ヨーロッパ旅行記#3

          ブリュッセルの旅行記なのですが、次の都市であるクラクフの最終日の夜に書いております。やらなければならないことを溜めるのがお好きなようで。 いざ書き始めれば別に苦ではないのですが、なんとなく後回しにしてしまいます。楽しみに待ってくれている人がもしいるのであれば、申し訳ないですね。 さて、ブリュッセルなのですが、行く前の印象としては ・アール・ヌーヴォー建築が綺麗 ・ワッフルが美味しい ・フランスの隣 くらいの認識しかありませんでした。人柄とか旅行客の多さとか、予想もして

          ヨーロッパ旅行記#3

          ヨーロッパ旅行記#2

          結局2回目はベルギーに到着してから執筆してます。そんな気はしてました。 パリ、非常に楽しかったです。パリ自体は想像通りなところが多いというか、なんせ「花の都」なので綺麗すぎてびっくりとかはあまり無かったです。とはいえ、凱旋門もエッフェル塔もルーブル美術館も実物はすごいなと思いました。 当たり前ではありますが、何もかもが日本より優れているとかいうことはなくて、道はめっちゃ汚いし地下鉄の駅も綺麗とは言えない。コンビニ的な店のクオリティとか治安は言わずもがな日本に軍配が上がりま

          ヨーロッパ旅行記#2

          ヨーロッパ旅行記#1

          1ヶ月でヨーロッパ7カ国を巡るという、進路が決まってないという現実を舐めすぎている僕の旅行記を記していこうと思う。誰かの参考とかになったら嬉しい。 成田空港出発 まずは日本の玄関口の成田空港から。序盤の序盤で僕はひとつミスを犯した。 僕は今回の旅行でポーランドに行くのだが、それは英国留学の際にできた友人に会いに行く意味もある。日本から何かしら土産を持っていこうと思っていた。成田空港でそれを買う予定だったのだ。出国手続き前のショップで買うこともできたのだが、なんとなく出国後

          ヨーロッパ旅行記#1

          トップガン マーヴェリック

          『トップガン マーヴェリック』を観てきた。間違いなく映画史にその名を残す映画だと思う。というか映画史そのものの一部となってしまうような映画だ。今世界に存在するすべての映画館はこの映画を上映するために存在しているんじゃないかとすら思う。それほどまでに胸が熱くなる映画なのだが、思えばとてもパーソナルな作品でもある。 トム・クルーズを知らない人は今やほとんどいないだろう。老若男女に愛される紛うことなきスターだ。そんな彼がスターに名を連ねたのが前作『トップガン』だ。この映画自体は全

          トップガン マーヴェリック

          劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン

          劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンのNetflixでの配信が始まった。早速二度目の鑑賞を始めたのだが、1人で観てよかったと思うくらいには泣いてしまった。 本作の感想はいくらでもあるのだが、その一つ一つを文章に起こそうと思うとなかなかに難しい。感動とかエモーショナルだとか、そういったありふれた言葉で表現したくないと思う。表現してしまうとこの作品の与えてくれた素敵な感情を減衰させてしまうのでは無いかと思うからだ。だからと言ってそれらを適切に、かつ簡潔に表現する語彙も文章力も持

          劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン

          平家物語

          これは平家物語のPVにて後白河法皇の口から語られる印象的な台詞だ。もちろん本編にも登場する。この台詞は『平家物語』のみならず我々が生きる世の中においても、普遍的かつ未解決な命題である。 『平家物語』に最初に引き込まれたのはPVを見た時だった。他とは一線を画す穏やかな色彩、登場人物に命を吹き込む豪華な声優陣と山田尚子監督や脚本の吉田玲子氏、劇伴の牛尾憲輔氏などの製作陣。中でも特段心を奪われたのは羊文学が手がけるテーマ曲『光るとき』だ。Spotifyで今年1番聴いてる曲はこの曲

          平家物語

          【ネタバレ】スパイダーマン/ノーウェイホーム

          待ちに待った映画を試写会で鑑賞しました。今作を語る上で本編の内容は避けては通れないので、ネタバレ注意とさせていただきます。 オリジン3部作を締めくくる傑作 MCU版三部作が3作を通じてオリジンを描いてることに気がついたのはNWH鑑賞後です。『シビルウォー』でサプライズ的に登場した、業務提携の産物であるスパイダーマンが「物語」としてここまで丁寧に紡がれたのは、本家としてのマーベル(ディズニー)のプライドと、スパイダーマン過去5作を製作し、その権利をそれを手放すことも妥協する

          【ネタバレ】スパイダーマン/ノーウェイホーム

          ディア・エヴァン・ハンセン

          予告でなんとなく気になっていたという記憶だけはあるけど、映画の事前知識は無いまま観に行った。好きなところ、優しいところ、泣けるところはあったのだが、モヤるところもあったので文章にしてみようと思う。 設定が上手…この映画、設定は実に巧みだと思う。タイトルとも繋がった一通の手紙から話がみるみる広がっていくのは面白いし、「いじめられっ子のサクセスストーリー」という典型例にハマらないプロットだったと思う。 冒頭にて、学校や地域、果ては全米を大きく揺るがす勘違いが生じるのも、エヴァン

          ディア・エヴァン・ハンセン